ミズダコの卵焼き!?

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卵焼き(目玉焼き)は何の卵で作ったものが好き

という質問をされて面食らったことがある。
横浜中華街の水族館で行われた、深海ザメとオオグソクムシの試食イベントでのことだ。

深海ザメ漁の第一人者・長兼丸の長谷川さんの家では、長らく卵焼きと言えば深海ザメの卵を使ったものだったそうだ。

深海ザメの卵の煮物。煮るとなぜかジャガイモっぽくなる

深海ザメの卵の煮物。煮るとなぜかジャガイモっぽくなる


鶏卵が現在と比べて遥かに高価だったことや、それ以上にサメの卵の価格が安く、多くが自家消費に回されていたことなどが理由だという。
(現在では、東京の店に入荷するときはそれなりの値が付いている)
鶏卵とくらべると味が薄く、それほど好きなものではなかったという。

その後、サメの卵で作られた卵焼きを食べる機会があった。
確かにややぼんやりとした味わいではあったものの、普段食べ慣れていない身からするとなかなか面白い珍味に感じられた。

それ以降、変わった卵が手に入ったときは卵焼きを作ってみているが、その多くは魚卵なので、いわゆる「卵焼き」には仕上がらず、焼きたらこみたいになってしまうことが殆どである。
サメの卵はなかなか手に入らないので、もうあの味わいは楽しめないのだろうか…と悶々する日々を送っていた。

高級珍味「ミズダコの卵」をゲットした

そんなある日、いつものように吉池をぶらぶら散歩していると、出口の横に水風船のようなものが鎮座ましましていることに気づいた。
ミズダコ,卵,吉池
見てみると「ミズダコの卵巣」だという。

タコの卵については、イイダコのそれが圧倒的に有名であるが、マダコも「海藤花(かいとうげ)」という名前で吸い物などに利用される。
しかしミズダコとは初めてだ。

㎏あたり1500円とそこそこするが、物は試しと一つ買ってみることにした。

ミズダコの卵の醤油漬けと塩辛

調べてみると、ミズダコの卵は醤油漬けにするとイクラのような、塩と酒で漬けるとイカのような味わいになるという。
なぜタコなのに魚卵になったりイカになったりするのかは不思議であるが、とりあえずどちらも作ってることに。
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水風船状の膜は意外と丈夫で、包丁の先がなかなか刺さらない。
ようやく刺さったと思っても、手で強く引っ張らないと中身が出てこない。

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無理やりに引っ張り出すと、卵というよりは白子のようなどろりとしたものが出てきた。

どうやらこの卵、大きさの割に成熟が進んでおらず、まだ粒がはっきりとしていない時期のもののようだった。
本来ならイクラと同様、熱めの湯の中でほぐして一粒ずつ分けることができるらしいのだが、この状態では難しい。

仕方がないので、口に当たりそうな厚い膜のみをしごくようにして取り去ることにした。

醤油漬けは白だし、みりんと醤油を適当に混ぜた中に漬けこむだけ。
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塩辛は酒と塩を適宜入れるだけ。
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見た目はだいぶんアレだなぁ…
そもそもイイダコの卵なんかは生で食うと中るらしいのだが、ミズダコは大丈夫なのか?

おそるおそる食べてみると…
…(・~・*)
悪くない。
ミズダコ,卵,塩辛
見た目に反して生臭みはほとんどなく、味も予想外にさっぱりしていておとなしい。
食感は比べるべくもないが、風味は確かにイクラっぽさもある。
酒のあてには塩辛、ご飯の友には醤油漬けがいいと思います。

味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆

今回ぐらいのものでも悪くはないが、やっぱり粒がはっきりしているものの方が口当たりが良く見た目も美味しそうになるのでは。
成熟したものは膜の向こうに粒がはっきり見えるので、そういうやつを選んで購入したほうが良さそうだ。

ミズダコの卵焼きは美味い

さて、残りの卵で今回の本命、卵焼きを作ることに。
砂糖と白だしを適当に入れて混ぜ、油を引いたフライパンに流し込む。
あとは少し固まったら端からくるくると巻いていこう…と思っていたのだが…

あっという間に固体化し、丸めるには分厚くなりすぎてしまった。
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仕方ないので円盤状のまま裏返し、両面ともに良く焼いて完成とした。

卵焼き…というよりも具のないお好み焼きか、白身だけで造ったビルダー用卵焼きのように見える。
一口齧ってみると…

…(・~・;)
うーん、ものすごいぼんやりした味わい
卵焼きのような、かまぼこのような、焼きイカのような、とらえどころのない味と香りと食感。
黄身の風味が混ざった白身のような…

連れに食べさせてみると、同じような感想を持ったようだが、突然ひらめいたような顔をして台所に行き、もみのりとウスターソースを取ってきた。
ミズダコ,卵焼き
半信半疑ながらかけて食べてみたのだが、これが何と大当たり
なんというか、10人中9人が祭りの縁日を思い出すような味わいの何かができあがった。
焼きイカとはしまきが混ざったような…
うーん、これは不思議な美味しさ。

味:★★★★☆
価格:★★☆☆☆ 完全にBグル

良くわからないけど美味しい

クラーケンそのものの見た目をしているミズダコだが、その卵は表現に困る不思議な味わいだった。
一つ言えるのは、カロリーは普通の鶏卵と比べてもかなり低そうだということ。
プロテインを採りまくりたいけど、もう白身だけの生活には耐えられない!という人にはオススメ。鶏卵と比べるとずっと高いけどね…

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魚介その2(魚以外) 吉池
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