多摩川に自生するカラシナの種で「ディジョン風マスタード」を作ったら『魚用和風マスタード』ができた

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昨年の台風19号による大洪水は、日本を代表する都市河川である多摩川にも大きな爪痕を残しました。
社会に多大なる被害を及ぼしましたが、自然そのものも洪水によって大きく変容しました。河口の生物たちは軒並み流され、地形も変わって生物相が大きく変化しました。


そしてこれはたびたびブログやテレビなどでお話ししてきたことなのですが、洪水の影響は陸地にも及びました。

我が家の近所である丸子周辺の河川敷はこれまで、河川敷から水面まで大きな段差があり、洪水の影響をそれほど受けない地形になっていました。そのためアブラナ科の植物でいえば、深く堆砂した場所を好むハマダイコンが優占し、アブラナやカラシナはあまり多くない印象でした。
一方でたった5㎞しか離れていない二子新地周辺は、カラシナがもともと優占していました。

しかし、くだんの洪水はこの一帯の河川敷全体を覆いつくしました。その結果、丸子周辺にもカラシナの種子が大量に運ばれてきたようで、今年の春は景色が一変するほどにカラシナが増えました。
武蔵小杉の街中にも咲き誇り、親子連れが「きれいな菜の花だねー」と言っていました。惜しい。

そして初夏になると

カラシナの果実が結実し、


カラシナの種子、つまりマスタードシードがアホほど実りました。まさに採り放題。
30分で500gくらいのペースで採れました。インド料理屋開ける……?

今回、これを使ってマスタードを作ってみることにしました。

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ただのマスタードじゃ面白くない

なんですけど、野生のカラシナでマスタードを作る試みは、すでにあまたの好事家によって行われており、同じことをやるのは面白くありません。
何か面白い製法とかないものかなーと調べていたのですが、意外と身近なところにネタはありました。

世界中で作られているマスタードですが、その中でも最も有名なものは間違いなく「ディジョンマスタード」だと思います。これはフランスの美食の都ディジョンで作られているマスタードで、様々な料理に添えられています。
このディジョンマスタード、ぼくは寡聞にして知らなかったのですが、マスタードの種を酢(ワインビネガー)ではなく酸っぱいぶどうジュース、つまり未熟なブドウ果汁に漬けて作るのが正しい製造法なのだそう。
なるほど、ディジョンマスタードのあのトゲのない酸味や甘く柔らかい風味の理由はここにあるんだな。


ディジョンならそこいらじゅうにブドウが生ってるから、未熟なブドウの果汁なんていくらでも手に入るのでしょうけど、川崎ではそういうわけにもいきません。さてどうするか……って迷うこたぁねぇです。

我らが果樹農家・山梨県のSmallBearさんにお願いして、送ってもらうことにしました。

ジャパニーズカラシナでディジョンマスタードを作ってみた

ブドウがいいカンジに成熟するまで待つこと3か月。。。届いたのがこちら。

うん、いいカンジですね。まだ赤くなる前の赤ブドウって感じです。


これをぎゅっと絞って果汁をとり、


味見します。
……(`・∀・´)あまいっ!!
予想よりちょっと甘かったです。発送している間に追熟が進んだのかしら。
まあ酸味も十分にあるので問題はないですけどね。


あらゆる果実の中でも最もアルコール発酵が起こりやすいブドウ果汁、ぼやぼやしてると器の液体がオトナな飲料にグレードアップし、同時にワイの身分が犯罪者にグレードダウン(アップかも)しちゃいます。そうならないうちにさっさと作業を進めていきましょう。


保存してあったカラシナの種を製粉機で粉にします。


正しいディジョンマスタードは、種皮の辛みが出ないようにするため、ここで種皮を取り去るのですが、日本のカラシナは粒が小さすぎてそんな器用なことはできないのでそのまま行きます。
製粉機の蓋を開けるとつんとした香りが感じられましたが、西洋産のマスタードシードみたいな目に来るような香りではありません。もしかして、辛み成分が弱いのかな……


ブドウ果汁と少量の塩を加え、よく練ります。ねっとりとして流動性を帯びるようになったら、完成。


うーんいい色! まさにマスタードという感じの色合いです。

多摩マスタード、まさに和風。

ソーセージにつけて、食べてみましょう。いただきまーす

Σ(´Д`;)からいっ!! めちゃくちゃ辛い!! なんだよおいちゃんと辛いじゃねーか!!!

辛さの質は辛子というよりももうワサビに近く、ツーンときてヒーという感じです。なるほど、すり潰しただけでは辛み成分が出てこず、水分と混ざることで初めて水溶性の辛み成分が感じられるようになるわけか。
辛味の刺激は喉の奥を経由し、鼻から無事目にも到達しました。涙が出るほど辛い。その一方で香りは本場のマスタードよりもだいぶん穏やかです。
そして野生種のせいか、強い苦みも気になります。

ソーセージにつけて食べるのはちょっとしんどいというか、あんまり美味しくないですね……


これはむしろ

魚に合うんじゃないかしら!
練りワサビみたいに醤油に溶いて、お刺身につけていただきます。


……(≧∀≦)キター!!大正解!!
醤油に溶いた練り多摩マスタードは、醤油の力で苦みが抑えられて食べやすくなったうえに、控えめな香りが魚にとてもよく合います。ピリッと刺激的な辛味が、魚の脂と合わさって非常に良いマリアージュを見せていますね。
また、この食べ方だとブドウ果汁の果実味も感じられ、それがまた良いです。これたぶんワインビネガーとか使っちゃうとこんなに醤油とマリアージュしないと思うので、やっぱりブドウ果汁、しかも日本のブドウ果汁というのが良いのでしょう。

練り多摩マスタード、ワサビのようでカラシの良さもある、素晴らしい一品に仕上がりました。養殖ブリとか大トロとか、脂っこい魚につけて食べたら最高だわ。


粒のままブドウ果汁につけたものも作ってみました。本当は粒マスタードは常温で熟成させたいのですが、ブドウ果汁でそんなことをしたら本格的に手が後ろに回るのでやむなく冷蔵庫で寝かせます。


うむ、いいカンジ。粒多摩マスタード完成です。


つぶすとふわりと香りが漂います。



こちらは案の定、ソーセージに合いました。すり潰さないと必要以上に辛さや苦みが出ないうえに、プチプチとした質感も残るのでいいですね。


焼き魚にもよかったです。

味:★★★★☆
価格:★★★☆☆



以前、ウワミズザクラを送ってくださったゆんたまさんが、日本のカラシナで粒マスタードを作って販売されていて、それも今回のネタのヒントにさせていただきました。ありがとうございます。

ただ、練り多摩マスタードはほかにない味わいで最高だったんだけど、粒多摩マスタードはゆんたまさん造のものと比べると、あからさまに旨味が少なかったんだよなぁ……
ゆんたまさん曰く「選び抜いた種で作ってます」ということなので、きっと原材料に由来する差なのでしょうね。あれうまかったなぁ……宣伝するからまた送ってくださらないかなぁ……(あられもないおねだり)

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コメント

  1. みやこのきのこ より:

    さすがにブドウ果汁は農園からだったのですねw
    てっきりノブドウかエビガラあたりの果汁で作るかと思いました。

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