「落ちハゼを釣って甘露煮を作る」という冬の最高の贅沢

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1/25 12:00~ 福岡市 樋井川テラスにて開催
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ちょっと時系列が戻ってしまいますが、昨年の釣り納めに選んだターゲットはハゼ(マハゼ)でした。

ハゼ釣りといっても、夏に子供たちが楽しみながら釣る10cm程度のものではなく、水温の低下に備えて深場に落ちてきた、いわゆる「落ちハゼ」の釣りです。
基本的には一年魚であるマハゼですが、ときに冬を越して2年、3年と生き延びるものがいます。

そういった個体は20cmを優に超え、風格が出てきます。


ぼくが福岡にいた頃、ハゼ釣りはあらゆる釣り人の共通言語といえるものでした。
海に注ぐありとあらゆる川にいるハゼは、釣りを覚えたての子供でも頑張れば100匹釣れる容易なターゲット。福岡では「東京ではわざわざ船に乗ってハゼ釣るとよ、よっぽど金持ちなんやねぇ」という定番ジョークがあるくらい、誰でも簡単に陸から山ほど釣れます。まあ、東京のハゼ釣り船もまた乙なものかと思いますけども(;´∀`)

一方で、冬の落ちハゼは名人と呼ばれる人が一日腰を据えて狙う、難しくて趣のある釣りもの。
釣りはハゼに始まりハゼに終わるとはよく言ったもので、ともに成長していくことができる素敵な釣魚なのです。


とか言っておきながらぼくは、魚釣りに行って何も釣れないというのが絶対に許せないタイプなので、落ちハゼと言えども絶対に釣り上げるべく、今回はまいったか筋肉さん氏の案内で㊙️のめちゃ釣れポイントに入らせてもらいました。
かつ、趣のあるのべ竿ではなく、広く探れて釣りやすさ重視のリール竿を複数本用意し遠近攻め分ける……という万全に万全を期した釣りを展開。


結果として堤防のすぐ先、海底が掘り下げられた溝のような場所に落ちハゼの溜まり場を発見。
22cmをトップに20cmオーバーを5匹揃え、無事2019年の釣りを納めることに成功したのでした。

納まったので、翌日は静岡で釣りなんかしなかった、いいね?

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落ちハゼで作る甘露煮は絶品

マハゼは落ちハゼになると、頭と尾びれが大きくなって全体にいかつく、かっこよくなります。骨も結構硬くなるみたいです。
そのためハゼ料理の定番と言える天ぷら、唐揚げはちょっと食べにくくなり、歩留まりも悪く勿体ないです。

このサイズになると、福岡では取り急ぎ焼き干しにしてしまいます。一度かちこちに干すといろいろな料理に用いることができ、また頭も食べることができるようになります。やっていきましょう。


鱗と内臓、鰓をとったハゼを

焦がさないようにじっくりと焼き、水分を飛ばします。


ここから本格的には一斗缶を用いていぶしながら乾燥させるのですが、現代では電子レンジという便利グッズがあるのでそれで乾燥させます。
2、3度チンすれば


カッチカチやぞ!

焼き干し、完成です。ジップロックに乾燥剤とともにいれて置けば長期間保存が可能です。


が、今回はすぐに食べましょう。

板昆布とともに水に浸して、一晩かけて出汁を抽出します。

この出汁に梅酒、日本酒、砂糖と醤油をいれて、ハゼを入れて超弱火でKOTOKOとコトコト煮込んでいきます。

焦げないように水分を飛ばしていけば

落ちハゼの甘露煮、完成!
いただきまーす……

……(;∀;)ウマーイ
正直、みんな「なんだ甘露煮かよ、正月だからってジジ臭いもの食ってんな」って思わなかった? 
実は甘露煮、市販のものは保存性を高めるためにめっちゃみりんと砂糖が入ってるんです(あとは単純にジジババの「砂糖たっぷり=贅沢」という意識の反映でもある)。自作すればあんな「砂糖でベタベタになった魚味の飴」ではなく、「濃厚な出汁で甘く炊き上げた骨まで柔らかい煮物」を楽しむことができます。

そして何より、落ちハゼの味そのものが抜群によい! 
干したハゼはめちゃくちゃよい出汁が出ることで好事家には有名ですが、それが一番活かされる食べ方のひとつが甘露煮なのですね。
煮干しや鰹節とは全く違う、鯛の出汁と貝の出汁を合わせたような……例えるなら円山応挙の描く美人幽霊のように透明感と存在感を兼ね備えたすんばらしい味が楽しめます。

はーうめぇ……ありがたやありがたや……

味:★★★★☆
価格:★★★☆☆
 


落ちハゼの焼き干し、仙台などでは1,000円/匹に至るほど非常に高い価格で売られることもあります。その価値のある出汁だといえるでしょう。

次はもっとシンプルにその出汁を楽しむ調理をしてみたいと思います。

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コメント

  1. a より:

    正直、最近の記事はマンネリ化していて面白くないです。一応新記事が出ると読んではみるものの、眠くなるような内容ばかりで結局飛ばし読みしてしまいます。
    もはやネタ切れなのかもしれませんが、やはり味の想像がつかないような食材の記事が読みたいです。

  2. 伊勢湾育ち より:

    正直甘露煮を軽視してたので面白かったです。甘ったるい保存食のイメージだったもので。
    もともとこのサイトは(ディープな食材であっても)読みやすく楽しく書かれているのがいいなあ、と思っています。
    特定の分野を突き詰める、ストイックに実験する、読み応えのある長文が多い…といったサイトは他にありますし。読み手としては色々な選択肢がある方が楽しいです。

    ただ、体を張ってひどい目にあったり、試行錯誤しながら料理したり、聞いた事もない異国の調理法を持って来たり…そういう記事はやはり面白いですし、今でも再読しています。
    変な物食べた記事も待ってますよ!

  3. 田舎者 より:

    仙台ですと正月の定番がハゼ出汁のお雑煮と、ナメタ鰈の煮付けなので年末は凄く高くなりますね
    釣人がこぞってターゲットにするのも風物詩でした

  4. まん より:

    初めてまして。いつも楽しく拝見しております。
    電子レンジで焼き干しを作る方法について詳しくご教示いただけないでしょうか?(600W程度で普通にチンするだけですか?)
    堤防で釣れる雑魚の活用について考えていまして、焼き干しにして出汁をとると色んな発見があるのではないかと期待しています。

    • wacky より:

      ラップをかけずに普通にチンするだけで大丈夫ですよ! 様子をみながら、器にくっつかないようにこまめに何度かやった方がいいです。

  5. ミッチー より:

    甘露煮がそんなに幸せになれる食べ物とは知りませんでした。
    今まで毎年正月は仕事の付き合いで、高級と言われるおせち料理を食べていましたが、甘いばかりしょっぱいばかりで、大して美味しくもないのに喜んで食べなきゃいけない事にげんなりしていました。
    (今年転職したので、もうあんな正月の茶番に付き合わなくてもいいと思うと清々しております)
    甘露煮も鮒だろうがハゼだろうが砂糖でコテコテにしちゃったら味もへったくれもなかろうに、現代にこんな料理必要無いだろなんておもっていましたが、Wackyさんが言うんだから間違いないですね。
    今年(来年?)は秋だけでなく冬もハゼ釣りで、サワラシーズンまでのつなぎの楽しみができました。

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