強毒植物「ヒガンバナ」でタピオカを作ってみた

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秋の風物詩のひとつであるヒガンバナは、秋の花見の対象にもなる真っ赤な花が有名ですが、野食界隈では強い毒をもつ危険植物として扱われることが多いです。

ヒガンバナには花と葉が別々に発生するという特徴があり、葉だけの時期はノビルやニラなどネギ類の山菜と微妙に似ているので、しばし誤食事故が起こります。
見た目の違いもさることながら、ヒガンバナはネギのような食欲の出る香りがなく、青臭くて不快な臭いがするのですぐに違うとわかるのですが……


ヒガンバナの毒はリコリンなど数種類の成分からなり、園芸植物のなかではかなり強く、時に呼吸困難で死に至ることもあります。
古くから知られた毒草で、そのため墓地の周囲などに植えられて死体を荒らす動物たちを防ぐのにも使われました。(効果があったかはわからないけど)

綺麗な赤はあまりの鮮やかさから辛気くさいものにもとられ、華やかさと後ろ暗さの同居する花として様々なモチーフとなってきました。地獄に咲く花、なんていわれることも多いよね。

しかし今回はこのヒガンバナを、パリピ御用達のウェイウェイなアレに仕立ててみようと思います。

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ヒガンバナでタピオカを作ってみた

ヒガンバナは救荒植物としても知られており、飢饉のときなどは地下の鱗茎を砕いてデンプンをとり、食用にしました。
有毒成分は水溶性のため、取り出したデンプンを何度も水にさらすことで毒を除去することができます。

取り出したデンプンはわらび餅みたいに練って「へそび餅」などと呼ぶ食べ物にされたそうです。
今回はそれを作ろうかと思ったのですが、せっかくなのでもうちょい今風のものを作ってみることにしました。

そう、タピオカです。

「……いや、お前こないだ漫画でやってたやんけ。」という読者の皆さん、いつもありがとうございます。
今月末に3巻出ます。あとは、わかるな?



そもそも毒の植物からデンプンだけ取り出して作るという意味で、今回の試作は本家タピオカ(キャッサバ芋)とは同じようなものだと言うことができるはず。

タピオカの原料・生キャッサバイモを毒に恐怖しつつ調理して食べてみた
シログワイをゲットした後、そのままセンタービル地下をふらふらと歩いていると、キャッサバイモを見つけた。 生のキャッサバイモを見かけたのは初めてだ。 キャッサバイモはご存じタピオカの原料で、熱帯を中心に栽培される極めて重要な主食作...

キャッサバとかあれシアン化合物やけんね、リコリンなんて可愛らしいもんですわ。



ヒガンバナは鱗茎(球根)をできるだけたくさん用意します。今回は50個ほど。
漫画では畑の脇みたいなところでとってますが、林縁みたいなところの方が集めやすいと思います。田畑だと植えてることもあるしね。

市販されてるのを買うのもありですが、農薬を使っていないかどうかは確認した方がいいでしょう。


これを、非金属のおろし器でゴリゴリとすりおろし……ません。めんどいからね。

フードプロセッサーでぶぉーんと一息にやってしまいました。


三角コーナーの水切りネットに入れて、口を縛ります。
この時点で既にデンプンが出てきてますね。

ボウルに水を入れ、そのなかで力強く揉みしだきます。

ウォー出る出る。


ある程度デンプンが出たら水を大きな容器に移し、新しい水のなかで揉み出します。


青臭い懸濁液が大量にできました。
この中にデンプン、球根の破片、リコリン(致死量)などが含まれています。
これを放置すること2時間。


デンプンが沈殿しました。

上澄み液(リコリン入りの水と球根破片)を流して捨て、新しい水を注ぎ、


一度ザルで濾してから、また待ちます。

今度は一時間ほど待ち、また水を替えます。

3回目は30分、4回目以降は20分くらいでデンプンが沈殿するので、都度同じ処理を施していきます。
5回目くらいから見た目の変化はなくなっていきます。今回は7回やりました。

このまま干して水分を抜いていくと


綺麗なデンプンが採れました。
ぱっきぱきに乾し上げたら保存できるようになりますが、今回はタピオカを作るのでその必要はなし。
このまま、球体に成型する作業に入っていきます。


タピオカのレシピをしらべると、みんな丁寧に手で粒を丸めていますね。
とりあえず自分もやってみますが……無理やね。
ヒガンバナデンプンは片栗粉と同じ性質をもち、水と混ぜると液体と個体の両方の性質をもつようになります。(ダイラタンシー流体といいます)


小麦粉の様に練って丸めようとしても、手を離すと流体になってしまう。非常に厄介です。

なので、本場のタピオカ作りに倣ってみることにしました。
タピオカのあの粒は、ひとつひとつ丸めていくのではなく、布の袋のなかに素材を入れてぶんぶん振り回し、適度な大きさに丸まったモノをふるって取り集めていく、という方法で作られます。

これをやるには水分含有量がキモで、

手で大きめの塊が作れるくらいの硬さがよいです。
1滴でも多いとダメなので厄介です。少しずつ加えながらやっていきましょう。多すぎたら片栗粉を少量加えるというのもアリ。


これをバラバラに砕き、キッチンペーパーの上に置いて転がしながら丸めていきます。

……あんまり綺麗に丸まらないな。まあいいか。


これを、熱したフライパンで転がしながら煎って、表面を糊化させます。


とりあえず、こんな感じでヒガンバナほぼ100%のタピオカ(的なもの)が完成しました。
ゴンチャ一杯分くらいか……労力のわりにはショボい量ですね。まあ餓えをしのぐくらいにはなるか。


たっぷりのお湯で茹でて


ココナッツミルクティーに入れて混ぜれば……

……色つけてないから見えない。
ストレートティーとファンタパインver.も作ってみました。

できたー(≧ω≦)いただきまーす!


……(`・~・´)
うん、これは、タピオ……わらび餅だ!
予想はしていましたが、ちっちゃいわらび餅ですね。いや、でも多少はムチムチ感もあるな。わらび餅と白玉の間の子ぐらい……いや、1:3に内分する点くらいか……?


味は悪くないです。
少なくとも刺激のある臭いや味は皆無だし、ってかただのデンプンですねこれは。タピオカほどの弾力はないけど、食べごたえ(飲みごたえ)は十二分にあります。
シロップ漬けにして甘味をつけてからドリンクに入れるともっといいかも。

味:★★★☆☆
価格:★★★★☆


食べて丸一日たっても全くトラブルはないので、毒抜きも完璧だったといえるでしょう。水さらしを何回まで減らせるかというチキンレースに挑む諸兄がいたら応援します。おれはやりません。

ヒガンバナデンプン作り、全体的に手間がヤバく、人件費がアホほどかかりますが、素材の入手しやすさはデンプン源としてはなかなかよさげな気がします。
ジャガイモのほうが早い? そりゃー言いっこなしってやつでしょ。

皆さんもぜひやってみてください。あときみふと3巻買って。予約して。ほら今!すぐ!

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植物 毒・食中毒
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野食ハンマープライス

コメント

  1. カワムラ より:

    いつも拝読しております。
    ちょっと気になりましたので…

    ・山梨県で今時分に出蕾していること
    ・写真から自生地が林床にみえること
    ・蕾の色、1花茎の蕾の数
    ・多数が密に叢生していないこと
    上記から写真の植物はヒガンバナではなくキツネノカミソリだと思います。

    同じ属ではありますが別種で、
    ヒガンバナは中国由来の帰化植物、キツネノカミソリは在来種です。

    • wacky より:

      キツネノカミソリでしたか! つぼみの時点ではこれほど似ているのですね……ご指摘ありがとうございます。
      本筋に関係ない部分でもあったので、削除させていただきました。すみません。。

  2. ろん より:

    いつも楽しく拝見しております。

    今回の記事で
    致死量リコリン入り上澄み液を流して捨て…と記載ありましたが、それはそのまま排水口に流していいのかしら?とふと疑問も持ちました。
    ふぐなどは毒有り部位の廃棄も管理されますが、さばいたあとは普通に水で流しますのでそこまで気にしなくていいのかもしれませんが。

    あ、3巻買います。

  3. M下 より:

    コミック待ちしていたのでネタバレして欲しくなかったです

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