日本で一番食中毒の多い有毒植物・スイセンでタピオカを作ってみた

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突然ですが、日本で一番中毒事故件数の多い植物って、なんだと思いますか?

正解は

スイセンです。そう、道端や花壇に植えられている、花の美しいあのスイセン(水仙)。
ちょっと信じがたいと思う人もいるかも知れませんね。花を愛でるものだろ、なぜ食うんだ!?って。でもそこに罠があります。

まず見てほしいのがこちら

引っこ抜いたスイセンです。ご覧の通り、葉はポロネギやニラにパッと見が似ており、鱗茎はまるで小さな玉ねぎのようです(皮が黒いけど)。なのでこれらの野菜と同じところにあると、見慣れない人は間違ってしまうかもしれません。

そして更に恐ろしいことに、スイセンは結構どこにでも生えます。鱗茎から生える植物なのですが、地中にひとつでも鱗茎があるとそこからどんどん殖えちゃうんですね。なので駆除も簡単ではなく、引っこ抜いたはずなのに生えてくるということがあります。
一番怖いのは「畑の土に混ざっちゃった」というパターンで、玉ねぎの横に生えたりするともう事故が起こる未来しか見えません。

そんなこんなで、2019年までの10年間に起こった植物が原因の食中毒事故のうち、スイセンによるものは全体の3分の1弱、62件205人にものぼります。死者も1人出ており、有毒植物としてはかなり注意すべきものだと言えるでしょう。

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スイセンを食べてみた

そんな危険な有毒植物スイセンですが、先日食べてみました。理由は「なんかイケそう」だったからです。
もっとちゃんというと、ぼくはかつてスイセンに近い仲間の植物であるヒガンバナを、毒抜きして食べたことがありまして。

強毒植物「ヒガンバナ」でタピオカを作ってみた
秋の風物詩のひとつであるヒガンバナは、秋の花見の対象にもなる真っ赤な花が有名ですが、野食界隈では強い毒をもつ危険植物として扱われることが多いです。 ヒガンバナには花と葉が別々に発生するという特徴があり、葉だけの時期はノビルやニラなどネ...

同じやり方でスイセンも毒抜きして食べることができるんではないかと思ったんです。
ヒガンバナも強い毒を持ち中毒事故が起こる植物ですが、一方で飢饉などの際には毒抜きをして食用にされてきた「救荒植物」でもありました。スイセンも同じように利用できれば、有事の際に助けになるのではないかと思ったんですね。

顛末は以下のとおりです。

利用するのはスイセンの鱗茎。皮を剥き、スライスしてフープロですりおろします。

これを三角コーナーネットに入れて水の中で揉みます。こうすることで、スイセンが鱗茎にためこんだデンプンを取り出すことができるはず……だったのですが。

ヒガンバナと比べると、水の中にデンプンが溶け出している感じがしません。すごい透き通ってる。完全に嫌な予感しかありません……

容器の底にデンプンを含んだものが沈殿するので、上澄みを捨てて新たな水を注ぎ、全体を混ぜて再びデンプンが沈殿するのを待ちます。こうすることで、スイセンの主要毒成分であるリコリン(水溶性)を溶かし出し、除去することができます。

ついでにここで酢を加え、別の毒成分であるシュウ酸カルシウムを中和する作戦に出ます。

しかし、何度水を替えてもヌルヌルしたものが残り、一方で流すたびにデンプンが失われていくのを感じます。切っているときからなんとなく思っていたけど、スイセンはヒガンバナと比べて多糖類を多く含むのか、非常にヌメリが強いですね。これが毒抜き作業を邪魔してしょうがありません。

9回ほど水を入れ替え、底に残ったものを乾燥させ、水分を飛ばしたものがこちら。

ヌメリのせいで水分がなかなか飛ばずネットリとしています。非常に嫌な感じですが、仮に毒成分が残っていてもこの後の工程で除去できるだろう……という甘めの認識で次に進みます。

ヒガンバナのときと同様、タピオカを作っていきます。手で粒上に丸めたスイセンデンプンを熱したフライパンの上で加熱し表面を固めます。

良い感じです。ちょっと粒でかいけど……

これをたっぷりの湯で20分ほど茹で、水に晒します。

ココナッツミルクとともに器に盛り付ければ、完成!
スイセンタピオカココナッツミルクです。いただきまーす

……(✗👅✗)あぅー
こらあかんですたい。。

簡単に言うと毒抜き不十分でした。リコリンは大丈夫だったようだけど、シュウ酸カルシウムが抜けきってない。
舌が非常にイガイガしてきて、やがて細い針を刺されるような疼痛へと変わりました。飲みこんだら胃腸が大変なことになりそうです。

参考↓
https://www.outdoorfoodgathering.jp/plant/monstera/

調べたところによると、シュウ酸カルシウムを中和し水溶性にするためには、酢酸程度では酸性度が足りんようです。かと言って希塩酸ぶちこんでーというわけにもいかぬし、難しい……
まあ、食べないほうが良いでしょうね。

味:☆☆☆☆☆ 入手難易度:★☆☆☆☆

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植物 毒・食中毒
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コメント

  1. ナマステ侍 より:

    シュウ酸カルシウムってこんにゃく芋の毒と同じですよね?
    こんにゃく作るときみたいに灰汁で取り除けないでしょうか?

    • 茸本 朗 より:

      コメントありがとうございます。実は同じようなコメントをYouTubeのほうでもたくさん頂いているのですが、シュウ酸カルシウムも灰汁もおなじアルカリ性なので中和することができません。コンニャクに灰汁を入れるのはコンニャクを凝固させるためで、シュウ酸カルシウム自体は加熱で除去しています。

      • ナマステ侍 より:

        なるほど。でしたらクエン酸か乳酸はいかがでしょうか。クエン酸はカルシウムと錯イオンを形成するので水に溶けやすくなると思います。乳酸はシュウ酸より電離度が高いようなので中和できそうです。クエン酸はそこらの大きめのドラッグストアで食品グレードのものが簡単かつ安価に買えます。乳酸はあまり見かけないので通販になるでしょう。
        酢というか酢酸よりはましそうってぐらいなのでいけるかどうかはわかりませんが、体張っていただけるのなら試してみていただきたいです。(化学の専門家ではないので少々怖いですが……)
        クエン酸は尿路結石の治療にも使われるぐらいみたいなので期待できるのではと思っています。

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