今回、野食会に前後して、とある筋から食用ゲンゴロウを入手することができました。
タイ産で、種類は……なんだっけ、フチドリゲンゴロウかな? 日本本土にはいない種みたいですね。
タイのイサーン(東北)地方で古くから食用にされてきたもので、現在も昔を懐かしむ人の間で食べ続けられているそうです。というか、食べたことある人以外は手を出さないみたい。若い世代では食べられることすら知らない人も多いとのことです。
そこだけ聞くと「ああ、じゃあ日本でいうイナゴみたいなもんだね」と思うかもしれませんが、そもそもタイは日本よりはるかに昆虫食文化が残っている国、そこでもほぼ消えつつあるということで、味のほうも相当アレなのかも……と何となく推測ができます。
まあでもね、百聞は一食に如かず、イメージで評価を決めてしまっては野食ハンターの名が廃ります。フラットな気持ちでトライしてみよう。
タイ在住のうたのすけ氏のガイドのもと、トライしてみます。
ゲンゴロウ、10分で味の評価がひっくり返る
取り出したるゲンゴロウ、匂いを嗅いでみると……
……ちょっとヤバくなりかけたエビ、みたいな感じですね。オキアミに腐敗臭の影を背負わせたかのような。、正直、食材の匂いからはぎりぎり外れてます。
これを、揚げるなりゆでるなりして加熱して、殻をむいて可食部を取り出すとのこと。しっかりと加熱したいので揚げで行ってみます。
……揚げると臭いがよりヤバくなった、というか明確になりました。
これは、酸化した油の匂いだ。しかもかなりしっかりと酸化させた、におい嗅ぐだけでちょっと胸焼けしそうな。
ますます食べ物の匂いではなくなりました。ゲンゴロウは新鮮なうちに真空パックされたもので、素材が悪くなっていたとは思えません(もちろん昆虫自体、魚と同じくらい劣化が早い食材ではありますが)。そもそもこんな感じの食材なのだとしたら……そりゃ若もんは手を出さねぇでしょうな。
まあいいや、進めよう。
加熱の済んだゲンゴロウは外翅をとり、
胸部の殻をぺきっと剥いて、筋肉を露出させます。セミと同じようにやるってことですね。
可食部はこの部分の筋肉のみ。雑食性が強く何でも食べるゲンゴロウは、ときに人間にとって有害なものを消化管内に溜めていることがあり、丸ごと食べると中毒してしまいかねないとのこと。
まあそもそもこの消化管の部位、とんでもない臭いを発していて食べる気になれないのですが……
さて、いよいよ実食。
いただきまーす
……(`・〰・´)あ、意外と悪くない
なんでしょう、ちょっと乾き気味のエビ風味のツナ、みたいな……セミと比べると青臭さも少なく、こちらのほうが好きというひともいるかもしれません。
でも……殻をむいた指の臭いがヤベェ。食べ物を扱ってはいけない臭いがします。
そして……恐ろしいことに、揚げてからものの10分もしないうちに改めて試食してみると、この匂いが筋肉にまで回ってしまっていました……
こうなるともはやどう頑張っても美味しくは食べられません。この時揚げるのに使った油を嗅ぐと、まったく同じ臭いがして思わずえづいてしまいました。
ほじくりだした胸肉だけを集めて何か料理をしようと思いましたが……だめだ、これを美味しくするアイディアは全く思い浮かばない。
味:★★☆☆☆
価格:★★☆☆☆
タイ北部では、ゲンゴロウはまだまだ水田にたくさんいる昆虫。ちょうど日本でいうイナゴみたいな存在で、食用にされてきた歴史に必然性はあると思います。
ただ……この味はなかなか、伝承していくのは難しいかもしれない。コオロギみたいに餌をしっかり管理して養殖すれば美味しくはなるかもしれないけど、あの歩留まりじゃ採算はとれなさそう……
まあでも一つの食文化がなくなるのは悲しいことなので、細く長く続いてほしいとは思います。
コメント
初めてコメントさせていただきます、いつも楽しく拝見しています。
今回の記事、とても興味深く読ませていただきました。こちら→ http://mushi-sommelier.net/blog/2018/10/18/1425/ でもフチトリゲンゴロウ?試食の感想がありましたが、同じく強烈にクサイにしてもジャンルの違うにおいのようでとても面白いですね。同記事にフチトリの”外見ではほとんど区別のつかないいくつかの近縁種”についても言及されていましたが、食味によって区別されていく展開があっても楽しいなあなどと考えてしまいました。
いつも陰ながら応援しております。感染症等、穏やかでない情勢ですので、ご自愛くださいませ。益々のご活躍をお祈りしております。
やはり昆虫も肉食のものは臭い傾向があるのでしょうか
ゲンゴロウ汁の風味ですね。
ゲンゴロウつかむと背中から出てくる汁です。