多摩川の「あのカニ」で発酵カニ漬物「がん漬け」を作ってみた

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「NEWSな2人」をご覧いただきました皆様、ありがとうございました。


番組中では様々なものをお二人に採っていただいたのですが、なかでも川のテトラポッドのところでカニを追いかけ回すシーンは番組のハイライトのひとつでした。


あのカニは「クロベンケイガニ」というカニで、多摩川の汽水域ではごくふつうにみられるカニです。いつもは子供たちの良い遊び相手になっている可愛らしいカニですが、今回は大人たちの手で食卓に登場する運びとなりました。

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河口のカニは大体食える

クロベンケイガニは大きくても甲幅40mm程度の小さなカニです。カニのくせに水に浸かることを死ぬほど嫌っており、水から陸地でうろうろしていることが多いです。ときに民家の中に入ってきて害虫的に扱われることもあり、嫌われこそすれ、少なくとも食材とは思われていません。

一方で、河口部に棲息するカニの仲間はこのクロベンケイガニをはじめ「イワガニ科」が多く、いずれも(水中陸上の違いこそあれ)同じような生態で同じようなものを食べています。毒性も報告されていません。
食べても問題なく、実際に食べてる物好き同好の士もネット上で散見されます。


今回は出汁用として活躍してもらいましたが、ぼくは以前からクロベンケイガニで『とある伝統料理』が作れるはずと考えており、今回ロケで大量に捕まえたのを機にそれを試してみることにしました。

がん漬けを作ってみた

九州北西部の有明海沿岸には、小型のカニを使って作る「がん漬け」という伝統料理があります。
泥抜きをしたカニを殻ごとすり潰し、塩漬けにして発酵させるというダイナミックなもので、多くはシオマネキやオサガニなど干潟に生息するものを使用しますが、山間部ではサワガニを用いて作ることもあります。

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であればクロベンケイガニでも作れるじゃろ、ということでやってみることにしたのです。


うちにはすり鉢とすりこ木もありますが、すり潰すにはこちらの

製粉機が便利です。加藤さんも「やっぱり製粉機だよね」と言っていたのでジャニーズ御用達と言ってしまってもいいかと思います(よくない)


氷水で〆たクロベンケイガニを、これでぎゃーっとすり潰して


10%程度の塩と唐辛子を混ぜて、常温で発酵させます。一週間もあればできます。



できました。色味は最悪に近いですね。まあ甲殻類は発酵させると大体こんな色になるからしょうがない。
匂いはどうか……

……オウッ
かなり強い発酵臭です。カニやエビなど甲殻類が発酵するとかなりしんどい香りがしますよね。ありていに言うと車のシートに釣り餌のアミエビをこぼしてしまった時の車内の香り。
まあいいや、ともかく発酵はしてくれたということでしょう。


汽水域に棲息するクロベンケイガニは、肺吸虫などのシャレにならない寄生虫がいる可能性があり、塩漬けでは殺虫できていない可能性もあります。ということでうちの業務用冷凍庫で一晩凍らせてから、食べてみます。


いただきまーす
……(`・〰・´)ほうほう
悪くないんとちゃいますの。。匂いはしんどいけど、味はうま味の塊です。市販のがん漬けと違い、自作すると塩分少な目で作ることができるので、しょっぱさがとがりすぎることもなく美味しくいただけます。(もちろん保存性は下がりますが)

味のほうも、市販のものと違いはあまり感じません。小型のカニをすり潰して塩蔵したら、基本的には似たような味のものができるってことでしょうね。シオマネキは各地で希少な生物になりつつあるので、自作する場合はイワガニ科などたくさんいる種類のカニを使った方がいいかもしれません。


さて、がん漬けはそのまま酒のあてにするのが一般的ですが、個人的にはむしろ調味料としての魅力が大きいと考えています。
とくに炒め物に使うと、このがん漬けひとつでめちゃくちゃ豊かな味のものができるのでお勧めです。具材は野菜だけで十分。


(* ゚Д゚)ウマーい
いくつもの旨味が重層的に重なった味がします。甲殻類の発酵臭は火を加えることでコクのある食欲沸きまくりの香りになり、控えめに言って最高。

味:★★★★☆
価格:★☆☆☆☆


がん漬けですが、カニをすりつぶすときにフードプロセッサーを使うとちょっと粒が大きくなりすぎ、殻が歯茎に刺さったりして美味しくないので、製粉機がおすすめです。それかもうすり鉢とすりこ木で頑張るしかないでしょう。
でもマジでどこにでもいるカニで簡単に作れて、かつ調味料としてはめちゃめちゃ有能だから、よかったら皆さんも作ってみてください。

あ、でも家のなかに入ってきてごみを漁ってるようなやつはなに食ってるかわからないので、川や浜辺にいるやつを使った方がいいですね。



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