このサイトでは毒のある生き物を食材としてとりわけプッシュしているわけではない。
結果としてそういう生き物に食材としてのフロンティアが見いだせるというか、「刺毒は有るけど美味しい」みたいな食材が見つかると単純に嬉しいではないか? という、それだけの話だ。
実際のところ、日本人の食に対する探究心というのは恐ろしいほどのもので、多食毒があっても、また危険でも美味しいものはだいたい食材として開拓済みとなっている。
今回のテーマもそんな毒生物ながら、地方によってはごくごく普通に食べられているものだ。
ガンガゼって採って食べてもいいの?
先日、沼津に投げ釣りをしにいった際、堤防際にそれはそれは見事なガンガゼを見つけた。
1個体だけで、水面近くまでよじ登ってきていた。
本来であればガンガゼは集団で棲息し、互いの長い毒刺を重ねあわせて天敵に対する防御力をアップさせている。
1個体だけだと、棘を咥えてひっくり返されてしまえば途端に無防備になってしまうからだ。
間もなく日が沈むという時間帯で、この子だけややフライング気味に食事に出てしまったのだろうか。
しかし、これまで見たことのある個体の中では最大級といえる。
棘を含んだ大きさは40㎝はありそうだ。
採ってみたいが……ガンガゼであっても、ウニはウニ。
採捕は厳しく制限されているはずだ。
そう思いながらも、やはり気になったので静岡県の漁業権設定状況一覧を確認してみたところ、
静岡県 海水面漁業権一覧
……あれ、ウニ、無いな。
いやまあそれでも、ウニ類は条例や地域のルールで獲れないようになっていることがほとんどだ。
なんなら漁師さんに聞いてみようじゃないか。
ということで近くで釣り人の様子を見ていた漁師らしきオジサンに声をかけてみた。
「あの、すみません、あのガンガゼ採ったらマズいですか?」
「あ? ホントにガンガゼ? ムラサキウニはダメだぞ。」
「あそこにいる奴なんですけど……」
「ああ、ありゃガンガゼだ。要らねえから持ってけ! なんなら採ってやろうか?」
あざっす! よろしくおねがいしまっす!
ガンガゼの捕獲と下処理
ということでゲットしたガンガゼ。
陸にあげても動きは超速い。
毒刺を全力で振り回して襲い掛かってくるのでやっかいだ。
ただ、この棘は非常に柔らかいので、ハサミでサクサクと散髪することができる。
こんな小さなハサミでも簡単だ。
ただ、長さの違う棘が混生しているので、切り残しには注意したい。
また、散発時に跳ねた毒刺の破片が腕の柔らかいところに付着したのだが、その後で多少ピリピリときた。
アレルギー体質であれば切った後の棘にも注意してほしい。
切った棘を堤防上に放置するのは止めYO!
スポーツ刈りになったガンガゼをクーラーボックスにしまったが、その後も中からずっとカリカリ音がし続けたのにはちょっとびっくりした。
ガンガゼを食べてみた
採るにあたり、漁業権とあわせて調べたのがその旬。
ウニは種類によって旬というか、生殖器が肥大する時期が全く異なり、外れの時期のウニを割るとまさに空っぽだったりする。
というわけで調べてみると、まさに今、6月が旬であるという文献を見つけた。
素晴らしいね。
早速割ってみよう。
スポーツ刈りになったガンガゼ。
棘はかんたんに手で引き抜け、さらに殻も指の力だけでパリッと割れる。
2つ割にすると……
おお! 卵詰まってるやん!
海水と同濃度の塩水を作り、殻の中身をぼとぼとと落としていく。
他の内臓をシャバシャバと洗い流すと
キター!!
これは良いウニ!
市販のものと比べると少しばかり色が悪いけど、実にウニらしいウニで嬉しくなる。
早速醤油をかけて食べてみた。
…(・~・)
……
……うん、ウニだね、ウニ……ホヤ!?
口の中が突然ウニからホヤに切り替わってしまって焦る。
ウニの風味はあり、ムラサキウニと比べるとかなり淡泊だが旨味もしっかりしている。
しかし、後味が完全にホヤ。
これ系の珍味が好きな人にはかなり好意的に受け止められると思うが、ダメな人はダメだろう。
うちの連れもどちらかというと苦手な味とのこと。
僕は結構好きだったけども。
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
はじめっからこういう味だと理解したうえで食べれば問題ないとは思う。
現に長崎や熊本では普通に食べられているようだし。
ウニの風味はあるので、加熱調理や、平坂さんがやってたガゼミソのような加工調理には申し分ないでしょう。
今後も親切な漁師さんに出会えたらやってみようと思います。(採っていいのかはっきりするまでは怖くて自分では採れない)
コメント
沼津でよく素潜りをしているりむといいます。
いつもとても楽しく拝見させていただいています。
私も以前気になって静岡県水産資源課に問い合わせてみたところ、以下のような解答を頂きました。
「沼津市(井田、戸田を除く)では、バテイラとウニ
は漁業権の対象となっておりません。また、規則上、禁止期間や体長制限は規定さ
れておりません。そのため、規則第46条の2(遊漁者等の漁具漁法の制限)に規定さ
れた漁具漁法により、これらを採捕することが可能です。」
沼津は場所によってはバテイラ(シッタカ)もウニもたくさんいますが、ルール上は捕っても問題ないようです。ご心配でしたら一度静岡県水産資源課に問い合わせてみるのをお勧めします。
潜ってみるとガンガゼは本当にたくさんおり、磯焼けの原因にもなっているようなので、機会を見つけて私も食べてみたいと思います。
ではでは。
なんとありがたい情報! ありがとうございます!
なるほど、やはり採捕は問題ない、と……。
ただ今回もそうでしたが、個人の漁師さんの中ではウニを採ってると怒る人もいると思うので、あまり堂々とこれ見よがしにやるのは止めたほうが良さそうですね。
ガンガゼは今後も持って帰ろうかな。おっしゃる通り磯焼けの原因になるし、沼津含む西伊豆の磯焼けはホントひどいですからね。。
この神対応は教科書に載せるべき!
漁師さんと海に遊びに来た人が、こんな風に自然な交流ができたら、夢のような遊び場になりますね!
ありがたい限りでした。
ただ今回の漁師さんも、釣り人の無断駐車にブチ切れていたところだったので、その機会を釣り人側がぶち壊しにかかっているというのが現実です……
ガ、ガゼ記事待ってました(*゚▽゚*)
丁度嫁にDPZの記事と合わせて何か確信をと思ってました!これで口に放り込めます。
漁師の方にガゼの棘を海にも陸にも捨てるなと言われたので気を付けて下さい!
まあ、そもそも九州では常食されてるものですからね(^^;)奥様も気兼ねなく食べて大丈夫ですよとお伝えください。
海中もダメですか! じゃあ切った棘はゴミ袋に集めないといけませんね。。