オニヤドカリでホントに甘くなるのか実験①水編

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今年の早春、友人のライターHさんとともに湘南某所にヤドカリを採りに行った。

ヤドカリと言っても、磯の潮だまりにいる小指サイズの物ではなく、
オニヤドカリ,カニ網
サザエの殻などに入っているオニヤドカリだ。

その時は大きいのが採れずに終わってしまったが、先日改めて同じポイントに行き、カニ網を下ろしてみると、一網で3個も採ることができた。

横でブッコミ釣りをしていた地元の人曰く、ここの場所はイセエビ漁の漁船が多く留められており、網に掛かってきたオニヤドカリをここで海に捨てるため、港内に大量に生息しているとのこと。

確かにカサゴ釣りなどをしているとよく掛かってくるし、夜に海底を照らすとトコトコと歩いている姿をよく見かける。

今回の“本命”オニヤドカリが手に入ったので、早めに切り上げて帰宅した。
新鮮なうちにやってみたいことがあったからである。

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本当に甘くなるの? オニヤドカリの三浦周辺での呼び名は「アマガニ」。 昔から三浦の漁師の間では「オニヤドカリを食べた後に水を飲むと甘く感じる」ということが知られており、地方名の由来となった。 しかしこれまでHさんを始め数多の知人がそれにトライしてきたが、ハッキリと甘くなった、という実感を得ることができなかったようだ。 自分もこれまで何度か食べているが、甘さを感じることはなかったように記憶している。 そこで今回、新たな食べ方に挑戦してみることにした。 ずばり、刺身である。 ヤドカリって刺身で食べられるの?

ヤドカリの仲間は異尾類と呼ばれ、尾のように見える腹部の筋肉で宿の殻にしっかりと巻き付いている。
オニヤドカリ,殻
オニヤドカリほどのサイズになれば腹部もかなり大きく、この部分を刺身で食べることができるようだ。

オニヤドカリ,刺身,水,甘い

腹部の先端に、殻の中に引っ掛けるための小さな脚のようなものがついている


Hさんによると、刺身で数匹以上食べないと、甘くなる効果を得ることができないのではないか、とのこと。
今回採れたのは3匹、全てを刺身で食べてみることにする。

ヤドカリの刺身を作る

生きているととてもじゃないが殻から引き抜くことはできず、かといって加熱をするわけには行かない(加熱しても腹部が殻に巻き付いたまま固まるので抜けなくなるし)ので、冷凍庫に入れて仮死状態になっていただく。

頃合いを見てゆっくり引き抜くと…
オニヤドカリ,刺身
この通り。

一匹は卵持ちだった。
オニヤドカリ,刺身カニやエビの卵と見た目は一緒だが、腹部への付き方が面白い。
いくつかの固まりに分かれて側面に付着していた。
殻の中にしまったまま、新鮮な海水を当て続けるにはこの保持の仕方が良いのだろう。

腹部を切り離し、ハサミで表面の薄皮に切れ目を入れて引っ張ると、くるりときれいに剥ける。
オニヤドカリ,刺身
腹部先端まで剥いて、ゆっくりと引っ張ると
オニヤドカリ,刺身
背腸がきれいに抜ける。
非常に捌きやすくてありがたい。

刺身の完成。
オニヤドカリ,刺身,水,甘い
ミソらしきものと内子は身からはがしたが、一つだけミソを付けたままにしておいた。

ヤドカリの刺身はどうなのか&水は甘くなったのか

いざ実食。
オニヤドカリ,刺身,水,甘い
(・~・)…

味の薄いアナジャコやな。

以前食べた生のアナジャコ(しゃく味噌)にとても近い香りと味。
でもアナジャコとくらべても、もっと風味が薄い。

Hさんは「アマエビっぽい」と言っていたが、食感は近い。
でも甘味は及ばない。

味:★★☆☆☆
価格:★★☆☆☆

この味だけでお金を取るのは難しそうな感じがする…

ここで水にご登場いただくことに。
オニヤドカリ,刺身,水,甘い

別段甘くはない。

もう一匹食べてみたが…
やはり、甘くはならない。

最後にもう一匹、ミソ付きの物を。
オニヤドカリ,刺身,水,甘い
生のミソは独特で、好き嫌いが分かれそうだ。
焼酎のアテにはいいか…

と思うまもなく、舌の上が何かで薄くコーティングされたような感覚にとらわれた。
これはっ!と思いすぐに水を口に含むと

…(゜~゜)あぁ、これかぁ…
舌がマヒして味がぼんやりして、普通の水がまったりと絡みつくカンジ。
砂糖水を口に含んで飲み込んだ後の舌に残る感覚にそっくりだ。
味覚をだますというより、甘いものを食べた「記憶」を呼び起こすような不思議な体験である。

ミラクルフルーツのような明らかに甘くなる感じではないけど、ヤドカリの量が揃えば十分に楽しめると思う。

残りの頭部、胸部、ミソ、卵は味噌汁にした。
オニヤドカリ,味噌汁
出汁があまり出ないのは腹部がないからだろうか?
内子もまずくはないが平凡。(←ぼうずコンニャクリスペクト)
アナジャコと比べてもやっぱりものたりない。

ヤドカリはこの不思議な甘みを楽しむもの、そうでなければイシダイに化けてもらいましょう

ということで、食材としての味は平凡としか言いようがなかった。
大量にとっても商品化されてこなかった理由もわかる。
今のところ、三浦の一部で特産化の動きはあるが、それ以外はおもにイシダイ釣りの餌としての需要だ。

しかし、この味覚をおかしくする力はかなりの可能性を秘めている気がする。
調べてみると、この“甘味成分”は分離され特許まで申請されているとのこと。
漁師内での都市伝説のようなものかと思ったが、違ったようだ。

また以前「探偵ナイトスクープ」で行われた試食によると、水のほかレモンや酢までも甘く感じるという「ミラクリン」ばりの効果も得られたとのこと。
ということで次回はそれも実験してみます。新しいヤドカリが採れたらだけど…

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コメント

  1. rennzann77 より:

    次は平安時代に朝廷へ献上されていたというホンヤドカリの塩辛「ゴウナ漬」にチャレンジするんですね。わかります。

    • wacky より:

      面白そうなネタキター(゜∀゜)

      調べたら「海の味」という八坂書房の本に詳細が書いてあるようなので早速購入しました。
      多分「しゃく味噌」とか「がん漬け」とかと同じ系統の味だと思うんですけど、試してみたいと思います。

  2. rennzann77 より:

    あ、その本です。
    学部の図書館で読みふけってました。個人で持つにはオススメですよ。

  3. るりんこ より:

    アメフラシの記事からここに来ました。
    いつも更新を楽しみに読んでおります。

    ホヤも、刺身を食べるとそのあと口が甘くなりますが
    (↑今日の晩酌で感じました)
    もしかしたら、似たような感じなのかなー、と思い。
    いつかオニヤドカリも試してみたいです(^^)

    • wacky より:

      ありがとうございます!

      確かに、ホヤも食べた後口の中がちょっとヘンな感じになりますね。。もしかすると近い成分が含まれているのかもしれません。
      日本酒なんかも甘くなれば面白いんですけどね(笑)

  4. 通りすがりのか…名無し より:

    探偵ナイトスクープでもやっていた通りミソが重要みたいですね
    ミソが肝なんだとか
    ミソなのに肝とはコレ如何に

    • wacky より:

      マア実際はミソでもキモでもなく中腸腺ですからね、とんちが効くようで効かない奴らということでここはひとつ矛をお納めいただいて。。

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