春の三番瀬③三番瀬のカキは恐ろしいほどに美味かった

スポンサーリンク

こういう趣味をしているとよく人にされるのが「お腹は壊さないの?」という質問である。
心配をしていただけるのは大変うれしいことなのだが、実のところ体調がおかしくなったことはほとんどない。
アレルギーが発症してしまったことはあるが、それは市販の食べ物でも同様のリスクであり、今でも注意はしているが後悔したことはない。

アブラソコムツの件は別にして、基本的にはあまりリスクを冒しているとは(自分では)思っていない。
毒があるかどうかは過去の経験やインターネット上にある情報、そして近縁の動植物から推測できるし、ちょっとでも中毒の危険があれば基本的には食べないことにしている。
食中毒は野食ハンターにとっては最大の屈辱であり、危ない橋は渡らないというのが大原則である。

三番瀬で「干潟の牡蠣」を採る

先日の干潟遊びで、満ち初めの水際線でサルボウをほじくり返していると、泥の中に奇妙な割れ目が走っているのを見つけた。

カキ,三番瀬

怪しい


不思議に思って掘り出してみると、それはそれは立派なマガキが出てきた。
カキ,三番瀬

ずしっと来る


一般的なマガキの姿とはかなり異なり、岩にへばりついていないためか両方の殻に厚みの差がなく丸みを帯びていて、土の中に埋もれながら僅かに口を開く姿はまるでシャコガイのようであった。

近くの杭には大量のカキがへばりついているが、彼らは杭や石を足場にすることなく、独立して泥に埋もれながら生息しているようだった。
カキには筋肉がほとんどなく、砂に潜るための足も持っていないため、どのようにしてこの生息形態になったのか見当がつかない。



さて、とくに当たりやすいことで知られるカキ、しかも東京湾奥で採ったものを持ち帰って食べてもいいものか、少しばかり悩んだ。
冒頭で書いた通り、食中毒でも起こそうものなら「食い意地ばかり張って情けない」というレッテルを張られることは間違いない。

工業港などで岸壁に張り付いたカキを中国人らしき人が持って帰っているのは何度か見たことがあるが、とても真似しようとは思えない。
このカキも、もし護岸やテトラポットに着いてるものだったら食べることはなかっただろう。
このあたりはイメージの問題ともいえる。

しかし、全く同じ場所で採れたアサリやホンビノスは問題なく食べられていることや、ぎりぎり「Rのつく月(カキの旬)」であったこと、そして何よりずっしりと持ち重りし、パンパンに張ったカキが美味しそうで仕方なかったことから、3個だけ持って帰って食べてみることにしたのだ。

三番瀬のカキやばい、美味い

川崎まで搬送されてきた三番瀬マガキ。

カキ,三番瀬

殻が滑らかで丸みを帯びる


とりあえず、何も考えずにオーブンで焼いてみた。

殻口が少し開いたところで取り出し、ナイフでこじ開けてみると…

カキ,三番瀬,料理,食べる

うおぉ


ぷりっぷり!!
重いのは殻だけで中身はスカスカだったらどうしようと思っていたが、杞憂だった。
少しばかり砂を噛んでいるので流水でさっと洗い流し、そのまま食べてみる。
カキ,三番瀬,料理,食べる

身が分厚い


(>~<*)
ゥ ン ま あ あ ~ い!!
これは絶品…
肉厚で甘み、旨味ともに強く、焼いてもぷりぷりで身が縮んでいない。
養殖品の上等なものと比べても全く遜色ない、というよりこちらのほうが美味い。

味:★★★★☆
価格:★★★★☆

場所が場所だけに大量に採ってバクバク食べる気にはなれないが、また来年も採って帰ることは間違いないだろう(5月以降はシーズン外)

干潟はカキに最適な土地だった

調べてみると、ヨーロッパの一大カキ消費地フランスでは、ある程度生育した稚貝を干潟に撒いて大きくする栽培方法が主流らしい。
干潟には栄養分が多く、また干潮時に干上がる場所で栽培することでカキの中のグリコーゲンが増えて旨味が強くなるという。
日本でも、大分の中津干潟で同様の栽培方法が取り入れられ、高品質なカキの産地として知られ始めているそうだ。

三番瀬でも、何らかのきっかけで基盤となる障害物を離れた稚貝が、泥に埋もれながら大きくなっていたのだろう。
思わぬ掘り出し物が見つかった気分である。


実は三番瀬のカキは巨大な「カキ礁」を形成し生物相を破壊することで問題となっている。
積極的に食べることで問題の解決になる、なんて夢物語は信じていないが、これからも彼らの天敵になった気分でちょいちょい利用していこうと思う。

※三番瀬でも潮通しの良い場所とそうでない場所があります。
食べる為にカキを採るなら、成分的にも気分的にも船橋寄りの潮通しの良い場所がオススメ。
あと、生はやめといたほうがいいでしょう。

スポンサーリンク
 
スポンサーリンク
野食 魚介その2(魚以外)
スポンサーリンク
茸本 朗をフォローする
野食ハンマープライス

コメント

  1. ザバイバル より:

    お返事ありがとうございました。
    奇遇にも!私も室見川にアサリ採りに行ってます!
    早良区に住んでるのですぐなんですよね~~~。
    その室見川にも沢山牡蠣がくっついてますが、あれも食べられるって事?
    お店で売ってるのと同じ種類なのかなぁ???
    もうじき大潮なのでアサリ採りに行こうと思ってましたが、、、
    うーむ、、、そう考えてみると、あれこれ美味しいものが落っこちてる様な
    気がしてきました。
    嬉しいやら忙しいやら、、ですね(^-^)

    • wacky より:

      なんと!奇遇ですね。。
      僕も当時は早良区に住んでまして、金屑川でハゼを釣りすぎて親に怒られたり、河川敷でセリを採りすぎて親に怒られたり、一の関のテトラポットでモクズガニを掬おうとして川に落ちたりしていました。なつかしーなぁ…

      食べられないことはないと思いますが、河口のカキとムール貝はあまりオススメはできませんね…これはもう、気分の問題なのですが。
      室見川なら大きなアサリと、ちょっと深いところにいるカガミガイがオススメですよ。あと食べ物ではないですけど、黒曜石みたいなきれいな石炭が出てくることがあるのでそれも当時は楽しみでした。

  2. せつな より:

    腹痛に関しては、なんだか理解もしてないものを勝手に信頼して口にしてるほうがよっぽど不自然だと思う。
    食べられるか否かなんて、自然界にいる生き物ならみんな本能でやってること。
    最近の多くの日本人が虫にも劣る点だと思う。

    河口の二枚貝は気分の問題だけではなく、ノロウィルスの温床となるのがまさにソレといわれています。
    生は絶対ダメ。というか、むしろまな板などの調理器具の殺菌が大事。

    下痢性にしろ麻痺性にしろ、カキの貝毒に関しては、カキがダメな時なら同じ場所のアサリだってダメなので、潮干狩りが解禁されている場所・時なら加熱で食べる分には気にしなくていいと思います。
    私はRのつく月とか気にしないです。Rのつく月に発生することもあるし。

    しかし縮みにくそうな最高の身質ですね。
    それは大量にでも欲しい!

  3. wacky より:

    カキの「生食用」表示なんかまさにそうですよね。
    自分の選んだ食材と、その食べ方に対しては自己責任で考えていただければ、こういったサイトをやっている人間には非常にありがたいです。
    まあ、無責任に危険な情報を垂れ流すつもりはないですけどね。巷で流行りのジャーサラダみたいな…

    貝が美味しい=富栄養水域ってことを考えればまあ、河口のカキは美味しいはずですよね。
    しかし砂の中から生きたカキが出てきたときはびっくりしましたよw

タイトルとURLをコピーしました