イタドリのシュウ酸をやっつけるべくクリーム煮にしてみた

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cakesにて茸本朗の連載
野食ハンターの七転八倒日記
が始まりました!

野食失敗体験を中心に、ブログとはちょっと違った切り口の記事を公開していく予定です。
合わせてお楽しみいただけると嬉しいです。
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6/22より、

「僕は君を太らせたい」

連載開始予定!

だんだん↑の宣伝コーナーが縦に長くなってきました(;^ω^)なにとぞご容赦ください。。


さて、このひと月の間に、何度かにわたってイタドリをいただきました。

皆さんイタドリってご存知ですか? 雑草の中では比較的有名だと思うんだけど……
どちらかと言うと地方名のスカンポの方が知られているかも。

「スカンポ」を漢字で書くと「酸模」、茎をかじると酸っぱいからというのが由来です。
「摸」の方はどういう意味なんだ……?

ちなみに民間薬草としても知られており、葉をもんで汁を傷口につけると痛みが取れることからイタドリ(痛取)という名前がつきました。


このイタドリですが、多くの地域では非常に厄介な雑草のひとつ。ちょっとした空き地や道路の法面にもすぐに発生し、あっという間に大きくなり群落を作ります。それどころかアスファルトを突き破って出てくることすらあります。
東アジアが原産地ですが、現在ではヨーロッパ大陸やイギリスにも移入しており、侵略的外来種ワースト100のひとつになっています。

特にイギリスでは被害が深刻になっており、生物農薬として、イタドリを食草とするキジラミ「イタドリマダラキジラミ」を導入しました。
生物農薬というのは、自然保護的には典型的な死亡フラグのひとつですが、これは大丈夫なんでしょうか。
カメムシ目の昆虫は広食性ではない(≒特定の植物のみを吸汁する)ものが多いので大丈夫なんだとは思いますが、生き物というのは時にこちらが予想していないムーブをすることがあるので……


ちなみにヨーロッパにイタドリを持ち込んだのはあのシーボルトだという説があります。
彼はものを国外に持ち出しては怒られ、大陸に持ち込んでは怒られで大変ですね……まあ当時は外来種による害なんてほとんど分かっていなかったでしょうけど。

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イタドリのシュウ酸をなんとかしましょう

さてこのイタドリですが、高知県ではとてもメジャーな山菜のひとつだったりします。
山菜どころか野菜に近い扱いを受けることもあるそうで、シーズンになると八百屋もに当たり前に並ぶそうです。

しかしそのいっぽうで、山菜の中では比較的処理が厄介なものでもあります。
それは大量のシュウ酸が含まれているから。

上記の通り、生でかじると酸っぱいのですが、その酸味の成分のひとつにシュウ酸があります。
シュウ酸は発がん性をもち、またカルシウムと結合しやすく、体内で必要なカルシウムの吸収を阻害してしまうことがあり、劇物として指定されています 。
あ、あと結石の原因にもなるそうです。むしろこれのほうが怖い……

そのため食材にするためには、まずこのシュウ酸を何とかしてあげる必要があります。

高知ではイタドリの皮を剥いた後、にがりをたっぷり含んだ粗塩でよく揉みます。
こうするとにがりのマグネシウムとシュウ酸が結合してシュウ酸マグネシウムとなり、 体内に吸収されなくなります。
化学実験さながらで、全くよく考えたものです。

実際にやってみました。
まずはイタドリの皮をむきます。

気持ち良いぐらい綺麗に剥けます。
なんだか男の子が好きそうな作業ですね。

ズルムケイタドリをさっと湯通しし、たっぷりの海塩で揉みます。

これを一晩つけた後、取り出して表面の塩を洗い流し、さらに数時間水につけて塩抜きをします。


後はこれを煮つけたり、あるいはだし醤油をかけてそのまま食べたりしても美味しいです。
なすとたけのこの中間のような味わいと言うか利用法です。
パリッとしてちょっとふにゃっとしてわずかに酸味があって……これはね、好きな人は本当に好きだと思う。山菜の域を超えていると言っても過言じゃないかもしれません。
高知の人は偉いよね、あんなに美味しいものがたくさんあるのに、こんな道端の雑草の美味しさまでに出してるんだから。


でも考えてみたら、このやり方も最後に水にさらすので、シュウ酸以外の成分やうまみ成分が出て行ってしまいます。
それはちょっともったいないので、塩を使わないでシュウ酸を抜く方法はないかなと考えてみました。

イタドリをクリーム煮にしてみた

上記の通りシュウ酸は他の物質と結合しやすいという性質があります。
であればにがりのマグネシウムの代わりに他の物質と結合させてやれば良いのではないのでしょうか。

というわけで皮をむいてさっと湯通しにしたイタドリを

牛乳に漬け込んでみました。
全体を牛乳にしっかりとつけて揉み込み、そのまま一晩放置します。
そう、シュウ酸をカルシウムと結合させて体内への吸収を阻害させる作戦です。


一晩たったら取り出し、新たな牛乳でさっと煮て、鳥ガラスープで味を調えます。


缶のホワイトソースを入れて、じっくりと煮たら

イタドリのクリーム煮、完成です。

科学的にはシュウ酸の害は問題なくなっているはずですが、大事なのは味。
いただきマース

……(`・〰・´)
うん、これは美味しい!
柔らかくてとろっとした食感とちょっとパリパリした根元の歯ごたえがクリームの風味とよく合います。
わずかに残った酸味も鶏ガラ・クリームと一緒になると心地よいアクセントです。

胡椒を効かせた方が美味しいですね!

味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆


そもそも荒塩で揉むのはシュウ酸を抜くだけではなく「保存性を高める」という意味合いがあり、こちらの方が正しいやり方だとは言えます。
ただ、たまにはこういう角度を変えた料理も面白いのではないでしょうか。

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植物
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野食ハンマープライス

コメント

  1. 通りすがり より:

    はじめましてー
    いつも楽しく拝見しています。
    さて、イタドリなのですが北海道のある地域でジャムにされているとかなんとか……こちらの記事を見る限りだとジャムはちょっと危険そう?
    自分は野食も化学も知識に乏しいのでなんとも言えないのですが、参考までに……

  2. ちかひろ より:

    はじめまして。
    解毒はヤバイ領域ですね。
    組み合わせ変えるのに震えました。
    これからも楽しみに見ています。

  3. つや より:

    スーパーヅガンにツカンポの花というのがあったのを思い出しました。

  4. たらお より:

    いつも楽しく読ませていただいております。
    いつもながらの発想力と試してみる行動力に脱帽ですが、イタドリって酸っぱい・えぐいだけじゃなくて、泥臭いような微妙な匂いしませんか?
    連れ合いがみじん切りにしたもの(生)をピクルスにして本人はずいぶん気にいってるようですが、僕は匂いがダメ。
    湯通しして水に晒すとこの匂いがなくなるので、水に溶けたものは積極的に捨てていきたい派です。
    牛乳で匂いは取れましたか?

  5. 通りすがりの土佐人 より:

    高知では
    皮むき後にフリーザーバッグに入れて2~3ヶ月冷凍にするとアクが抜ける・・・
    というのを保存がてらにやってる方が多いです。
    昔は自分で採ってきて皮剥いてアク抜き・・・してましたけど
    今は良心市やスーパーその他の産直コーナーで
    農家のおばあちゃん連中が「しまかに(土佐弁でコツコツ地道にとか念入りにとかいう意味)」処理したものが安価で売ってますんで
    そっちを買う方が多いです。
    シーズンを過ぎても上記の冷凍処理のものが店頭に並ぶので、その気になって県内を探せば冬以外はいつでも食べられます。

  6. にく より:

    シュウ酸カルシウムっていわゆるコンニャクイモの毒部分な訳で、クリーム煮が美味しく食べられたのならそれはカルシウムの作用ではないのでは?
    シュウ酸カルシウム自体はパイナップルとかにも含まれてるし少量なら無視できるのかしら

  7. ゆーき より:

    はじめまして!
    いつも大変楽しみに拝見させていただいております。
    私の地元 秋田県由利本荘市の一部では萌芽して間もない4cmから8cm程のオオイタドリを「サシコ」や「サシボ」と呼んで春の味覚として珍重します。
    特にアク抜きなどせず、味噌汁やおひたし 天ぷらなどにして食べるとコリコリとした歯応えと独特のヌメリ 酸味がマッチして美味です
    ただ、横浜に住んでいた頃箱根で採集したものを同様に調理しましたが、エグみが強すぎて食べられませんでした。
    秋田県の鳥海山周辺地域の土壌のせいか種類のせいかわかりませんが、不思議でしたね。

    • wacky より:

      ほう、オオイタドリの新芽をそのまま……おいしそうですね(`・ω・´)イタドリの仲間は生育環境によって形状やサイズが大きく変わるので味も変化するかもしれませんね。
      今度普通のイタドリでやってみたいと思います。

  8. yama より:

    牛乳のカルシウムはそこまで多くはないと思います。ホエイタンパク質が殆どなので。シュウ酸が水溶性ならばスライス&茹でこぼし
    や、ゆでこぼし&塩で揉み浸透圧で植物液を出す事にやはり効果が有るはずと思います。

    • 茸本 朗 より:

      なるほど! やはり素人考えよりも、昔ながらの知恵のほうが良いのですね……

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