国産野生コショウ「フウトウカズラ」をチョコに練り込んでみた

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ヌーベルキュイジーヌと野食、という組み合わせについて最近しばしば考えます。
「古とモダンの融合」「国境を越えた調理法」「独創的な組合せ」いずれも野食レシピを考えていく上で重要になっているからです。

一番簡単な文脈は「身近な野食材と高級な食材・調理法」の組合せでしょうか。
ちょっと引くような組合せから人類史上初の美味しさを引き出したときの悦び、ある程度野食をやり込んでいる人ならきっと理解してくれるはず。


さて、なかでも最近とみに気になっているのが「お菓子と野食」の組合せ。
特にチョコと野食材については、日々のハンティングのなかでも常に「これチョコと合うんじゃないかな」と考えることが自然になってしまっています。

風味の強い素材をチョコに練りこむことで、とても簡単にオリジナリティの溢れるお菓子を作ることが可能になるのです。

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フウトウカズラフレーバーチョコを作ってみた

そんな「チョコに練りこみたい野食材」のなかで、個人的に最もアツいと思っているのがフウトウカズラ
フウトウカズラ,果実

本土唯一のコショウの仲間・フウトウカズラを食べてみた
戸田からの帰り道、車内で急に尿意をもよおしたので、父に頼んで車を路肩に止めて貰った。 用を足してふと目の前の木を見ると、絡みつくつるに赤い実が生っているのが見えた。 これはひょっとして… フウトウカズラはコショウ科のつ...

南日本の海岸寄りに生息しているコショウ科のつる植物で、とくに本州では唯一の同科の植物となっています。
関東周辺だと伊豆半島や三浦半島で結構見られます。

本物のコショウをミニチュアにしたような果実がつき、辛みこそ弱いものの、ややきつい位の鮮烈なコショウ香を持ちます。


前回の試食時に、果実と花序を食べてみたのですが、香りは果実部に多く、一方で辛みは

花序に多く感じました。
コショウらしさを期待するなら、果実より花序のほうを利用したほうがいいかもしれません。

南西諸島に「ヒハツモドキ」というコショウ科の植物が自生しており、八重山諸島では香辛料として一般的なものなのだそうですが、これは果実と花序が一体化したような形状になっており、全体を粉にひいて利用するといいます。
フウトウカズラは一般的には「辛みがないので利用されない」と認識されますが、花序の部分を利用するようにすれば有用性が出てくるかもしれません。


閑話休題。


なぜフウトウカズラをチョコに練りこむのか。
それは最近、「スパイス +チョコ」の組み合わせが流行っているからにほかなりません。



コショウやトウガラシなどピリッとするものと、カカオの風味というのはとてもよく合います。

とくに先日食べた、アフリカのマダガスカルに自生する野生コショウ「ヴィチペリフェリペッパー」を練りこんだものは、その青臭いほどの野性味と尖った刺激が、ビターなチョコにとてもよくマッチしていました。

フウトウカズラを使っても、ここまでとは言わないけど「かっこいい風味」のチョコにならないかしら、そう思い、試してみることにしました。



ビターなクーベルチュールチョコを湯煎し、

テンパリングを施して(詳細はこちら)練っておきます。
ガナッシュにするか、ハードチョコにするか迷いましたが、今回はシンプルにチョコとフウトウカズラの相性を見たいので、板チョコに仕上げることにしました。

フウトウカズラは果実と花序を

粉にひいて

チョコに練りこみます。


薄く延ばし、冷蔵庫で固めれば


完成。
いただきマース


……(`・~・´)……(・~・)……
うーん……
評価が難しい。

まず、今回利用したチョコがちょっと酸味が強すぎましたね。
カカオ70%以上のチョコを使う場合、カカオの原産地の個性が強く出てしまいます。
エクアドル産やドミニカ産など、酸味が強いものは製菓材料としてはレシピを選ぶのでしょう。これはこっちのミス。


そのうえで、フウトウカズラの存在感がやや強すぎるような気がします。
青臭さが勝ちすぎているな。
でもこれは好みの問題で、この味がたまらなく好き、という人は絶対にいるはずです。
ぜひ、ベルギーのショコラティエに食べてもらいたい。


個人的にはよりしっかりと乾燥させ、花序の配合量を多くすることでよりチョコに合いやすくなるような気がしますね。
次回の宿題ができちゃった。

味:★★★☆☆
価格:★★★★☆

スミレ入りか……やってみようかな

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植物
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野食ハンマープライス

コメント

  1. エコー より:

    野草をお菓子に使用する発想に感銘を受けました。

    私はふきのとうをシフォンケーキに混ぜこんでつくってみようと思います!

    いつも楽しく見させて頂いています。

    勉強になります。

  2. ほらさん より:

    古代中国の歴史書「史記」には、紀元前二世紀、漢の武帝の時代に蜀(今の四川省)で「枸醤(こうしょう/くしょう)」という調味料が作られており、下流の南越国(今の広東省あたり)まで交易されていたことが記されています。そして、講談社学術文庫の「中国の歴史(3) ファーストエンペラーの遺産」によると、この枸醤なるものの正体はフウトウカズラのペーストだそうです。

    なんで現代四川料理の必需品である花椒じゃなくてフウトウカズラだとはっきりわかるのか、そもそもフウトウカズラは四川省で採れる(あるいは気候が異なっていた2200年前には採れていた)のか、などと疑問は尽きませんが、茸本さんには是非フウトウカズラ味噌にチャレンジして頂きたいと思います(笑)。

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