土とか、食ってみようかな②:熊本城の「食べられる壁」を再現してみた

今回食べている土である「珪藻土」はアメリカから輸入されたものですが、日本国内でも産出はあるそうです。
代表的な産地は北海道、石川、岡山、大分など。七輪の材料になったり、漆喰と同じように建築材料に用いられています。


食用にされることもやはりあったようで、北海道ではアイヌが「チ・エ・トイ」と呼んで食材として用いたほか、江戸時代には有事における食事の増量剤として用いられたそうです。飢饉の絵巻などにある「人々は土までも口にした……」みたいなやつがきっとそれでしょう。
今や普通の食材より高価なものになり、お金を稼ぎまくっているトップモデルが愛用する食材になっているというのは皮肉なものです。。


そしてそんな歴史の中でも、もっとも人口に膾炙し、エピソードとしても知られているのが「食べられる城」ではないでしょうか。

熊本城は可食だった

築城の名手、加藤清正が手掛けた最高傑作のひとつ、熊本城

天守閣は西南戦争で焼失してしまったものの、再建されて以降は往年の姿をとどめる貴重な城として国の特別史跡に指定されています。地震からの復旧もかなり進んだようでなによりですね。
この熊本城、清正公によって建造されたときは様々な籠城戦対策が施されていたそうで、そのひとつに「食べられる壁」があります。


戦の天才として知られた清正公、当然城造りにもその手腕が発揮されました。彼は朝鮮出兵の際に厳しい籠城戦を経験したことから、城内にいかに多くの食材・水を備蓄するかということを常に考えていたといいます。
城内には120もの井戸がありいつでも水には困らなかったといいますし、イグサの名産地である熊本にありながら、畳はいざというとき食糧にできる芋がらで作っているところもあったそうです。

そして工夫の最たるものが壁。
本来は藁を芯材に泥を塗りこめて作る土壁ですが、熊本城では藁の代わりにかんぴょうを練りこみ、土には我らが珪藻土を用いて、いざというときは丸ごと食べることができるようにしていたとのこと。高校の時、日本史の便覧に「飢饉の際には家の壁も崩して食べた」なんて書いてあった記憶がありますが、もともと食べられるように作った壁だとしたらちょっと話が変わってくるような気もします(もちろん食べたくて食べているわけじゃないんだけど)。


結局熊本城は清正公存命中は戦の舞台になることはなく、その土壁や畳も食べられることはなかったと思いますが、彼の危機管理の素晴らしさとその技術を令和の世に伝えていくべく、実際に土壁を作って食べてみようと思います。

食べられる壁を作ってみた

作るにあたり、かんぴょうと珪藻土のほかにもうひとつ、用いられていたものがあると考えます。
それは「海藻糊」。日本においては土壁はその素材を問わず、壁の強度を上げ崩れないようにするための「糊」を用いる必要があります。現在ではいろいろな材料が使われていますが、もっとも一般的であったのが、海藻を溶かして作る海藻糊だったそうです。これはテングサのような「煮て溶かすことができる」海藻で作る接合剤で、多くはフノリやツノマタといった海藻で作られてきたそうです。

コトジツノマタ
ツノマタや近縁のコトジツノマタについては神奈川の岩礁にも多く生えており、漁業権のないところも多いので採取は容易。


以前採って乾燥してあったものに、市販の寒天を混ぜて海藻糊とします。



これを水で練った珪藻土に練りこみ、かんぴょうも練りこんで


天日や電子レンジで乾燥させます。


できた! これが食べられる壁……
実際に叩いてみると


……あ、結構丈夫!
どうしてもパラパラと崩れてしまうところはありますが、糊のおかげで先日作った珪藻土クッキーと比べるとはるかに強度が高いです。これを厚く塗り込めば城として十分な強度を得るでしょう(もちろん木枠の芯材なども併用したでしょうし)


完成したところで、今度はこれを崩して食べてみます。



籠城戦の環境下ではあまり多くの調味料は使えないと思うので、少量の味噌で煮てみました。土は入れすぎるとひどい便秘になって戦に臨めなくなるので(珪藻土の主成分ケイ酸カルシウムには止瀉作用がある)少量もちいて、汁にとろみがつく程度に。


…うむ。いただきまーす


……(・〰・)かんぴょうの味噌汁だね。出汁はあんまりありませんが、海藻の風味があるので味噌だけでも飲めないことはないです。とろみが少しついてもったりとしているので、心頭滅却すればお粥っぽい感じもしなくはないかな……。冷静になると泥だけど……
空腹の極みにあればおなかに溜まってよいかもしれませんが、しかし食べ過ぎると腸閉塞になりそう。

味:★★☆☆☆
価格:★★☆☆☆



途中から完全に妄想で再現しているので、歴史クラスタ的に「これはあり得ん!」というところがあればご指摘ください。
まあそれはそれとして食べられる壁は本当に食べられます。メイトリックスが第3次大戦を起こす前に、ぜひ皆さん家の壁を珪藻土に変えておくことをお勧めします。




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