ミスマッチの粋……? 福岡・黒木のユニークなお雑煮を作ってみた:茸本朗のお雑煮探訪①

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明けましておめでとうございます!
今年もいっぱい調理実験を行い、ヤバい料理を錬成していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

鮒ラーメンとか

鮒ラーメンとか



さて、新年早々の宣伝でたいへん恐縮ではございますが、「野食のススメ」第8回の記事が公開されました。
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星海社Webサイト「ジセダイ」
「野食のススメ 東京自給自足生活」
を連載しています!!

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今回はゲストに「めしにしましょう」の小林銅蟲先生をお迎えし、ウツボを釣ってもらったり変なおせちを食べてもらったりしてます。

めしにしましょう(イブニング公式ページ)

小林先生、忙しいなかお付き合いいただき本当にありがとうございました。

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雑煮に、あんこと、スルメ……!?

さて今回の「野食のススメ」では「野食おせち&雑煮」ということで、今年採り貯めてきた食材を基本に、野食材&調味料だけで豪華な正月の食事を作ってみた。
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とくに雑煮については、前からやってみたかった「ハゼ出汁」にトライし、個性的でありながらも飲みやすく美味しいものを作ることができた。
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ハゼ出汁の雑煮というと宮城県南部のものがメジャーだが、僕が住んでいた福岡県福岡地方でも、冬になると落ちハゼを釣り、焼き干しにして雑煮の出汁にするというご老人によくお会いした。

じつは九州は雑煮のバラエティーが豊富で、意外なところで意外な雑煮に出会うことがしばしある。
例えば義兄のご実家のある熊本県玉名地方では、醤油仕立てのすまし汁に甘い餡入りの餅をいれるそうだし、これが天草に行くと塩餡になるという。

集落単位で味が変わるような場合も少なくはないようで、ひょっとすると、過去にその集落での有力者の好みで新たな雑煮文化が生まれるようなことがあったりしたかもしれない。



さて、そんなユニークな雑煮について調べていたところ、灯台もと暗しと言うべきか、連れから非常に面白い雑煮の話を聞いた。

連れは幼少時、御祖母様の家に正月帰省すると、とても不思議な雑煮を食べたのだという。
彼女の証言に依れば
「汁はうすら甘い汁粉風で、丸餅がひとつ入り、スルメが一切れ浮いていた」
のだそうだ。


御祖母様は福岡県黒木地区(現・八女市)ご出身とのことで、そのあたりにこの雑煮のルーツがあるのでは、とのこと。

調べて見ると、FM FUKUOKAのウェブサイトにこのような記述を発見。


◆八女のお雑煮
八女の一般的なお雑煮は、しょうゆベースに、丸モチ、大根、にんじん、里芋などのお野菜が入り、鳥肉、スルメが入っているようです。

黒木町ではあんこの入ったモチをいれたり、黒砂糖をいれたりするところもあるそう。

なるほどね……「スルメ」と「甘味」という2要素だけが抽出された感じか。。
……んんっ、それ、雑煮なのか!?


味の想像もまったくつかないし……
でもなんだかおもしろそう。
簡単そうだし、自分で作って試してみるか。

「スルメと汁粉」の雑煮を作ってみた

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用意したのは、相当前に船のサバ釣りの外道で釣れたスルメイカのげその干物。
(イカ釣りの外道に来たサバ、という学説もあるが、そもそもタチウオ船だったという証言もある)

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これをゆっくり煮て戻し、その汁に

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煮た小豆と

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黒砂糖をいれて薄めの甘さに仕立てる。

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餅を入れて少し煮たら、

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完成。


連れに食べてもらおう。

……(×ω×*)
「スルメはただ浮いてるだけで、出汁には使わないよ……」

なんと!? そいつぁ失礼した!

「あと、粒あんじゃなくてこしあんね。で、もっと濃い。」
「スルメも一切れ、ほんのちょっとだけ乗ってるの。」

了解……
作り直しましょう。


TAKE2
煮小豆を潰して濾し、黒砂糖と塩少々で味付けして汁粉を作る。
餅を煮て柔らかくして、おわんに盛り、最後にスルメをひとかけら浮かべる。

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これでどうでしょう。

……(`・ω・´*)
「うーん、近いけど、こんなに黒砂糖の風味はしなかったよ」
「でもまあ、こんな感じ」

よく聞いてみると、そもそも彼女の記憶の中では黒砂糖は用いられていなかった様子だった。
ので風味の点でやや異なるとは思うが、それでも口にしたときに、はじめて口にしたときの「えっなにコレ」という困惑がふわっと思い出されたという。


僕もテイスティングしてみましょう。
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……(`・~・´;;)
うーん、これは、あれだ、、、
昔ヴィレッジヴァンガードで売られてた「いかチョコ」みたいな感じだ。
あれはさきいかをチョコでコーティングするというビーンボールみたいなお菓子だったけど、あれよりはだいぶん食べやすい。
出汁を取ったあとのスルメの「気の抜けたしょっぱさ」と、汁粉のうすら甘さがいい塩梅にミスマッチしているのだ。

そして、スルメ以外の部分は要はお汁粉なので、普通に美味しい。
連れも、最初の一口がちょっとしんどかっただけで、すぐに慣れてパクパク食べていたとのこと。

味:★★★☆☆
価格:★★☆☆☆



で、作っちゃったので、スルメの出汁のきいた方も食べてみた。
……(´・~・`)
うーん、言うほどまずかぁないけど、僕が子どもだったら泣いて許しを請うかもしれないカンジのミスマッチっぷり。
過ぎたるは及ばざるがごとしというやつだ。



というわけで、野食ハンマープライスでは今後も、各地の超マイナーな雑煮情報を募集していきたいと思います。
宛先はこちら(空耳アワーのタモさん風に)

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魚介その2(魚以外)
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野食ハンマープライス

コメント

  1. ヒデヨシの親 より:

    実家では子供の頃スルメ出汁の雑煮だったです(自分家だけ?)
    スルメ出汁に調味料(塩、醤油)を加えて味を調えていた記憶があります。出汁ガラのスルメは細く刻んで雑煮の具になってましたね。

    子供の頃はお八つ代わりにスルメを齧って怒られた記憶も-毎日一枚食べられたらそりゃ怒らるわなぁ(苦笑)

    • wacky より:

      お、スルメ出汁ですか! いいですね(`・ω・´)僕も大好きです。
      でも、スルメ1日1枚はちょっと、プリン体過剰摂取になりそうですねww

  2. doiken より:

    奇遇ですが、お袋が玉名出身です。
    ただ、あんこ入りの餅ではなかったです。
    同じ玉名ですら、違うんだなと、面白かったです。

    • wacky より:

      なるほど……本当に1家庭に1雑煮なのかなという気がしてきましたね。。面白いですが、研究する人は大変そうだなぁ……

  3. とも より:

    香川出身です。
    白味噌仕立てに丸い餡餅、にんじん、だいこん、里芋、油揚げ、豆腐、太葱が入ります(実家の品数に限った話ではありますが)。
    煮干しから出汁を取っております。
    白味噌ベースに少しだけ、普段使いの合わせ味噌を混ぜて、しょっぱさを加えています。
    ちいさい頃は気色わるっ!と思っていたのに、なんでか今は食べちゃうんですよね。不思議です。

    • wacky より:

      香川のものは白味噌ってだけでもインパクトがあるのに、さらにあんこもちですもんね。異端扱いされやすいと思いますけど、一度食べてみたいと常々思っています。

  4. kuddy より:

    具とかwww
    具なんか一切入らない。餅を喰うんです餅を。
    出汁に餅。かつおぶし。それが越前~加賀の武士階級の雑煮です。きっと貧乏だったんです。
    一方、民間・農民階級の雑煮は、味噌汁に餅入ってる”だけ”感の雑煮です。

    長崎は島原方面で、餅の中に餡子入ってると聞いたことあるです。

    • wacky より:

      武士かわいそう(;ω;)そんなものを食べて武道の鍛錬なんてできたのだろうか……
      加賀なんて商家と武家の格差がヤバそう。。

      島原もあんこスポットか……日本人あんこもち好きですね。僕も好きですけど。。

  5. RK より:

    千葉の沿岸部の文化のようですが、具のない(あっても菜っ葉ぐらい)醤油ベースのおつゆに焼いた餅、
    それにこれでもかというほどのり(あればはばのり)を乗せて食べます。
    生家が一般的な東京風雑煮だったので、嫁いだ先で初めて食べた時だいぶカルチャーショックを受けましたが、これはこれでたいへん美味しいですよ☆

  6. 秋月 より:

    佐賀の有明海干拓地方面です。実家は雑煮を『雑煮』とすら呼ばなかったですよ。
    『高菜の煮餅』と呼んでいて、給食で雑煮が出たとき「雑煮てなに?」となりました。
    いりこだしに、辛い醤油。焼かない丸餅に 生高菜(漬物にしていない物)をざくざく切って入れます。
    因みに家系は鍛冶屋さんだったそうです。
    ぎゅっとしょっぱくて生高菜の苦味が来て…お節に飽きたときに、ふっと食べたくなりますね。

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