先日作ったアカモミタケ塩が好評なのに気をよくしたぼくは、その翌週またも山に入っていました。
狙いはキノコの王様(ぼくにとっての)・コウタケ。今季は大不調によりここまでひとつも採れておらず、一縷の望みをかけてお湿りのあった山に飛び込んだのですが……
……まさかの夏キノコ、ベニテングタケの歓待を受けてやる気が失われてしまいました。
毒キノコというだけでなく、秋の走りに出るはずのこやつが晩秋の山に鎮座ましましている時点で、山のようすは推して知るべきでしょう。キノコ狩りストにとっては受難の年でした。。
果たしてコウタケとはついに邂逅することなく、なぜかシーズンを律儀に守ったホンシメジとムラサキシメジをちょびっと頂戴するに終わってしまいました……
……?
ベニテングタケ、塩にしたら使えるんじゃないの?
帰宅するとなぜか、キッチンにベニテングタケが転がっていました。
一瞬、神の祟り、あるいは宮さんの呪いかとも思いましたが、そういえば自分の意思で持ち帰ってきたんだった。
ベニテングタケ塩を作ってみようと思ったんです。
先日作ったアカモミタケ塩の成功を受け、さまざまなキノコ塩を作ってみようという機運に溢れている茸本家。
キノコの強い旨味と香ばしさを閉じ込めた塩は、一振りでどんな料理も美味しくしてくれる魔法の調味料です。
さまざまな種類のキノコで作って、いろいろな料理に試してみようと思っているのですが、そのなかで「旨みだけならこれに敵うものはないだろうなぁ」と思っていたものがありました。
それが今回のベニテングタケ。
ベニテングタケにはイボテン酸という旨味成分が含まれていて、これは煮干しや鰹節の旨味として知られるイノシン酸の10倍の強さを持つと言われます。
この旨味のため食用にしている人もいるのですが、ご存知の通りベニテングタケは有毒キノコ。このイボテン酸こそが毒成分のひとつで、嘔吐や腹痛、下痢を引き起こすほか、イボテン酸が変化してできるムッシモールという物質が幻覚作用や精神の不自然な高揚をもたらします。いわゆるマジックマッシュルームですね。
幸いなのはこのイボテン酸、毒性があまり強くなく、少量の摂取では中毒に至らないことが多いのです。従って、少量でもその味を楽しめる「塩」はベニテングタケの利用法として最善手のように思われます。
やってみましょう。
ベニテングタケを細かく刻み、塩漬けにして丸一日おきます。
それを水分ごと煎って、水分を飛ばしていきます。
焦げないように注意しつつ、カラカラになったらすり鉢ですって細かくします。
これをふるいにかければ完成。
アカモミタケ塩より赤みが強く、香ばしさが強いです。禍々しさや毒の感じはないのですが……
とりあえず、味を見てみよう。
……(´・~・`)よくわからん
旨味というのは強すぎると人間の舌で感じにくくなるみたいで、塩分と合わさって舌が麻痺してしまいよくわかりません。
なんかに乗せて味わってみますか。
というわけで白飯を炊き、卵を乗せて
ベニテン塩をのせてみました。
よく混ぜてお召し上がりください。
……(○_○)濃ゆい!!
完全に化調のかけすぎ、卵かけご飯のくせに場末のラーメン屋が作る二郎インスパイアラーメンの味がします。アミノ酸で舌が痺れる。
ラーメン屋さんは各種グルタミン酸ソーダの代わりにこのベニテン塩を使えば少量で味が決まると思います。ついでにほかのものもキマるかもしれませんが、それはそれで面白いでしょうか(ダメです)
味:★★★☆☆
価格:★★☆☆☆
さて、このベニテングタケなどさまざまなヘンテコ・トンデモ・絶品食材を食べていろいろな目に遭った茸本の体験記が、cakesでの連載を経て単行本になりました。
ブログとはまた違った切り口の文章をお楽しみいただけると思います。ぜひお手にとっていただけると嬉しいです!
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