「ツブ貝の毒で酔っぱらう」のは可能なのか、試してみた

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先日、焼津の長兼丸さんでオオグソクムシ漁を手伝っていた時のこと。

長兼丸さんのオオグソクムシ漁に同行させていただいたらお土産たくさん
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細長くてやや大きい巻貝が混獲されたのですが、それを見て船長が「この貝は美味いけど、食べると酔うからよかったら試してみたら?(笑)」と言いました。
どゆこと? と調べてみると、その貝は「エゾバイ科」というグループに属する種で、唾液腺に「テトラミン」という毒を含んでいることがわかりました。

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貝の唾液腺で「酔う」?

テトラミンは肉食性の巻貝が持つ毒成分のひとつ。
捕食の際に使うとみられており、唾液に含まれています。麻痺性の神経毒の一種です。
この毒はエサとなる動物だけでなく人間にも効果があり、テトラミンを摂取すると30分程度で「めまい、酩酊感、足のふらつき、頭痛」などの症状が出るといいます。これが「酔う」と言われるゆえんです。

長兼丸さんに乗り込むとき、ぼくが船長に「なんでも食うことを信条としている」と言ったため、船長が「毒のもんも採れるんだぞ、食えるもんなら食ってみろ」という意味で上記のような冗談を言ったのでしょう。その時は固く遠慮させていただきました。


厚労省によると、テトラミン中毒は年に10人程度が報告される一般的な食中毒事故です。
肉食性の巻貝を食べるのを控えれば中毒を防ぐことはできますが、ところがどっこい「エゾバイ科」には「ツブ貝」として知られるエゾボラやエゾボラモドキなどといった非常に重要な食用貝が多く含まれています。皆さんがすし屋や居酒屋で食べているツブ貝は、有毒部位が除去済みのものなのです。

エゾバイ科の貝は名前の通り北日本に多く、かつては鮮魚で流通するのは北海道くらいだったそうです。しかし冷蔵技術の発達とともに全国に輸送されるようになり、現在では都心のスーパーでも丸のまま売られているのをよく見かけます。
北海道では売り場に「有毒部位の除去方法」が掲示されているのが普通だといいますが、関東ではそのような注意書きは見かけないことも多いです。全国の中毒件数が減らないのもさもありなんでしょう。


しかしその一方で、かつてこのテトラミンを「好んで摂取する」人がいた、という話を耳にしました。

なんでも上記の症状が「酒に酔った時の状態に似ている」とのことで、戦後すぐの酒が手に入りにくかった時代に、その代用として「ツブ貝のテトラミン」が用いられたのだそうです。

確かにテトラミン中毒は長くても数時間程度で治まり、死に至ることもありません。(『巻貝:唾液腺毒(テトラミン)』厚労省HP「自然毒のリスクプロファイル」)後遺症もなく、もし一過性でこれらの症状を「楽しめる」のだとしたら、それは嗜好品と言えるものかもしれません。

ちなみにキムタクが主演した映画「武士の一分」で、主人公三村新之丞がツブ貝の毒で失明するというくだりがありますが、いったいどれだけ食べたらそうなるのか。城内全員分のツブ貝料理の毒見でもしたんでしょうかね? まあまずありえないことかと思います。


ツブ貝酩酊、想像するほどに試したくなってきました。こんなに危ない気持ちになるのはきっと、先日平坂さんとトークショーをやったからでしょう。
なんかあったら奴のせいにすりゃいいな。ちょっと食べてみよう。

ツブ貝の唾液腺食べてみた

というわけで、おなじみ吉池さんで鮮度ばっちりのツブ貝(エゾボラ)を購入してきました。500g強のまあまあサイズです。

殻を割り、中身を取り出して


捌いて、唾液腺を取り出します。

唾液『腺』と聞くと内臓(中腸線)に付随していそうな雰囲気を受けますが、この部位はなんとメイン可食部である足の筋肉の中に埋め込まれるように入っています。
これは気づかないで食べちゃう人もいるでしょう。あなこわやこわや。


取り出した唾液腺。なんだか牛モツの脂身のように見えますね。この見た目から、北海道ではツブ貝の唾液腺のことを「あぶら」と呼ぶのだそうです。

とりあえず、生で食べてみましょう。いただきまーす

……(´・〰・`)なんだろなこれ
美味しいかまずいかで言うと、ややまずい寄り。臭みなどはありませんが味もあまりなく、噛むとサクッとした歯ごたえがあるものの、若干歯にニチャっとくっつく質感もあり心地よくありません。


加熱しても毒性は消えないそうで、さっと焼いてみます。
塩コショウで食べてみるか。

……(`・〰・´)??
あれ、なんか、ペペロンチーノの味……?
なぜだろう、焼くとニンニクのような香りが出ました。謎の脂っこさも感じられるようになり、全体としてペペロンチーノっぽいです。
それでいてけして美味しいというわけではなく……なんだろなこれ、不思議。。

ツブ貝で酩酊してみた

食べてから30分ほどで症状が出るとのことで、椅子に座りのんびりとネットサーフィンをしながら待っていると、20分過ぎくらいから徐々に、背中がじわっと暖かくなるような感覚がでてきました。
やがて頭にその温かさが昇ってくると、だんだんカーッとなり、やがてふわふわしてきました。
ここでやおら立ち上がってみると、わずかに足が重いような感覚もあります。なるほど、これがテトラミン中毒……

……うーん。。
なんでしょう、これ、あんまり気持ちよくないですね。もっとふわふわして楽しくなるかと思ったけど、ふわふわはするけど楽しくはない……なんでだろ……

わかった、気分の高揚がないからだ。
お酒に酔うのが楽しいのは、あのふわふわした感覚にテンションの高さが加わるから。テンションも高くならずにふわふわしたところで特段面白みはないですよね。
中毒症状に「酩酊感」と会ったけど、酩酊ではないですね。どちらかというと、軽ーい睡眠薬を飲まされたような感じ。
体や頭の操作性が9掛けくらいになって、不思議な感覚ではあるけど不快感もあります。

テトラミン中毒ではこのほか目のちらつきや痛みなどが出ることがあるようですが、今回はそのたぐいの症状はありませんでした。人によっては強烈な眠気に襲われてしまうこともあるようです。
酒同様、テトラミンの摂取後は仕事や車の運転は控えたほうがよさそうですね。


もっと量を摂取したらまた変わってくるかもしれませんが、やめときます。あんまりやるとまた多方面から怒られが飛んできそうだし。

それではいつも通り、こちらの言葉で締めさせていただきたいと思います。
「よい子と普通の大人の皆さんはマネしないでね!!」

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魚介その2(魚以外) 毒・食中毒
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野食ハンマープライス

コメント

  1. 883460 より:

    アルコールって優秀なドラッグなんですねーやっぱり

  2. より:

    こんばんは。
    愛媛で毎日楽しく拝読しております。
     数ヶ月前、市場で「調理は茹でるだけ。サザエより美味しいよ!」と教えてもらい、テングニシ貝を購入しました。
     味は大変良く、辛子酢味噌で食べ進めるうち、何だか口内がピリピリと、、、
     特に水管?と白い塊が刺激的な事に気付き、嬉しくて中途半端に調べつつ一人で完食しました。上記のアブラは初味見でしたが、そうですか「酔う」んですね。お酒もしこたま進んでいたので、ソコに気付けませんでした。
     その時は確認もせず、翌日からやたら下したのも、勝手にテトラミンのせいにして納得したままでした。食材に対して、丁寧さが足りなかったかなと反省してます。
     今後とも楽しみにしております。お体にお気をつけください。

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