ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)を捕まえて食べてみた:①葛藤と解体

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野食ハンマープライスというサイトを始めたきっかけの一つに「自給自足を目指したい」というものがある。
いや、そこまで言うと少し言い過ぎで、始めた当時僕はアルバイターだったので収入的な不安があり、エンゲル係数を下げなくてはならないというのっぴきならぬ理由があったのだ。

神奈川アミガサタケ

身近な高級食材ってありがたいんですよ

食材ごとに「これぐらいの価格なら金払って食べてもいいな」という評価をつけているのは、その価格から捕獲・購入にかかった費用を引いた額を家計に還元する、という脳内ルールのためなのである。
(ちなみに★3つは1000円以下、★4つは3000円以下、★5つはそれ以上、★2つはお金は出したくないけど食える、★1つは今後は遠慮したい、くらいのイメージです)

さて、それから今の会社で働きだし、懐に余裕が出てくるにつれて徐々に「遠征」だの「高級食材取り寄せ」だのというところに心が及んでくるようになった。
これらの記事も今やこのサイトを支える大切なコンテンツの1つだが、やっぱり自給自足の心、つまりは「費用対効果の高い食材を採る」という意志はいつでも忘れないようにしていたい。(お金かけすぎると連れに怒られるし)

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身近な「肉系」タンパク・カメ

さて、都市に住む人間が本気で自給自足を考えようとすると、地味に立ちはだかるのが「動物性タンパクどうすんだよ」という問題である。
魚釣って食べればいいじゃん、という考えでは甘い。
どんな魚好きでも間違いなく飽きが来るはずだし、身近に限定すれば種類数的にも継続性に欠ける。

かといって獣を捕まえて食おうにも、免許と法律と倫理観という3つの壁が立ちはだかる。
ディストピアもののフィクションならドブネズミやドバトなんぞを食べているが、現実ではかなり困難だ。

その点から考えると、近年はやりの「カメ食」はかなり理にかなっている、というよりも当然の活動のように思える。
いま「流行ってねーよ!」とツッコまれた方、気持ちはわかりますがどうやら流行っているようなのです。

火をつけたのは平坂さん↓
カミツキガメを捕まえて食べた

そこにガソリン掛けて燃やした人↓
カミツキガメ解体編~尋常でなかった「精がつきそう感」

カミツキガメは害獣として知られており、また特定外来生物として指定され、毎年大規模な駆除活動が行われていることもあって、捕まえること・食べることへの罪悪感が小さいのかもしれない。
(リリースが基本のヘラブナ釣り師も、最近ではカミツキガメは持ち帰って食べているそうな。。)

そう、普段から獣を捌いていない人間にとって、最初はこの「罪悪感」なるものをどう解消するかが非常に大きな問題となる。
「あらゆる生き物に貴賤はない」と考えようとしても、やはり魚を見れば美味そうと思うし、水族館に行った後は回転寿司食べたいし、獣を見たら可愛いと思うし、動物園行った後にステーキ食べたいとは……ならない。

ある程度慣れてくるとカエルは美味しそうに思えてくるし、ヘビも捌いた姿を想像できるようになるが、そこから哺乳類へと向かうにはまだあと数里の道のりがある。
その道のりの一里塚となってくれるのが、ある程度情が湧く見た目をしており、それでいてスッポンなどの食材としてメジャーな種も含まれるカメたちなのかもしれない。

ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)を捌いてみた

ミドリガメをゲットした

さて、カメ食の話に戻ろう。
カミツキガメは美味しいということが分かったが、現在メジャーなポイントとして知られているのは千葉県印旛沼周辺~茨城の低湿地帯であり、我が家からだとやや距離がある。
もっと近くでも繁殖していると思われるのだが、釣果情報や実績が少なくて確実なところはない。

もっと近くで手軽に釣れないか……
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……釣れた!
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ミドリガメがな!!

ミドリガメは縁日でおなじみの子亀で、正しくはミシシッピアカミミガメという。
そう、お分かりの通り外来種だ。
縁日で掬われたカメはいつまでも子亀でいてくれる、なんて思っていたおバカさんたちが、大きく成長し手に負えなくなった個体を身近に流れる川に放した結果、いまや島嶼部含む日本全土で繁殖するようになった。
在来種のカメでもそこまで繁栄しているものは無い。

現在では日本の侵略的外来種ワースト100にもリストアップされ、外来生物法により「要注意外来生物」に指定されている。
ペットとして広く飼われていることもあり長らく指定を逃れてきたが、2020年からはついに「特定外来生物」に指定される予定だ。
そうなると飼育や持ち運びに許可が必要になり、再放流や未許可の生体移動は犯罪となる。
ここまでに至ったのはすべて我々の無理解のせいなのだ。

人間はつくづく愚かだぜ……(by藤宮)という気持ちを隠し切れないが、そんなバックグラウンドを持つ彼らがそこいらじゅうの川でぷかぷか浮いているようすを見せつけられると「まあ、少しくらいなら食べてもいいか」という気がふつふつと湧いてくる。

夕方になってからパタパタと釣れてきたカメたちのうち、大きな2匹をピックアップして持ち帰ってきた。

ミドリガメを頑張って捌いてみた

まな板の上のミドリガメ。
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小さい方は甲羅長20㎝ほど、大きい方は25cm以上ある。

たいへん元気である。
そしてものすごく警戒心が強い。

スッポンは捌いたことがあるが、彼らはすぐに首を伸ばしてなんにでも噛みつくので、タオルを噛ませて首を伸ばさせ、その隙にスパンと切ってしまえばよかった。
しかしミドリガメは…
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全然その気配がない。

電気を消したり付けたり、ひっくり返したり腕を抑えたり、タオルを噛ませたり釣り針を口に掛けたりしたが、包丁の刃が入るほどに首を伸ばしてはくれない。
時々ちょっとだけ伸ばしてくれるが、無理やり引きずり出そうにもものすごい力で引っ込むため、こちらの指が疲弊してしまいうまくいかない。

そしてなにより、こちらを見る目がせつない。
まばたきにここまで感情をざわめかせる力があるのか、その威力におののく。
もし魚に瞼があったら、今ほど簡単に捌くことはできるだろうか。

締めることすらできずに1時間がたった。
それでも徐々に向こうも疲れてきて、やがて握力と指の力で首を伸ばしたままにできるようになった。

すかさず、キンキンに研いだ小出刃の先を首に突き立て、包丁を持つ手のひらで甲羅が動かないように押さえつけ、逆の手にも包丁を持って首の逆側から刺し入れる。
首が力を失って少し伸び、脊椎に出刃包丁が刺さる音がして、音とともに外れて落ちる。
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……

深呼吸をしよう。

……

もう一度。

よし。
切断面を器にかぶせて、出てくる血を受け止め、溜める。
これも大事な食材だ。
血の1滴たりとも無駄にしない、そういう気持ちこそが供養になるかもしれないと信じて先の工程へ進む。

100円ショップのノコギリで、腹側の甲羅と背側の甲羅の境目をゴリゴリと切る。
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ある程度切れ目が入ったら、マイナスドライバーを差し込んで、テコを使ってバキッと割る。
甲羅の上下、さらに今切ってできた隙間にも包丁を入れて腹側の甲羅についている肉を削ぐように切り外す。

蓋を取るように、内臓と肉が露わになる。

あとはひたすら、解体していくのみ。
四肢の付け根に大量の肉がついており、から揚げなどで食べる場合はできるだけ甲羅に肉を遺さないようにそぎ取る必要がある。
しかし、見えないところに甲羅や骨が入っており、初見できれいに取ることはまず不可能だ。
手で折り取るなどの技も駆使して取り外し、甲羅に残ってしまった肉は後でこそぎ落とそう。

膀胱は破らないように除去が基本だが、泥抜きなどをした場合は尿がなくなっていてどこにあるのかわからない場合があるので、ともかく内臓をパーツごとに破損しないように取り外していくことを考えればうまくいく。
個人的には膀胱よりも腸がヤバいと思うので、腸を外す時は中身を絶対出さないように最善の注意を払いたい。

大きい個体は大概メスのようで、立派なキンカン(卵巣)と産卵直前の卵を持っている。
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これは分けて採っておこう。

肝臓は美味しいらしいが、中上流部とはいえ都市河川の物なので今回は捨て……ようと思ったけど小個体のものをひとつだけキープ。
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胆嚢は絶対割らないようにね!

首を落としてから1時間、通しては都合2時間でここまでばらばらに。
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ここまで来たらもう食材にしか見えないだろう。

2匹分

2匹分

……そうだよね?
みんな大丈夫?ついてきてくれてる?

調理・試食はまた次回にまわします。

首を落とした瞬間に本日最強の蹴りを食らった

首を落とした瞬間に本日最強の蹴りを食らった

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コメント

  1. 夢の天秤 より:

    アカミミガメは、20年くらい前に飼っていましたが
    台風の日、ベランダの2階から落ちて逃げました。
    気づいて探すもどこにも姿が見えず・・
    カメの甲羅の丈夫さにびっくりしたのと、
    えらい獰猛なやつを世に放ってしまったと後悔したものでした。
    自分も何匹か捕って罪滅ぼししようかな・・

    • wacky より:

      捌いてみて判ったのが、甲羅の中って結構遊びがあるんですよね。なので高いところから落ちても意外と大丈夫なのかもしれませんね。
      台風の日ならば美味いこと水場にたどり着けたのではないでしょうか。環境にとっては負荷かもしれませんが彼にとっては運が良かったでしょう。

      罪滅ぼしというとまた別の要素なので、単純な味への興味から(もしあれば)食べてみることをオススメしますよ!

  2. げも より:

    はじめまして。
    土鳩についてちょっと触れてましたが、山ほど都会にいるのだからカラスより簡単に動物性たんぱく質を取れそうな気もするのでもっと食べてる人がいても良さそうだと思うのですが…まったく見かけませんね。不思議でなりません。

    • wacky より:

      鳥はまず免許の問題がありますからね。。もし仮に素手やスリングショットなどの免許が要らない手段で捕獲したとしても、それを調理して食べ、さらに世にそれを公表できる人間がどれほどいるかというと……かなりの少数でしょう。カメよりも数段上の抵抗感があると思いますよ。

      • んんー より:

        香港あたりで鳥インフルエンザが大流行した時。

        鶏の殺処分のせいで鶏肉流通が減った中国で、
        天安門広場に大群でいた鳩が、なぜか三分の一ぐらいに激減した、
        という話を思い出しました。

        スズメを獲るようなお米粒&ザル、でも罠猟認定されちゃうんですかね?

  3. さかどくん より:

    おはようございます。
    カメは美味しいといいますねぇ。
    なぜ、スッポンだけポピュラーなんでしょうねぇ?
    将来、もし、食糧危機が訪れたなら、昆虫食、外来魚と共にタンパク源となるかもしれませんねぇ。
    ところで、アメリカザリガニも美味いはずですよね!
    まだ、食べたことが無い(^^;)

    • wacky より:

      やっぱりスッポンが捌きやすいからなんじゃないでしょうか。歩留まりも最高に良いし。魚も捌きづらいやつとか歩留まりが悪いやつは人気が出ないですもんね。

      アメザリは美味しいですね。築地でも普通に取り扱っていますよ!

  4. たいめん より:

    嫁「よくカメ飼ってるのにスッポン捌けるわね?」
    オレ「簡単さ。動きがノロいからな」

    • wacky より:

      ホント野食は地獄だぜウハハハハァー!!

      まあ実際のところスッポンは素早いですよね。ミドリガメとは違った難易度の高さ。

  5. シゲ より:

    野食に目覚めるきっかけが、仕事の挫折とか経済不安っていうケース多いのかもしれませんね。私もそのクチですが。Bライフな小屋暮らしの人たちもいますし。

    • wacky より:

      意外といらっしゃるかもしれませんね。まあ趣味と実益を兼ねますし、個人的にはそれほど悲壮感はなかったですけど。。

  6. せつな氏の近所の知人 より:

    いつも楽しく拝見しております。

    最近ウナギ釣りにはまっていますが、避けて通れない外道のひとつがこのミドリガメ。

    煮ても焼いても食えない…バラせるわけないあの頑丈な首と甲羅、一体どうしろと、などと開き直ってたら、やってくれましたね~!まさか、金ノコとは。

    とりあえず、ウチの玄関に活けてあるスッポン捌いてから、捕獲対象にするか考えます♪

    ではまた。

    • wacky より:

      はじめまして! お噂はかねがね(笑)
      ミドリガメは確かに捌くのはたいへんで、かつ身も少ないですが、良い意味でカメらしい味わいでなかなかのものだと思います。今の時期は卵も楽しめるし、一度お試しいただいてはいかがでしょう?
      ノコギリは100円ショップので何も問題ないですからね!

  7. 通りすがり女 より:

    大変参考になりました。
    亀を捌く予定はないですが構造や手順をわかりやすく解説されているのを拝見できるのはとてもありがたいです。
    貴重な情報をありがとうございました。

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