「野食のススメ」第9回の記事が公開されました。
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星海社Webサイト「ジセダイ」で
「野食のススメ 東京自給自足生活」
を連載しています!!
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フナは美味しい。
川魚の中では、というのではなく、全魚類の中でも屈指といっていいんじゃないかと思う。
肉質が良くゼラチン質に富み、うまみが強くてとてもいい出汁が出る。
なんだけど、どうにも分かってもらえていない。
かくいう僕も長らく「フナは泥臭くてまずい」と思い込んでいて、手を出しては来なかった。
これはひとえに両親のせいで、特に父親がフナ(というか淡水魚)を非常に嫌っていて、僕が釣って持ち帰って来た時もすぐに「全部逃がせ」と言って家をたたき出されたことすらある(まあ、当時小学生だった僕に、寄生虫の恐れのあるフナの処理がきっちりできたかどうかはそもそも疑わしいのだが)。
これは全くのカンなのだが、かつて父は近所で採ったフナを食べてひどく泥臭いのに当たり「フナ=まずい魚」だと思い込んでしまったのではないか。
父が生まれ育った岡山市南部は児島湖を中心にフナが大量に生息し、また漁獲され流通しているのだが、その環境的にかなり泥臭いものがいてもおかしくはない。
なぜフナは食べられていないのだろう
思うに、フナは「まずい」というイメージが先行しやすい魚だ。
まずそのフォルム、冷静に見ればタイ型をしていて美味しそうに見えなくもないと思うのだが、一般の人があの形を見て連想するのはやはり金魚(ヒブナ)の存在だろう。
水槽の中で見かける魚に「美味しそう」というイメージを持つのは悪い飼い猫くらいのものだ。
それから、フナずしの存在。
いまだに「ゲテ食」の範疇に含められてしまいがちなこの料理、「食べたことないけど、臭くてまずいんでしょ?」という理不尽に不名誉な評価を戴きやすい。
“臭さ”はフナそのものよりも発酵過程によって生まれるのだが、食わず嫌いにそれを理解させることは一生かかっても不可能だ(そもそも僕は臭いと思ったことがない)。
コイはまだ、名物とする地方がいくつかあるので食材として認識されやすい環境があると思うが、フナはそれもない。
有名なのは佐賀・鹿島のふなんこぐいくらいだろうか。
個人的に岡山のフナ飯は本当に傑作だと思うので、もっと知名度が上がってほしいのだが、他の淡水魚料理同様に今後消滅の恐れすらあるかもしれない。
それでも、幸いにしてフナそのものが絶滅してしまうという危機は(特にギンブナにおいては)現状では考えづらく、今後何かのきっかけでフナが食材として見直される機会があるかもしれない。
いや、まあ別にそんな機会が来なくったって構わないんだけど、僕はただ単純に、フナがとても美味しいと思うので、今後も機会があればどんどん食べていきたいと考えているところだ。
筑後川水系のフナ、デカくて美味い
さて、そんな僕の最近のフナ推しっぷりを見た釣り友達から「知り合いがフナを持て余してるんですけど、よかったらどうですか」という大変ありがたいオファーをいただいた。
知り合いことKさんは、さいきん僕もSNSでつながりができたばかりなのだが、特に有明海の生物保護・生息環境保持について芯の通った活動をされており、とても尊敬できる方だ。
彼が生物調査やその他の理由で行う投網に、大型のフナがよく入るそうだ。
普段は逃がしたり、あるいは教育機関等からの依頼(解剖の授業で使いたいetc.)を受けて発送したりしているそうなのだが、食用でも送ってくれるだろうか……
「了解です! 明日にでも送りますよ!」
わーい(≧∀≦)ありがとうございます!!
話が早い人だいすき!
そして2日後、我が家に到着したのが
でけえww
いやまあ、以前「野食のススメ」で釣ったものの方が大きかったけれども、それはそれとしてやっぱりフナが30㎝超えてると違和感あるわ……
正確な種類は鰓耙の数を確認しないとわからないのだけど、大きさ的にはゲンゴロウブナが怪しいのではないかという気がする。
かつて室見川のフナを持ち帰って父親に怒られていた僕が、ちょうど20年後に同じ福岡産のフナを調理することになったというのも、考えてみれば面白い偶然だ。
巻頭にだってフナはいっぱいいるのにね。
さっそく調理したいのだが、カチンカチンに凍っているので
まずはクーラーボックスに入れて氷温解凍をかます。
フナやコイは死ぬとすぐに臭みが回り味が落ちてしまうというので、冷凍で送ってもらえたのは本当にありがたかった。
寄生虫の活動も落ち着くだろうし、良いことずくめだ。
さあ、まずはシンプルに食べてみよう。
中くらいのものを用意し、
鱗はそのままに筒切りに。
頭もいい出汁が出るので、2つ割りにして鰓を取る。
胆嚢を割らないように気を付けながら内臓を取りだし、
熱湯で臭みを取り
鍋に入れ、日本酒をなみなみと注いで、水を足しながら3時間ほど煮倒す。
出汁に色が付いたら、味噌を解いて弱火で5分ほど煮て、ネギを散らせば
フナこく、完成!
いただきマース
……(`・~・´)
うん、良い味出てる!
「滋味」としかいいようのない、胃腸にじんわりと広がる優しい味わいがとても心地いい。
二日酔いや肉体疲労時に食べたらポーションレベルの回復力だろう。
飲んでいるとどんどん体がカッカしてきて、汗がにじんでくるのは本当に不思議だ。
冬に食べるときは汗を拭きながら食べないと、体が冷えてしまい危険だ。
味:★★★★☆
価格:★★★★☆
さて、まだまだあるし、このあとはちょっと変わったものにトライしていこうかな。
コメント
コイフナは出汁の味の濃さだったらどんな魚にも負けないと断言できると思います。
学生の頃、かなり世話になったので・・・・。
いいですねぇ、僕も学生時代にフナの美味しさに気づきたかった……関東だとなかなか、狙って大きいの釣れるところがなくて。九州だとえらい簡単に釣れるんですよ。
30年ほど前、岐阜県の祖父母に家に行くと、たまに鮒味噌がありました。
確か近所の人のお裾分けだったような・・・。
幼い頃の記憶ですが、御飯に乗せて食べる鮒味噌は最高でした。
フナ食文化が廃れてしまっても、フナ味噌と佃煮だけはなくならないんじゃないかなぁ……というぐらいファンが多いですよね。もっとみんな利用したらいいのになぁ。。
ウマソー!
フナの鱗ってそのままでも気にならないんですか?
気になるというほどでもないですが、なくても全然かまいません。
うまみのもとになるかなと思って入れてみましたが……微妙。。
下総神崎の漁協組合員の方は、「このあたりでは寒ブナを刺身で食べる」と言ってました。利根川か印旛沼ですね。
あの辺りではハクレンなんかも刺身にするようですね。僕も実はコイ目の魚の刺身は大好きなんですけど、天然ものはどうしても寄生虫が気になってしまいまして……
初めてコメント致します。美味しそうですね、鮒こく。体がカッカしてくるのはお酒のせいですかね?でもアルコールはとんでいるだろうし….
お酒のアルコールは飛んでますからね。。いったいどういったメカニズムでそうなってるのかわからないんですけど、ともかく体の末端が温かくなるんです。連れもそうなるみたいで。。
幼少の頃に諸星大二郎氏のとある漫画でトラウマ(あれは鯉だったけど)を受けて、最近まで鯉と鮒は食べる気になりませんでした。しかし鮒ミンチからの度重なるテロ所業にクラクラ眩暈がしております。
ぬぅ…。絶対今釣れないだろうしなあ。
春!春にカメとフナ!!フヒーッ ヒ、ヒ、ヒ、ヒ。(地球破壊爆弾withドラ)
寒は美味しいんですけど、どうしても自力で手に入れづらいですよねぇ……それこそ投網とかでないと(´・ω・`)
フナの味噌汁の薬味には
生のフキノトウを細かく刻んだものが最良に思う
是非一度お試し頂きたい