というわけでクワガタは大変美味しゅう御座ったのですが、それはよかっためでたしめでたし、あとは良きにはからえ~……というわけにはいかないのであります。
そう、クワガタを食べたんならやっぱり
カブトムシも食べんといかんとたい。
日本の森の樹液場で主役を張るのは、クワガタではなくやっぱりカブトムシ。
マニアからの受けはともかく、知名度や人気もやはりカブトムシが一番上なのは間違いありません。
クワガタだけを食べて「夏休みといえば虫だよねー」とか言うわけにはいかない、やはりカブトムシさんも食べなくてはならないのです。畜生、なんでおれはこんなことばっかりやらなきゃいけないんだ……
カブトムシは昆虫の中で一番不味い?
とはいえ、実はカブトムシ、虫食いクラスタの中では「一番不味い虫」として認識されています。
ぼくも食べたことがありますが、確かに不味い。「腐葉土の香り」「土そのもの」「カブトムシを買っていた虫かごの臭い」などと表現されるのですが、もう少しわかりやすい表現に努めると「土臭さと汗臭さが合わさった」ような感じで口にするとむせるほどです。
いやでもね、我々野食ハンターとしてはね、そこで決めつけをしてしまってはいけないと思うんですよ。
あれ、本当に臭いんでしょうか?
いやもちろん臭いんだけど、でもそれには理由があるんじゃないか、具体的に言うと「食べ方が悪かったんじゃないか」と思ったのです。
例えば、あの絶望的に臭いゲンゴロウさんでも、揚げてすぐに殻を剥いて取り出した身だけを食べれば、まあまあそれなりに美味しく食べられます。(冷めたらすぐ絶望が蘇ったけど)
揚げることでクセのある脂が抜け、香ばしい風味が付与されて食べやすくなったことに加え、殻を取り除くことで風味のきつさが抑えられ、食べやすくなったのではないかと思います。
セミやバッタ、それから先日のクワガタのような「美味しい虫」はゲンゴロウと違って臭みがないので、茹でるだけで美味しくなるのですが、それでも殻ごと食うとちょっとしんどさがあります。セミなんかは特に。。
というかそもそも、虫に限らず節足動物は殻に独特の香り・風味を持つものがとても多い!
エビやカニだって殻ごと調理すると生臭かったり硬くて食味が悪かったりして正しい評価が難しくなることはあるわけで、虫に限って「殻ごと食べたほうが美味しい」となるようなことはあんまりないんじゃないかという気がするわけですね。
だもんで今回のカブトムシも、新鮮なものを調理しすぐに向いて、純粋に身の味だけを確かめてみたら、また評価が分かるかもしれないのですよ。
そもそも、国産甲虫の中ではかなり大型になり、フィジカルも強く筋肉が多いカブトムシは、虫の食材としての最大のデメリットである「食べるところが少ない」という問題をクリアできる存在。味さえよければむき身にする手間ぐらいかけてもいいと思います。
ということで、実際に確認してみることにしましょう。
カブトムシを剥き身にして食べてみた
カブトムシに限らず、虫は死ぬとすぐに脂が酸化するのでできるだけ生きたまま調理します。それがかなわないときは取り急ぎ熱湯で茹でて締め、真空状態にして冷凍保存するとよいです。(←永野さんの受け売り)
今回はとれとれきときとなので、さっと洗って水気をきり
油で素揚げします。
虫って揚げると腹部がビローンって出てなんだか……見た目がよろしくなくなりますよね。甲虫類(鞘翅目)はとくに……
熱いうちに翅をむしり、殻を剥いて
筋肉をほじくり出します。予想通りかなりの量です。しかも繊維質が強くて美味しそう。
塩を少々つけて、いただきまーす。
……!?(´・益・`;)
なんだこれ、めちゃめちゃ……カルキ臭っ!!
えっなに、なぜ塩素の臭い……? おれが口にしたのはカブトムシじゃなくてスク水か何か……?
あ、なるほど、このカブトムシが雌だからスク水着てた……!(錯乱)(そもそもスク水って塩素臭いの?)
プールに通っていると水着に塩素の匂いが染み付くと思いますが、それと同じ匂いを家で水着に付ける方法を考えてください。 ‐Yahoo知恵袋-
いやマジで塩素臭です、これ。まったく予想外のベクトルの臭いだったので頭がどうにかなりそう。
筋肉単体だとこういうマズさなの……? ってかこれじゃもう食用にするのは無理じゃん……(知ってた)(誰もが知ってる)
味:★☆☆☆☆
価格:★★★☆☆
餌の臭いが食味に大きく反映されることが多い虫。クワガタやカミキリムシなど生木、朽ち木やそれを分解腐朽するキノコを食べる虫たちと違い、腐葉土を食べるカブトムシはどうしても匂いが強くなるのはやむを得ないところではあります。
外国には生木の芯を食べるカブトムシもおり、それは比較的食味が良いといううわさも聞きます。今回のことにめげず、いつか出会えたら食べてみたいものです。
コメント
セミみたいにオスがうまいってことは…なさそうですね。雲南のゴホンヅノカブトは線香の味だったと小泉武夫先生が書いていらっしゃいました。香木でも食べているのかな。
オスも食性が変わるわけではないので、味も一緒だと思います。食べているものもそうですが、カブトムシ類ってもともと体臭が強い人たちなのかも
カルキ臭がする食べ物として「カルキス」と呼ばれるカルキ臭がする魚のキスが釣り人の間で話題になりますが、これはそのキスが食べるギボシムシと言うゴカイの一種が体内で作る「臭化フェノール」のせいと言われています。この臭化フェノールは木材の保存剤などにも使われるため、もしかしたらそれらを餌として育ったカブトムシであったのかもしれません。ご参考までに。
カルキス聞いたことあります。水質良いところでも出るのでなぜかと思っていましたが、ゴカイのせいなのか……
なるほど、もしかしたら人工的に栽培され放虫された個体だったかもしれませんね。興味深いです。