「浜の金茸」シモコシの『しおから』

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11月後半ともなると、地表温度が下がり、キノコはあまり採れなくなってしまう。

ただそんな中でも、冬の寒さに負けないように顔を出す頼もしいキノコがいて、そして彼らの多くは美味しい。
そういった冬キノコを知っていて、そしてそのためだけに野山に行けるひとだけがその美味にありつくことができる。

美味しいキノコの金と銀

さて、かつてきんさんぎんさんという百歳の双子がいらっしゃったが、冬キノコにも金銀のペアがいるのをご存じだろうか。

銀は銀茸、正式和名はシモフリシメジといい、霜が降りる頃、広葉樹林の林床にぽこぽこと生える。
やや黒くかすれた渋みのあるグレーは、まさに慈照寺銀閣のようだ。

そして金が今回の主役、金茸ことシモコシである。

シモコシ

ミズゴケに埋もれるようにぽこぽこと出ていた

こちらは晩秋から初冬にかけて、松林の柔らかく積もった林床にぽこぽこと顔を出す。
ずんぐりとした頭は黒くかすれた黄色だが、

シモコシ

綺麗でしょ?

裏側のひだははっとするような眩いレモンイエローで、鹿苑寺金閣のような華やかなキノコだ。

シモコシのおもしろいところは、その柄がとても長く、マツタケのように地中に伸びているところで、傘のしたの部分をつかんで引き抜くと、ずぼっと心地よく抜けてくれる。
この性質のためか、踏み固められた松林には出てこないようで、ひとが林に入れば入るほど発生量が減ってしまうのだ。
他人にシロ(発生地)を教えたくないキノコの一つなのである。

 

シモコシの風味を最も活かした料理「しおから」

さてこのシモコシ、あらゆる料理で美味しく食べることができる。(※1)
キノコらしい形と濃厚なうまみ、癖のなさが魅力でどんな調理法にもよくあう。
味の面ではマツタケより遥かに上、個人的にはハタケシメジよりよいと思う。
ホンシメジ、シャカシメジには少し負けるかな…

ただこの素直な風味を活かすのには、やはり和風料理がいちばんしっくりくる。

その中でも最近出会った「しおから」は、まさにシモコシのために存在しているような料理だ。

材料はシモコシ、
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黄色い食用菊
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スルメ
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昆布と酒、醤油のみ。

●シモコシは最低限の酒で酒蒸しにし、出た汁も取っておく。
細かく裂くか刻んで小さめにしておく。

●酢を少量入れた湯で菊を茹で、冷水にさらし水気を切る。

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●スルメ、昆布は細切りにする。(松前漬け用のものがあればそれがいい)

●ボウルに全てを入れてよく和え、酒と醤油で味を調える。

一晩おいて、スルメと昆布がよく戻ったら

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彩りよく仕上げませう

完成!
簡単なうえ、良い出汁のでる素材ばかりなので濃厚な旨味が味わえる。
醤油はできるだけ少な目にするのがポイント。

シモコシは加熱すると色がやや褪せてしまうが、菊の黄色がそれを補って「キンタケのしおから」ということを主張してくれる。
紫の菊と比べやや苦味があるように思うが、僕は色味を大事にしたい。

濃厚なうまみとほろ苦みが純米酒によく合う。山廃の原酒があれば尚よし!

競争の激しさ、遅い季節に出ることなどもあり、なかなか採取の難しいキノコだが、もし手に入ったら是非試してみてほしい。

※1
最近、ヨーロッパでシモコシに近縁の種(同一種という説もある)による中毒事故が発生しており、ヤマケイ「日本のきのこ」ではシモコシは有毒種として記載されている。

あくまで僕の意見だが、キノコは同一種内でも地域変異が大きく、毒性の有無・強弱は土地によって変わるものだと考えている。
シモコシはこれまで全国各地で永らく親しまれてきたキノコであるため、今後国内での重篤な中毒が発生しない限りは、これまで同様に食用とするつもりである。

と言うわけで、シモコシの食用は、あくまで自己責任にてお願いしたい。
まあ、このブログのネタはほとんどそうなんだけど…

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