この秋のすべてをつぎ込んで、本場の中華を超えてみた(雲南キノコ鍋2020)

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ぼくの一番好きな中華料理に「雲南キノコ鍋」というものがあります。

雲南天然キノコ鍋 alla 軽井沢
先週末の連休初日は長野出身のアウトドア友達とともに、松本平方面でマツタケ狩りに行く計画を立てていた。 しかし今年のキノコの年間進行は、割りと駆け足だった去年よりも更に早回しで、10月の声を聞くとともに、マツタケなど秋のキノコは姿を消し...

簡単に言うと「複数のキノコをぶち込んで採ったスープ」です。鍋とつきますが、具材には基本的にキノコしか使わないようです。シンプルでいいですよね。

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雲南キノコ鍋とは

ただここにはいくつかのルールがあるそうで、曰く「乾燥品は使わない」「動物性のスープで煮る」そして「その時採れるキノコを、できるだけたくさん入れる」とのこと。
世界の食用キノコの2/3が採れるともいわれる雲南省では栽培きのこはあまりメジャーではないようで、本場の雲南キノコ鍋に使われるのは基本的には天然ものだそうです。この料理が作られるのは6~10月のキノコ発生最盛期のみとのことですが、それぞれのキノコの発生期は2週間程度ですから、時期によって大きく味が変わるはず。つまりこの雲南キノコ鍋は、いわば「旬」が溶け込んだスープだといえます。

あらゆるキノコの栽培技術を開発してしまう日本のキノコ好きっぷりも素晴らしいですが「その時生えている天然キノコを一期一会で楽しむ」雲南キノコ鍋にぼくらキノコ狩りストが惹かれてしまう気持ちもわかっていただけるのではないかと思います。
この料理もまた、中華の真髄のひとつではないでしょうか。

本場を凌駕したい

さてしかしこの雲南キノコ鍋、今では中国の人もなかなか本格的なものは食べられないと聞きます。

中国国民の購買力が向上した結果、フカヒレをはじめ様々な高級中華食材の値段が高騰しているのは有名な話ですが、雲南の天然キノコもその例に漏れないみたいです。できるだけたくさんの種類を入れようにも、一つ一つが高騰してしまい、庶民には手が出しづらくなっていると聞きました。
そもそも天然キノコなので需要が供給に追い付いていないというのもあるでしょう。乱獲が続けば来年以降さらに供給が減り、ますます手が出せなくなるのは間違いありません。


今はコロナでとてもそういうわけにはいきませんが、最近ではこの雲南キノコ鍋を食べるために雲南省に向かう人も少なくないらしいです。
もちろん雲南省には他にも沢山の名物料理があり、ぼくも訪れてみたいと思ってはいますが、それはそれとして雲南キノコ鍋自体は日本に自生するキノコでやっても同じように美味しいものが食べられると思います。というか、凌駕できます。なぜなら「種類数こそ力」という世界観だから。


ぼくは毎年10月終わりになると、直近で採れたキノコをいろいろぶちこんだ「なんちゃって雲南キノコ鍋」を作っていますが、今年は秋の訪れが遅かった関係もあり、例年よりも沢山の種類のキノコが手元にあります。
これを全てぶちこむことで、本場中国のアッパーミドルがいくらつぎ込んでも食べられないようなすげースープを作ることができるはず。
考え方としてはかなり下品ですが、この下品をやりきれるのもまた野食の魅力といえるでしょう。世界一のスープを、おれは作る!

茸本流雲南キノコ鍋を作ってみた

今回使うのは


クリタケ


コウタケ

クリフウセンタケ



カラカサタケ


サクラシメジ


ナラタケ



アカモミタケ


ムレオオフウセンタケ


ハナイグチ



アミタケ


ホウキタケ


ホンシメジ


シモフリシメジ


シモコシ


ムキタケ

クロカワ


トリュフ(イボセイヨウショウロ)

ギリギリまで悩みましたが、今回フキサクラシメジ選手は先発から落としました。ああいう個性強いやつが一人いるチームは強くなるもんなんですが、今回はチームの和を重視する戦いなので外れてもらいました。いつかぼくが彼を使いこなせるようになった日には、出てもらうことも考えています。


これらのキノコを水から煮て、火を切って一晩おき、また煮たてを何度か繰り返します。
本場ではスープに生のキノコを入れていきなり煮てしまうのですが、これだとキノコは美味しいものの汁にキノコの旨味があまり出ないように思います。

今回はスープをスペシャルなものにしたいので、キノコから出汁を引っ張り出すのに注力しました。


スープのベースにするのは、ごく一般的な骨付き鶏肉。
いろいろやりましたが、キノコに一番合うのはやっぱり鶏スープかなと思っています。

これも単体でまず出汁をとります。



鶏出汁をキノコの鍋に合わせ、ここからさらに弱火で2時間煮ます。


お互いの旨味ががっちり合わさり、汁が煮詰まってとろみが出てきたら、完成。


いただきまーす!

……ンホッ(変な声でた)なんじゃこの出汁は! 美味いとか濃ゆいとかそういうレベルではもはやない、なんというか「汁のイデア」という感じ。
キノコを入れれば入れるほど、一つ一つの個性は消え去って、ひとつの大きな「意思」みたいになりますね。ただただ舌を通して強い快楽を脳に伝え、旨死させようというキノコ鶏連合軍の強い意志。キノコのグアニル酸やその他未解明の旨味アミノ酸が、鶏のイノシン酸とアウフヘーベンして一つ上の次元に向かっています。

ひとつのキノコの旨味や香りをじっくり味わおうとしても、横から別の旨味が見えない角度で飛んできます。これはまさに旨味の暴力、汁物界の井上尚弥です。

味:カンスト
価格:∞


こういうことをやるために生きてます。

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キノコ
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野食ハンマープライス

コメント

  1. きのこ好き より:

    雲南キノコ鍋、仕事で雲南省に行った時に食べました。市場のすぐ近くの店で、買ったキノコをそのまま持ち込んで鍋にして貰うケースもあるみたいですね。
    鶏肉をベースにした黄金色のスープを吸ったキヌガサタケがとても美味しかったのを覚えています。またいつか食べてみたいものです。

    • 茸本 朗 より:

      キヌガサタケは絶対入れる! というお店も多いらしいですね。確かにあの食感は唯一無二。。

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