神奈川県下有数の漁師町である小田原には「魚國」さんという素敵な魚屋さんがあるのですが、他にも良いところがあると聞いて先日伺ってみました。
それがこちら
小田原周辺に展開しているスーパーマーケット・ヤオマサさんです。
こちらはパッと見ふつうのCGCスーパーなのですが、こと鮮魚コーナーとなると超A級のマニアックさを見せつけてきます。
まず伺ったのが、支店のなかでも「珍魚と出会える可能性が高い」と聞いていた中町店さん。
深海魚をはじめ、よそではまず見かけることのない変な魚があると聞いて伺いましたが……
なるほど、お店の規模のわりに魚売り場が広く、鮮魚コーナーも通路の真ん中に広く特設されていて充実さを感じますね。なにがあるかなー
……!?
ネズミギスがあった
ネズミギスって正式和名のネズミギス? それともなんかの魚の地方名とか?
いや、これは正真正銘のネズミギスみたいですね……
細長い体、黒い刺し色が入った鰭、これは間違いなくネズミギス。といっても自分も図鑑でしか見たことがない魚で、実物は初めてです。
誰も知らないマイナー魚を正式和名で販売するって胆力すごいな! 「ヘンな魚を特段説明もなく売るけど、ヘンな魚好きは買うよな?」みたいな店側からの信頼を勝手に感じます。ありがたみの極み。
ネズミギスは水深100mより深いところに多い深海魚で、深海底引き網で混獲されます。
こういう深海魚は大体何でも「すり身用加工魚」として活用する練り物の街小田原ですが、ネズミギスはどうなのかな。ぼうずコンニャクさんによると「日本各地で揚がるがまとまらないので食用と認識されていない」ということなので、流通に乗ることはほとんどないんだろうと思います。
底引きで揚がった魚は「強制野締め(漁の最中に死んでしまう)」になってしまうので鮮度に不安があることが多いですが、このネズミギスは後半身に噛みつかれたような傷跡があるだけで後は状態も非常に良さそう。
知らない小魚に300円出す人は普通の主婦にはあんまりいないと思いますが、われわれ珍魚党にはこんなのただも同然です。即購入!
ネズミギス、いろんな魚の味がする
購入したネズミギスを観察します。
なるほど、鱗が細かくて皮と一体化しており、はがすのは難しそうです。皮は厚みがあり、はがすのは容易そう。
何かしゃべりたげな口元ですね。
ネズミギス目は分類学的にはかなり古くからある種で、コイ目やナマズ目など淡水魚の多くが含まれる「骨鰾上目」に含まれ、中でも一番原始的なものだと考えられています。サケ目やニシン目と共通の形態的特徴を持ち、これらのグループの中間に位置する存在だそう。いろんな魚と近からずとも遠からず、どれっぽいともいえるしどれっぽくないともいえる。人間に例えると「どの出版社の飲み会にも『関係者』枠で顔を出す漫画原作者」みたいな存在ですね。
三枚におろし、皮を引いてみました。
透き通った半透明の身は、深海魚にありがちな水っぽく柔らかいものではなく、しっかりと弾力があります。小骨がちょっと多そうですね。
それから特筆すべきは皮下脂肪の量。身の淡白そうな見た目からは想像できない濃厚な白い脂が層になっています。これは期待できるのでは……
刺身にしてみましょう。
……(`・〰・´)へぇーこれはなかなか……
食感は新鮮なイシモチやイサキに似ています。水分が多くもっちりとしていますね。
小骨が多いと聞いていましたが確かに数は多いです。しかしイワシやアナゴのように1本1本が細く、薄めの平造りにしたらほぼ気になりません。
そして何より皮下脂肪がめちゃくちゃコクがあってうまい! 全体として近いのはアナゴの刺身ですかね。
塩焼きもやってみました。
皮が皮下脂肪の力でパリッと仕上がるのが最高ですね。身は加熱すると締まり、ぷりぷり感が出ます。
食感はアナゴの白焼きに近いですが、味はなぜかシシャモっぽさがあります。アユみたいな香りもあるなぁ。皮はサケっぽさもあるね。そして卵はギスみたいですね。
いろんな魚に近いのは分類上だけでなく、味の上からもそうなんですね。ネズミギスなんて名前じゃなくて「百味魚」みたいな名前にしたらよかったのに。買い手がいっぱい出ますよ。
味:★★★★☆
価格:★★☆☆☆
コメント
やはりこちらのお店でしたか。
いつもお世話になっています。
この形状はくぎ煮を想像してしまいます。