野生の金魚でめでたそうな蒸し物を作ってみた

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先日、魚の分類学者として高名なフナ先生(@wormanago)から、赤い魚をいただきました。

やっぱりね、年末年始といえば赤い魚ですよね。大変めでたい。
ありがたく、調理させていただきましょう。

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金魚はゲテモノじゃないぞ

今回いただいたこの魚は「和金」の大きくなったものと思われる、とのことでした。
言ってしまえばそう、金魚の一種です。一番原始的な金魚というべきか。

ただね「金魚食うのかよこのゲテ食野郎」っていうのはね、ちょっと話が違うかなと思います。


まず、「金魚を食う」と聞いてゲーとなる人が結構多いのは、やっぱりペットとしてあまりにも有名だからだと思います。
日本人なら誰もが一度は飼ったことがあるこの金魚、そのほとんどは和金から改良されてできたものです。でもこの和金、中国大陸原産のフナの一種が突然変異で赤くなった、いわゆる「ヒブナ」の形質が固定されたものだとされています。だから金魚って要はフナなんですよ、日本のフナとは種が違うけども。
加えて言えばヒブナは自然にも発生するものなので、かつてペットであったという可能性もあんまり高くはないんじゃなかろうかと思います。わからんけど。

なお、フナが由緒正しい食用魚であることは「鮒ずし」の例を挙げれば説明は不要かと思います。


そして我が国には、この「ヒブナ」の中で先祖返りして黒くなってしまったものを、食用に改良した「改良ブナ」と呼ばれるものがいます。わざわざ食用に改良したってことはもちろん、それだけ味がよかったってことでしょう。

そしてトドメに、1930年代にはそのものずばりの「食用和金」が開発され、新聞記事にもなっています。
大阪毎日新聞によれば「刺身にすれば鯛以上、洗いにすれば川魚の王様である鮒より美味で、その歯切れの感触は食通の珍重措かざる『ふぐ』に優る」とのことで、ここまで言われちゃあもう和金を食べないわけにはいかんだろうという話なわけです。

「金魚」を美味しく食べてみた

今回フナ先生が送ってくださったのは、福岡県のとあるため池で採れた個体。先生の言うには「しばらく池干しをしていないものの、生活排水は一切入らない環境」とのことでした。

池干しをしていないため池は、水底の富栄養化した沈殿物がそのままになっているので、環境全体に藻や水草のようなもわっとした匂いが発生し、そこに暮らす魚にも移ってしまうことがあります。なのでフナ先生も今回のフナについて「泥臭い可能性がある」「ジャンクフード」と忠告くださいました。
ただ、これらの匂いについては調理時の工夫でなんとかなります。匂いがたまる部位がはっきりしているし、加熱で揮発させられるし。酒も効果ありますね。

やばいのはそれではなく、このサイトではおなじみのゲオスミン臭のほうです。

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先日、資料用にコイこくを作る必要性が生じ、アメ横でコイを購入してきました。 サイズのわりに体高のある見事なコイで、サイズ的にもちょうどよく、味に期待しながら捌いていきます。 鱗をつけたままぶつ切りにして胆嚢を除去し、 ...

「雨上がりのアスファルト臭」にも例えられるゲオスミンは、非常に安定的な成分で、一般家庭で施せる処置では基本的にはどうにもなりません。アルコールとグリグリに混ぜてから散々バーニングしたら何とかなるかも知らんけど、そこまでして食べたくないしね。

しかしゲオスミン臭はいわゆる生活排水に由来する(もしくは生活排水が流れ込む水域で発生する)ものらしく、その点では今回の和金ちゃんはそのリスクは低いものと思われます。それだけで全然気は楽です。


まずは鱗をとり、腹を裂いて、内臓を鰓まで一気に切除します。
上記の改良ブナは「内臓の美味しさが魅力」らしいのですが、今回は内臓を食べるのは一旦見送ることにしました。

ちなみに同サイズのギンブナと比べると内臓が小さく、とくに腸は明らかに短いです。

ギンブナの内臓


これはギンブナと比べると動物食傾向が強いということなのか。

→が和金


身の色も大きく違い、ギンブナと比べて明らかに赤みが強いです。やっぱり餌の違いに由来するものなんじゃないかと思いますよね。それとも和金(ヒブナ)の赤い色素は全身に及ぶものなのだろうか。

鱗を丁寧に落とし、熱湯をさっとかけて流水で良く流します。ゲオスミン以外の泥臭さは鱗・皮・えら・内臓に溜まるので、ここまで処置すればかなり取り除くことが可能です。



処理の終わった和金を皿に置き、塩を振りかけて馴染ませ、さらに紹興酒を振りかけます。
皿ごと鍋に入れて、15分ほど強火で蒸します。


刻んだショウガと白髪ねぎをのせて


カンカンに熱したごま油を回しかけます。


できた! 和金の清蒸、完成です(≧ω≦)
さっそくいただきましょう。


……(`・〰・´)うんうん、旨い美味い。
これはね、普通に美味しいフナですね。ぎゅっと締まった身質は噛みしめると旨味がじゅわじゅわと染み出し、ゼラチン質が豊富で噛み応えがありながらも口の中でふわりとほどける柔らかさも感じます。
臭みはそもそもほぼないと思いますが、わずかに残っていたとしても紹興酒とごま油のパワーで完璧に打ち消されたでしょう。
皿にあふれる蒸し汁のまた美味いこと! これでご飯炊いたら最高じゃないかな、ちょっと油ギッシュだけど。

ひとつ難点なのは、小骨が非常に多いこと。コイ科の魚なのである程度はしょうがないですが、無視して食べるにはやや気になるくらいの小骨がびっしりと入っています。
ギンブナと比べるとやや細いんだけど、数は和金のほうが多い気もする……

味:★★★☆☆
入手難易度:★★☆☆☆ 水田地帯なら結構見かけるよね


この赤さを生かしてもっと別の料理も作ってみたいなー。なんかいいアイディアないかな。

フナ先生、ありがとうございました!

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魚介その1(魚系)
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