“小便魚”アイゴの内臓「ぜんまい」を食べてみた!

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全国的にアイゴ(バリ)が増えて困っているそうだ。
アイゴ Google画像検索結果

アイゴ,毒鰭,処理

鰭を切った後

もちろん関東も例外ではなく、特に三浦半島では年中釣れるようになり、巣と化した城ヶ島は「バリ島」とすら呼ばれているらしい。

困っている、というのはこの魚が浅い磯に生息し、海藻を主食にしているため、増えすぎると磯を丸裸にしてしまう「磯焼け」を引き起こすとされているからだ。
もちろんそれはトリガーのひとつでしかなく、もっと根本的な原因があるのは間違いないのでアイゴだけに責任を押し付けるべきではないと思うが。

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アイゴは美味しい魚ですよ

さて、増えて困っているなら食べて減らせば良い、と言うのはこのサイトの常套句であるが、難しいことにアイゴはたいへん好みの別れる魚である。

四国南部や紀伊半島辺りではもろ手を挙げて大歓迎されると聞いたことがある。
沖縄では稚魚が「スクガラス」という塩漬けにされるほか、成魚も流通しているという。
瀬戸内でも最近増えている20㎝位の若魚は人気があるそうだ。
九州でも釣れると持ち帰る人が多いように思う。

僕も個人的には好きで、締まった身質や上品な脂の乗りはなかなかのものだと思っている。

身質はたいへん良い

身質はたいへん良い

福岡に居た頃はよく釣って持ち帰っていたし、朝市で購入したこともある(やっすいんだコレが)。

しかしそれ以外の地域では、基本的には食べない魚だ。
とくに異常増殖のフロンティア・三浦ではまず持ち帰られることはない。
網にも大量に入るというが、流通に乗ることはほぼ無い。

その理由としてはまず、毒鰭がキケンなこと。
表面がぬるっとしており、かつ上にも下にもギンギラギンに毒鰭を備えているので、慣れた釣り人でも油断するとやられる。
むかし玄海島@福岡で釣りをしていた時に見かけた光景なのだが、アイゴを釣って下処理をしていたオジサンが鰭を手に刺してしまい、大粒の涙をぽろぽろとこぼしていたのは衝撃的だった。(それでもしっかり下処理をして持ち帰っていたのだが)

そして二つ目の理由は、磯臭さがスゴイこと。
「バリ」というのは小便のことなのだが、確かに磯臭さが極まってアンモニア臭に近いものを感じることがある。
ネションベンなんてストレートすぎる地方名も存在するほど。

表皮もなかなか臭うが、何よりも内臓が臭い
上記の通り海藻を食べる魚なので、腸が長く大きく、臭いのもととなっているのだ。


これらの理由で嫌われるアイゴだが、毒はともかくとして臭いについては釣り場での適切な処理でクリアすることが可能だ。
釣ってすぐに頭の後ろを切り落とし、頭を引っ張ると内臓ごと抜けるのでその場で処分すると、身に臭いが移るのを防ぐことができ、持ち帰った後の処理が楽になり生ゴミも減る。

ずるっと引っ張り出すとこうなる

ずるっと引っ張り出すとこうなる

適切な処理を施して持ち帰った身は、刺身でも、焼いたり煮たりしてもとても美味しく食べられる。

アイゴ,刺身

刺身を造るときはサクにペーパータオルを巻いてから冷蔵庫で15分ほど寝かせると臭みが取れるよ

とくに味噌との相性が良いので、味噌焼きなどもオススメ。
釣れ過ぎたら干物も美味いよ!

アイゴの「ぜんまい」を食べる…?

さて、今しがた「釣り場で捨てろ」と書いたばかりの内臓(腸)だが、実はこれこそが宝!と珍重する地方があるというのだ。
KIMG0527
ざっと検索するだけでも、四国東部、香川と徳島では食べるという記述が見受けられる。
長い腸は大きな腹腔に渦巻き状になって収まっているので「ぜんまい」と呼ばれており、これを焼いたり煮たりして食べると何とも乙なのだという。

しかし、どれだけ鮮度が良くてもアイゴの内臓はものすごく強烈に臭う。
まったく語弊を恐れずに言えば吐き気すら感じる臭いである。
純粋なアンモニアに近いホンオや、肥溜めの匂いに近いくさやとはまた違ったベクトルでキツイ。
生ゴミに尿をかけて半日熟成させたような…

しかし、それでも喜んで食べる人がいるのだから「ゲテモノ」ではないはずだ。
もしかすると火を通すことで何か変わるのかもしれない。

ちょうど昨日、いつものポイントでカワハギの外道にアイゴが釣れてきたので、試してみることにした。

アイゴの「ぜんまい」を食べてみた

持ち帰るにあたり、正直、釣り場ではかなり躊躇した。

アイゴ,ぜんまい,内臓,料理

これ持ち帰るのか…

釣れたものをすぐに締めて内臓を取りだしたのに、既に上記のような匂いがするのだ。

いつもなら必要以上に触るのすらイヤで、流れるような作業で海中に投棄していたのだが、心を決めてビニールに入れて口を固く結び、クーラーに水氷を作ってそこに入れ、キンキンにして持ち帰ってきた。

この時期のアイゴだと、腸そのものは黒いのだが、そこに真っ白な内臓脂肪が帯状につくのではっきりとした渦巻き状に見える。
アイゴ,内臓,ぜんまい,塩焼き
まるで網脂に包まれたひき肉だんごのようだ。
夏の盛りだとここまで脂肪がついていないのでゼンマイ感は低い。
匂いは強烈だが、見た目的にはそこまで悪くないかもしれない。

いろいろ調べてみたのだが、下処理の方法はおろか、どうやって食べるのかについても「焼く」「煮る」といった程度の記述しか見つからずさっぱり参考にならない。
端の方を少ししごいて内容物だけでも出そうとしたのだが、渦巻き状の腸の内容物を押し出すのは不可能に等しく、また外側に大腸が、内側に小腸があるようで太さも均一でない。

サンマの内臓は内容物ごと食べられているのだ。
アイゴもきっとそうに違いない。
そう信じ、そのまま焼いてみることにした。

加熱すると臭いがとてつもないことになるんではないかと危惧していたが、意外とそうでもないようだ。
アイゴ,内臓,ぜんまい,塩焼き
内臓脂肪が溶けだし、じゅうじゅうと香ばしい匂いを発する。
牛のホルモンを焼いているようで、なかなか悪くない。

途中塩コショウをしながら、内部までしっかりと火が通るように十分に加熱した。

本体もソテーしてみた

本体もソテーしてみた

完成!

臭いはやはりあるが、香ばしさと半々くらいだろうか。
さっそく食べてみよう…

…(・~・;;)
これは…!

まず、外側の大腸にあたる部分は強烈に苦く、また内容物のせいか腐敗臭が強くて食べられなかった。
しかし1周くるりと外して、小腸にあたる部分を食べてみると…
アイゴ,内臓,ぜんまい,塩焼き
いややっぱり臭いわw臭いんだけど脂が甘くてまったりと濃厚で、ほろ苦味もあって、焼きサンマのワタの野趣を100倍にしたような強烈な感じで、悪くない…!!
これは…焼酎だな。黒霧島でいいや、ロックで、ダブルでお願いします。

ただ食べ進めると突然苦くなるところや、未消化の海藻がクシャクシャして厳しいところもあったのでなかなか難しい。
やはり内容物は処理してから食べたいなぁ…伸ばして扱き出せばいいのかな?誰か教えてください。

味:★★★☆☆
価格:★★☆☆☆

アイゴそのものが万人受けしない魚であるが、「ぜんまい」は万人受けどころか100に1人くらいの確率でしかヒットしなさそうだ。
しかしその1人にとってスマッシュヒットになるかもしれないというイメージを感じた。

もっと季節が進んで水温が下がれば、より食べやすくなって美味しいかもしれない。
また食べられる部位とそうでないものがはっきりすればより食材として魅力的になるだろう。

次回手に入ったら、まっすぐにのばして後3分の1は切り取ったうえで、念入りに内容物を扱き出して(あるいは切開して出して)から煮付けにしてみようかな。
これは結構イケる気がしますよ。

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コメント

  1. さかどくん より:

    こんばんは(^^)
    アイゴ(バリコ)は丸干しか食べたことないなぁ。
    クセが強かったですね。

    もうすぐカニだ~。(^o^)/

    • wacky より:

      干物もけっこうクセはありますね!でもくさやが大丈夫ならぜんぜん気にならないレベルだとは思いますけども。。

      去年はなんだかんだであまりカニを食べられなかったんで、今年はたくさん食べたいです!

  2. rennzann77 より:

    臭い魚は旨い!
    ゴンズイ、クロアナゴ、コイフナetc

    • wacky より:

      クロアナゴはわかるけど、後のは臭いかなぁ…?もちろん多摩川産とかはノーサンキューですけどw

  3. さかどくん より:

    おはようございます(^o^)
    そうそう。川魚などを泥を吐かせるとかいって生簀に置いてますね。
    磯魚を生簀で活かせると磯臭さはどうなるのかなぁ。
    脂は落ちるでしょうが、とんでもなく美味くなる魚がいたりして(^^)

    • wacky より:

      たとえばメジナはオキアミ食の傾向が強くなって食べやすくなったと言ったりするじゃないですか。
      なんで生簀の中でオキアミペレットなど食べさせたりして蓄養すれば、食べやすくて臭みも少ないものになったりしませんかね…

  4. こてつ より:

    始めまして
    兵庫県の漁協に在籍している者ですが、昔からオヤジにアイゴは内蔵を喰うもんや と教わりました。
    臭いの元は、鮮度落ちによる、皮からと内蔵の腐敗が原因だと思うので、イケスで活け越ししてエサを消化しきった魚が一番ですが、なかなか手にはいりません。
    腸内の掃除と内蔵末端の胆嚢の排除をしてでも、食べる価値があると思います。

    いつも変わった魚が獲れると参考にさせていただいてます。
    これからもよろしくお願いします!

    • wacky より:

      コメントありがとうございます!
      また、いつもお読みいただいてありがとうございます!

      兵庫でも内臓を食べるんですか。。岡山でももしや…?
      でも「内臓を喰うもん」とはまた驚きですね。生け簀で糞を出し切れば、美味しくなるんでしょうか。ぜひ一度、そちらの方にお伺いして食べてみたいですね。

      次回手に入ったら、内容物をきれいにしてちょっと濃いめの味付けで食べてみたいと思います。

      あっ、ヘンな魚の買い手がつかなかったらどうぞご連絡くださいませ!(笑)

  5. 名無しの船長さん より:

    アイゴは季節によって食生活が変化する魚で夏場は肉食に寄り、冬場はほぼ完全な草食になります(グレと同じですね)

    そして草食の冬、海苔やワカメなど海藻に満たされ脂ののったゼンマイを似たり焼いたりして瀬戸内海の漁師などが珍味として好むと思われます。

    おそらく内容物も込みで食べるので冬によく食べるのだと思います。おそらく中型くらいが1番よい。

    某魚図鑑の藤原氏は、明石漁協から送られた冬の海藻の詰まったゼンマイをアワビの肝のようで、魚類中屈指の味わいとおっしゃっています

    • wacky より:

      アワビの肝というのは実にいいたとえだと思いました。
      ただ、やはり相模湾産のはしんどいです。ぼうずコンニャクさんも此方のアイゴの内臓はお食べにならないのではないかと。

  6. ゴッツ より:

    相模湾で今日30cmくらいのを釣りました。
    最初は気にならなかったのですが、車の中で若干匂うな、と思いはじめ、関連するものすべてがその臭いに汚染されていることに気づきはじめます。タモ、釣り具等々、触れたものすべてがその臭いです。指も。次第に気持ち悪くなってきました。刺身にしたましたがあの何とも言えない臭いがちょっとしただけでオエッとなって申し訳ないのですが廃棄しました。トラウマ(心的外傷)で他の魚まで食べづらくなってしまうありさまです。コノシロ太郞も臭いと有名ですが酢絞めで何とか食べられました。若干トラウマ(心的外傷)になりましたが。今回のアイゴはギブアップです。不可です。食べられません。相模湾ではリリースしましょう。背中の針は試しに指が触れただけでヒリヒリします。毒針、悪臭、不可です。

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