一定期間強制的に下戸にされるキノコ「ホテイシメジ」を食べて、ついでに飲酒してみた

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皆さまは「断酒剤」というものをご存じでしょうか。
おもにアルコール依存症の治療に使われるもので、これを服用後に飲酒をすると「悪酔い」状態になるために酒を飲む気がなくなる、というものです。
体内に入ったアルコールはまず肝臓で代謝されて「アセトアルデヒド」という物質になり、それが「アルデヒド分解酵素」によって無毒な物質に分解されるのですが、断酒剤はこのアルデヒド分解酵素の働きを止めてしまうのです。アセドアルデヒドは体にとって有害で、顔面紅潮や吐き気、頭痛等のいわゆる「二日酔い」の原因になるため、いわばこの断酒剤は「強制二日酔い発生剤」ということになるわけです。

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野生の断酒剤「ホテイシメジ」

で、この断酒剤とほぼ同じ効能を持つキノコが自然界にはいくつか存在します。そのもっとも有名なもののひとつがホテイシメジ

カラマツ林に生え、ときに菌輪を描いて大量発生するこのキノコは、古くから食用とされてきた一方で「ヨイツブレ」という地方名も持っており「酒と合わせてはいけないキノコ」として著名であったものと思われます。
(E)-8-オキソ-9-オクタデセン酸等の共益エノン、ジエノン類を含有し、これがアセトアルデヒドの分解を阻害するため、酒とともに摂取すると悪酔い状態になるわけです。

このキノコ、「味自体はよいため下戸の人は美味しく食べられる」という話は以前より耳にしていたのですが、かつて酒販業界で働いていたぼくはとてもそれを食べるような機会がなく、見つけてもスルーする癖がついてしまっていました。
しかし酒屋の丁稚も今は昔、現在は「野食ハンター」として人のよう食わんものを口にするのが仕事の身です。こんなある意味「安全」な食材を食べずして平然としているわけにはまいりません。
というわけででやっていくことにしました。

ホテイシメジを食べてみた

ホテイシメジは初秋から盛秋にかけ、カラマツ林に発生します。見に行ってみると

ビンゴ! やたらめったら生えていますね。菌輪というか大行列。

盃のような形をしていて、ひだと柄の間に明瞭な境目がある(色が違う)のですぐにそれとわかります。

状態の良いものをいくつか採取しました。

持ち帰り、グリルで網焼きにします。

……縮んだなー。。キノコはどれも加熱すると縮むものですが、ホテイシメジは水分が多く縮小率が高いようです。
オーソドックスに醤油をかけていただいてみましょう。いただきまーす

……!
えっなにこれ、旨いじゃん!! 
まずね、キノコ自体にさわやかで甘い香りがあります。例えるなら新鮮なエノキタケのような。
そして味が濃厚で旨味が強い! シイタケにも引けを取らないし、なんならカラマツ林の主役であるハナイグチよりも美味いかもわかりません。
キノコが小型なので食べ応えは薄いですが、かさ・柄ともにシャキシャキした歯切れの良さがあります。


この網焼きは……酒と合うはず……

ということでやっていってみます。今回はあくまで「アルデヒド分解酵素を阻害する」力を確認するため、酒自体は純粋なアルコールに近い蒸留酒を飲んでみることにしました。
本当はウォッカとかがいいけどヒヨったwホントは赤霧島とか茜霧島が良かったけどまあ黒霧も好きだからいいや。


ホテイシメジの網焼きに芋焼酎……佳いねえ実に酔い善い。ホテイシメジの甘い香りが芋焼酎の香りと合いますね。水割りが良いと思います。

悪酔いしてみた

さて、どう出るワイの肝臓。
食後30分から1時間すると効果が表れるということで、ちびちびやりながら発現を待ちます。

……

……あ、顔が火照ってきた。自分はそこそこ酒には強いほうで、どんなに飲んでも顔色に出ることはありません(飲み過ぎて青白くなることはあるけど)。なのでこれは明らかにホテイシメジによる影響でしょう。

まだ一口しか飲んでないのに、さすがはてきめんですね。このまま飲み続けて行けば、頭痛とか頻脈とかが出てくるはず……


そして1時間後。
……あれ? 何も起こらない??
ワンカップの半分(100㏄)ほど飲みましたが、別段変化はありません。黒霧島のアルコール度は20%なので20gは摂取しているはずなのですが……


念のためここで一旦実験はやめて、翌朝またアルコールを摂取してみましたが、やはり顔がちょっとホカホカする以外は何の変化もありませんでした。拍子抜け……


調べてみると、ホテイシメジの中には、見た目はそっくりだけど悪酔いを引き起こさない「ホテイダマシ」と呼ばれるタイプのものが存在するらしいです。こちらは全体的に色が淡く、柄が細いものが多いと言いますが、今回ぼくが食べたものは「ホテイシメジ」と「ホテイダマシ」の中間的なもののように思えます。典型的なホテイシメジタイプもいくつかありました。

考察としては
●すべてホテイダマシタイプだった
●摂取量が少なかった
●飲酒量が少なかった
などが考えられます。まったく効果が出なかったわけではないので、たぶんこれらの複合要因でしょう。人体実験したいわけじゃないので何度も試すつもりはないですが、より典型的な「ホテイシメジ」タイプがたくさん採れたら試してみるのもやぶさかではありません。


ただね、今回一番大事なのは

「ウワサ通り、ホテイシメジはめちゃウマだった」

ということですよ。これは採る価値ある。
図鑑によると、ホテイシメジによるアルデヒド分解酵素阻害効果は1週間ほど続くことがあるそうで、定期的に飲酒する人や突発的に飲酒機会が発生する人はこのキノコを食べるのはなかなか難しいと思いますが、そうでない人はコレ、おススメです。

味:★★★★☆
価格:★★☆☆☆

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キノコ
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野食ハンマープライス

コメント

  1. へほへも より:

    実は単純に美味しいから酒が進みすぎて二日酔いする人が多かったってだけなオチかも知れませんね

  2. ぼんすけ より:

    子供の頃父親がホテイシメジもらってきてとってもおいしいキノコ鍋を食べたことがあります。翌日父と母はやられてましたね。

    • 茸本 朗 より:

      分かってて食べたのでなければ、一種のテロですよね……(;´Д`)

      • ぼんすけ より:

        わかってなかったです。体おかしい→毒キノコか?→同じもの食べた子供は大丈夫→図鑑で調べる→ワオ!だったので

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