コウタケ礼賛(下)

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(「コウタケ礼賛(上)」のつづき)

知らない人には…???な見た目

知らない人には…???な見た目

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コウタケは毒キノコ?

むかしから愛されてきたコウタケだが、同時に「毒キノコ」としても注意されてきた。

ホイル焼きと魔王、というなかなかできない贅沢.でもホイル焼きはあんまり良い食べ方とは言えない

ホイル焼きと魔王、というなかなかできない贅沢.でもホイル焼きはあんまり良い食べ方とは言えない


俗に「アクが強い」と言われるコウタケだが、確かにいわゆる「キノコの毒」とは違って、お腹を壊したり吐き気を催したりすることはない。
しかし、加熱が不十分だったり、生に近い状態でたくさん食べると、以下のような症状を発症する。

・排便時の肛門の痛み
・舌のしびれ
・のどのイガイガ

簡単に言うと、トウガラシを食べすぎたときと同じ状態になるのだ。
他にも口内炎ができたり、唇が荒れたりと「粘膜」に症状があらわれてくるようだ。


これらはむかしから知られていたようで、江戸時代の食べ物の大鑑である「本朝食鑑」では以下のように述べられている。

“陳臓器は、上に毛があり、下に紋のないもの、仰巻き、赤色をしたものは、いずれも有毒であると言っている。この茸は毛があり、赤色であり、有毒とすべきもののようである。ただわが国では、常に食べても、中毒しないし、また病を治するという例もまだ聞かない。しかるに、気味、甘平、無毒というのは、いったい正しいのであろうか、それとも間違いというべきなのであろうか。” 

見た目で判断するのはアレだけど、確かにちょっと毒っぽい風貌

見た目で判断するのはアレだけど、確かにちょっと毒っぽい風貌


また「食療本草」という、同じく江戸時代の食餌療法についての研究書では、

“「革茸は微寒に辛く虫の毒癖(かたまり)あらば深くいむべし」
 「革茸のなまなは諸病の毒なれどほしたるはまた少し用いる」”

という2つの短歌が掲載されている。

いずれにしても、毒キノコでありながらもその魅力が知られているなかで、当時の人々の困惑が見て取れる。


そのほか、かの兼好法師は「徒然草」で以下の迷信に言及した。

“鹿茸を鼻にあててかぐべからず、ちひさき虫ありて鼻より入て、脳をはむといへり。”

香りがいいんだよね…これだけ集めるとホント強烈

香りがいいんだよね…これだけ集めるとホント強烈


(いずれも、国立研究開発法人 森林総合研究所「コウタケの話」のページより引用)


ひるがえって現代。
「フィールドベストガイド 日本の毒キノコ」(長沢栄史監修、学習研究社、2009.9増補改訂)では、多くの食用とされてきたキノコが「毒キノコ」として掲載され、厳しく警鐘を鳴らしているにもかかわらず、コウタケのみは
「十分に干して茹でこぼすなど、毒抜きしてから調理すれば、非常に美味しく、有益なキノコである」
といった旨のことが書いてある。

「毒成分はあるんだけど、美味しいから食べたい」というジレンマは昔も今も同じ。
それだけコウタケに魅せられた人は多いのだろう。

「コウタケ童子」は「いのはなぼうず」?

以前「コウタケラーメン」の記事を書いた時に、「大きなコウタケが採れたら『コウタケ童子の舞』を踊らなくてはならない」といった旨の文を書いたが、実はこれがどのようなものなのかさっぱり分かっていなかった。

コウタケ童子

ニコ同よろしく“踊ってみた”


昔よく見ていた広島県の方のウェブサイトに載っていたのだが、動画はおろか写真すらなく、まったく想像の中の存在だったのだ。


そんななか、先日コウタケの記事をアップした際に、キノコについて特に詳しいわけではない姉から
『いのはなぼうず』のコトでは!?」
というコメントがあった。
いのはなとは「猪の鼻」で、コウタケの数多ある別名の1つである。

昔我が家にあった絵本の中に、その「いのはなぼうず」なるものが登場するものがあり、ご飯の描写が美味しそうだったのでよく覚えていたのだそうだ。

うちにあったということは、福音館書店の「こどものとも」シリーズで間違いないだろう。
僕はどうも当時、物語があまり好きではなかったようで、この「こどものとも」よりも、同じ福音館書店の「かがくのとも」「たくさんのふしぎ」シリーズばかりを読んでいた記憶がある。
キノコ好きにもかかわらず記憶になかったのは、きっとそれが原因だろう。


ということで改めて、「いのはなぼうず」について調べてみた。

「みほといのはなぼうず」(筒井頼子、福音館書店、1988)は、「はじめてのおつかい」などで知られる筒井頼子の作品。
主人公のみほが、おばあちゃんとキノコ狩りに行くなかで、無垢な子どもにしか見ることのできない「いのはなぼうず」と出会い交流するというものだ。

筒井さんの作品は、子どものわくわく感や心細さを美しく描写したものが多い。
筒井頼子作品 -Amazon

みほたちが、いのはなぼうずのおかげで、無事コウタケの大収穫を得て、「こんやはいのはなめしのおおごちそう!」と締めるくだりは多くの読者に印象深く残っているようだ。

いのはなめし!

いのはなめし!




この絵本の原典に「コウタケ童子」のエピソードがあることは間違いないだろう。
しかし、インターネットではどう調べても出てこないので、もやもやが残ったままである。

広島県あたりの伝承のような気がするのですが…どなたか情報をお持ちの方いらっしゃいませんか?
いたらぜひご連絡ください!
気になって「いのはなめし」が3合しか食べられません!

来年も逢えるかな

去年に引き続き、今年もコウタケの乱舞に出会うことができてとても嬉しかった。
8月下旬~9月上旬の長雨には本当に閉口したが、おかげでこのような大量発生が見られたのだろう。
来年以降もぜひお願いしたいところだ。(豪雨はポイーで)

ベランダに干しているコウタケがいよいよパッキパキになってきたので、虫よけとともにジップロックにしまわなくては。
来年までゆっくりじっくり楽しむことにしたい。

「1人で楽しむなんて卑怯だ!」というひとはおすそ分けするんで連絡ください。
日本酒の四合瓶あたりで手を打ちましょう。

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コメント

  1. あね より:

    わーいあね登場した(ΦωΦ)わーい
    正確なこというと本には料理の描写は出てこなくて、いのはなめしのセリフがあるだけなのねーで子どもの私はいのはなめしを勝手に想像してよだれしてただけなのだが実際のビジュアルはなんか思ってたのと違う(σ_σ)黒いな
    うまいのかね

    • wacky より:

      黒いんだよ~w
      どう調理しても基本は黒い。茹でこぼせば多少はマシになるけど、味が薄くなるけんあんま好かんとよ。
      こどもに食べさすときは多少茹でこぼしたほうがいいかもね??

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