500回目の記念にアミガサタケを使って「ヨーロッパでも自作できる醤油」を作ってみた

「野食のススメ」第10回の記事が公開されました!(2017.4.1)
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おととい、ちょっと昔の記事を確認しようと思って一番最初の記事に立ち戻ってみたら、あと2記事で500個目だということに気づいた。
というわけで、今日のこの記事がちょうど500個目の公開記事となる。

最初の記事からちょうど5年がたち、ここまで記事を積み重ねてこられたことにちょっとした感慨を覚えざるを得ない。
(そのうち450記事はここ2年で書いたものですが)


で、最初の記事なんだったっけと思って確認してみると、案の定アミガサタケについて書いてるんですねぇ……

春はモリーユ ようようデカくなりゆく 銀杏の足元あかりて 黒みおびたるキノコの太く高く伸びたる(即興)

今年同じ場所で採れたトガリアミガサタケ

マーシーのシロで見つけたチャアミガサタケ


進歩があるんだか無いんだか、いまもやっぱり僕の手元には先週末採ってきたアミガサタケがあるので、500回の記念にこれでちょっと面白いことやってみようと考えた。
※以下、写真が大変多くなっております。読み込みが遅くなることをご容赦ください。

 

アミガサタケで「欧風醤油」を作ろう

以前テレビで、和食料理人の村田吉弘氏が「ヨーロッパで手に入る食材だけで醤油を作る」様子が放映されていた。
氏はミシュランで三つ星を獲得した和食料亭「菊乃井」の主人であると同時に、和食を世界に広めるということに本気で取り組む研究者でもある。
「和食を広めるためには『和風だし』『醤油』『味噌』が現地で調達できないといけない」という考え方に基づき、これら「和食の要素」をいかにして再現するか、科学的にアプローチされている。


ご存じのとおり和食の食材には往々にして「コウジカビ」が使われているが、一部の国の保健機関はこういった食材について「カビ毒性があるかもしれない」「安全性が証明できない」などとバカをおヌカしになっており、輸入が禁止されていることが少なくない。
たとえばEU諸国では鰹節を輸入できないのだ。

そのため、コウジカビに頼らない形でこれらの要素を作り出す必要がある。
そしてそれは、化学的に考えることでクリアできる。
はやりの分子ガストロノミーってやつですな。

村田氏の提唱に基づき、再現してみよう。

欧風「和風だし」を作る

まず「だし」だが、和食のだしは「昆布のグルタミン酸」「鰹節のイノシン酸」「シイタケのグアニル酸」が三大要素だとされている。
これをそれぞれ「ドライトマト」「鳥胸肉」そして「アミガサタケ」に置き換えることができる。


図らずもかつて僕も「アミガサタケを和風だしに生かす」といった旨の記事を公開しており、自分の先見性の高さにくらっとくる。


ドライトマトと乾燥アミガサタケを水(ヴィッテル)に1時間ほど漬けて、


色が出てきたら中火にかけて沸かし


沸騰前に取り出す。


そこに鳥胸ひき肉を入れてゆっくりと沸かし、


10分ほどとろ火で煮たら


欧風「和風だし」の完成!

……(~~~)
うん、ちょっと動物性の風味が強い(アミガサタケ由来)けど、バランスが取れていながらにして非常に濃厚な和風だしだ。
旨味の相乗効果が得られているのだろう。

これを欧風醤油のベースの旨味とする。

醤油の「要素」をメイラード反応によって作り出す

続いて、醤油の構成要素である「風味」「色」「甘味」「塩味」「酸味」を作っていく。

これらの要素を醤油にもたらしているのは「メイラード反応」だ。
これは糖とタンパク質(アミノ化合物)を反応させることで、カラメル様の色素と香ばしい風味が得られる現象のことを言う。
メイラード反応は、醤油の醸造においては、常温で長時間かけて起きているのだが、加熱により迅速に再現することが可能となる。


まずはひとつめのメイラード反応によりガストリックを作る。
ガストリックはフランスの調味料のひとつで、酢と砂糖をメイラード反応させたもの。
これにより風味と酸味、奥行きのある甘みが得られる。


ワインビネガーと砂糖を1:5で混ぜて、


混ぜながらじっくり加熱していくと……


べっこう飴のような香りとともに混ざりながら煮詰まっていき、粘り気が出て


とろりとしたところで完成。
心もち長めに焦がすのが美味しく作るコツらしい。

このままでも醤油みたいな色みだが、ここでいったんおいておく。


ふたつめは鶏肉と、はちみつのメイラード反応。
これにどのような意味があるのか、村田氏の発言を思い出せないのではっきり思い出せないのだが、おそらく苦みの追加、香りと旨味の増強、コクをもたらすような効果があるのではないか。


台所に転がっていた蜂蜜を


鳥胸ひき肉とともにじっくり炒め


焦がし


固形になるまで煮詰める。

これで素材は揃った。

仕上げ

さあ、仕上げていこう。


2つ目のメイラード反応物質に、欧風「和風だし」を注ぎいれて、


よく混ぜる。

ここにさらにガストリックを入れてよく混ぜ、さらに多めに塩を入れて味を調える。

濾せば

欧風醤油の完成!!


ちょっと鶏ひき肉に含まれていた脂分が多かったのか、表面に油が浮いてしまっている。
しかし香りや色合い、とろみはかなり醤油に近い。

なめてみよう
……(`・౪・´)
うん、うん、なるほどなるほど……
これはあれだ、おせんべい屋さんの甘醤油から甘みだけを取り去ったようなカンジ。
つまり、香りは甘苦いけど、味は甘くないんだ。

あと、村田氏も言っていたけど、麹香がないのは大きな違い。
もうちょっとストレートに甘い香りで、醤油好きには物足りないかもしれないけど、欧州人にとってはこれがむしろいいかもしれない……



お寿司につけてみましょう。

まぐろと


サーモン


……(≧~≦*)
うんうん、いいんじゃない?
一瞬、九州の甘い刺身醤油みたいだけど、味はもう少しきりっとしている。
食塩を最後に入れるので、塩気が立っていて、関東人好みの味だ。
「ええ塩」を使えば関西人の皆さん好みのものも作れると思う。

味:★★★★☆
価格:★★★★★ 手間賃。


もうちょっと香りの少ないタイプの蜂蜜を使えばよかったかもしれないという反省はありつつも、大変面白い結果に終わり楽しめました。
これ、キノコを変えたらまたちょっと違った風味のものが作れないだろうか。
たとえばそう、コウタケとかね!
うんうん、いいな、今度やってみましょう。


ということで「野食ハンマープライス」は今後も頑張って更新してまいる所存です。
どうか皆様今後とも変わらぬ御贔屓のほど、よろしくお願いいたします。

 
 
 

コメント

  1. 鏡の破片 より:

    500回おめでとうございます。
    今回の「一部の国では本来の製法で醤油が作れない」って「もやしもん」でもあったアレですよね。A.オリゼーが某権威ある学術書で別の菌と混同され、それを頑なに盲従する某国の学者が…、って。
    これからもくれぐれもお体には気をつけて頑張ってください。楽しみにしてます。

    • wacky より:

      ありがとうございます! これからも死なない程度に頑張ってまいります。。

      そうそう、それです。結局その権威氏は後に「やっぱ無毒だったわ」って言ってるんですけどね~。

  2. doiken より:

    公開記事500回
    おめでとうございます。
    いつも楽しく読ませていただいています。
    醤油作れちゃうんだと、純粋に驚きました。
    でも、すっごく手間がかかるんですね。
    美味しそうではあるけど、自分で作るかと言われると、ハードルが高いなぁ(^^;;

    • wacky より:

      ありがとうございます! いつも読んで頂けてうれしいです。。

      そうなんです、大変面倒ですw
      この辺の各手順を、麹菌がひとりで頑張ってくれているんだなぁと思うと、感謝の念がわいてきますね。

      • kahma より:

        しょうゆメーカーの人間です。いつも楽しませてもらっています。今回しょうゆを取りあげていただいて、とても興味深く拝見させていただきました。ありがとうございました。
        ちなみにですが、しょうゆは麹菌だけでなく、乳酸菌や酵母もがんばっていますよ。製法によっては乳酸菌や酵母の種類も複数働いていたりします。欧風しょうゆより原料はシンプルなのですが、微生物が複雑に働いて色んな味や香りができているんでしょうね。

        • wacky より:

          単純に考えて、大豆と小麦と米だけであれだけ複雑な風味のものが作られるっておかしいですよね……欧風醤油はあくまで要素だけ、アルコールと砂糖と増粘剤で作られた「みりん風調味料」のようなものだと考えています。

  3. BASふとみ より:

    500記事公開達成おめでとうございます!いつも茸本さんの記事に癒されている?身としましては、これからも末長く続けていただけることを切に願っております。
    …しかしアミガサタケで醤油って発想がいつも以上に錬金術感がスゴイっすw

    • wacky より:

      ありがとうございます! おかげでコツコツ頑張らせていただいております。。
      これからもネタ切れするまで更新を続けていきたいと思っています。なお多摩川だけでも一生分のネタがある模様……

      僕も作っていて思いましたw手間こそかかりますがリクツと手順は全く難しくないんですよね。面白いので今後もまたやっていくと思います。。

  4. haru より:

    500回おめっとさん!!!
    ほんとに料理は化学だなと感じつつ、探究心の深さと軽妙な記事に感心しきりです。
    ここ覗くのがすっかり日々の楽しみの一つになってるなー。これからも応援してます。

    • wacky より:

      あざーす!(≧∀≦)今後もどうぞ、御贔屓に!
      料理は本当に面白いですよ! 高校の時にもっとまじめに化学勉強しておいたら良かったなぁ……モルめ……

  5. ゲラニル より:

    いつも楽しませていただいております。500本塁打達成おめでとうございます!
    松井、清原の記録まであと少しですな
    すでに869回めの記事が楽しみです。笑

    • wacky より:

      ありがとうございます! 安打じゃなくてHRだったのか……w
      王さんのHR数だけじゃなくふくもっさんの盗塁記録も超えたいですね!

  6. 歩くバオバブ より:

    公開記事500個達成、おめでとうございます。
    自分も至極マイルドながら山物や海物で野食を楽しんでおり、都度都度で大変参考にさせて頂いています!。
    大台目指してこれからも頑張って下さい。アスリート以上に身体(特に内臓)が資本ですので頑張り過ぎにならない程度で。

  7. 西洋呑み屋 より:

    おめでとうございます。\(^o^)/

    ちなみに、ポルチーニの粉末をぶっ込むと、醤油そっくりに成りますよー。

    何せ、ポルチーニは菌類臭のする醤油そっくりの香り…粉末は。w

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