芥川龍之介の小説に「芋粥」ってあるじゃないですか。
「一生で一度でいいから芋粥を腹いっぱい食べたいと言っていた平安時代の小役人が、いざ大量の芋粥を目の前にすると食欲なくしちゃいましたーめでたしめでたし」っていう、読後モヤモヤしがちな芥川小説の中でも屈指のモヤモヤを誇るあれ(←国文科出身者とは思えない雑な説明)
あの芋粥、「芋の入った粥」だと思ってる人多いんじゃないでしょうか? さいころカットのサツマイモが入ったお粥的なね。
じつはね、違うんですよ。芋は芋でもヤマノイモ(自然薯)を、コメは使わずに「甘葛(あまずら)」という平安時代のシロップ(厳密にいうとその原料となる「みせん」という液)で煮る、という純粋なデザートです。
知らなかったでしょ? ぼくも先週まで知らなかったんですよ(ドヤァ)
なんで唐突に芋粥の話をしたのかというと、先日ぼくのところに自然薯が届いたからです。
送ってくださったのはFacebookでフォローしてくださっているOさん。こんなに山ほど、ありがとうございます!
自然薯ということでとろろ芋にでもして精力つけまくったろかと思ったのですが、美味しいけれどそれじゃブログのネタにはなりません。
なので何か変わったレシピはないの……と探していて「芋粥」を発見した、といった顛末です。
さてこの芋粥、自作するにあたり、材料は上記の通りとてもシンプルなのですが、一つだけ手に入れるのが難しいものが。
それはずばり「甘葛」です。
これはツタの樹液を絞り出し、煮詰めて作る平安時代唯一の人工甘味調味料で、現在では販売はおろか生産しているところもありません。
となると自作するしかないのですが、木のように太くなったツタの蔓を切り出し、全力で息を吹き込んで絞り出すという超の付く重労働でおいそれとはできません。
そもそも甘い樹液が取れるのは真冬の間だけですしね。。
文学メシ再現系のサイトで芋粥を作っているところはいくつかありますが、いずれもこの甘葛の再現までは至らず、砂糖水を用いたり、あるいは甘葛と同じ「樹液を煮詰めたもの」としてメープルシロップを使ったりしています。
これは一見悪くないようですが、しかし残念ながら味は結構違ってしまいます。
なぜわかるか? 以前、自作したことがあるからです。
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まあほとんどの工程は担当編集の平林さんがやってくれたんですけど、それはそれとして本物を味わったものとして、身近なもので再現する方法を見つけ出すのは義務でしょう。
やっていくしかないですよね?
芋粥をできるだけリアルっぽい味に再現してみた
まずは自然薯をきれいに洗って皮をむき、薄くスライスして水にさらしておきます。
鍋に水を入れて、10%程度の砂糖と
ブドウをスライスしたものを投入します。
じつはツタはブドウ科の植物で、甘葛もわずかにブドウ様の香りと味を持っています。下手にメープルシロップを使って焦げた風味をつけてしまうよりは、ナチュラルなブドウの果糖を添加するほうがはるかに本物に近づきます。
大事なことはブドウは皮ごと入れること、そして煮過ぎないこと。皮ごと入れてブドウの風味をつけつつ、皮に多く含まれる有機酸を液中に浸出させすぎないようにします。赤ブドウのほうが風味は出るけど、白ブドウのほうが甘味の質は本物に近いです。適度にブレンドしてください。
2分ほど煮たらブドウを取り出し、そのまま煮詰めていきます。みせんの糖度は大体17度程度と言われるので、めっちゃ甘い柿くらいのイメージでいいと思います。
できた液体で、あく抜きをした自然薯を煮ていきます。シャリシャリした食感が好きな人は1分程度、ホクホクが好きな人は3分ほどしっかりと火を通しましょう。
五位の気分を味わいたければ鍋いっぱいに作るのもイイネ!
できた(≧ω≦)
いただきまーす
…(`・~・´)ナルホドネー
これはね、いいですね。温かくてもすごくこう、なぞの清涼感がある。
甘葛(もどき)の甘味のさわやかさが、自然薯の食感と非常によくマッチしています。こりゃあ昔は大ご馳走だったでしょうなぁ。
連れにも食べさせてみましたが……
朝方、連れが「芋粥があるよ」と言ったような気がしたんだけど、なんだいこれは。 pic.twitter.com/PkRT0BXsE0
— かざゆめ (@kazayumekinoko) October 26, 2019
まあ、そうだよね。。とくに冷めたら非常に物足りないというか、うす甘い汁に漬かった謎のでんぷん質って感じで美味しくないです。寒い冬、風通しがよく寒い寝殿造りの部屋で食べる温かい芋粥は、きっと清少納言や紫式部の心をほっくりとさせたでしょうね。
味:★★★☆☆
価格:★★★★☆ 自然薯たけーからね…
ところで芥川のおじさんはこれ、実際に食べたんかな?
コメント
あまづらが白ぶどう風味なら、エルダーフラワーのシロップで代用できるのかなと思いました。