タイワンシジミを間違って採っちゃったので食べてみた

外来種は様々な形で我が国に侵入し、そして様々な側面から在来種を圧迫している。
この問題について、単純な構造化をするのはなかなか難しい。

ブラックバス、グリーンアノールのように在来種を食害してしまうものはある種シンプルで、彼らは生態ピラミッドを破壊し単相化してしまう。
そのため「駆除」という手段が採られやすい
(ブラックバスなどは既に生態ピラミッドの一部分であり、いま駆除をしたとしても逆にバランスを崩してしまうのではないか、という考え方もある)

対して、直接食害するわけではないものの、環境適応力や繁殖力の高さにより、生息環境が重なる在来種の生息地を乗っ取るかたちで圧迫する外来種もいる。

こちらは前者よりも複雑な問題となる。

彼らの多くは既存の生態ピラミッドの一区画を置き換える形で日本の自然に入り込んでおり、単純な駆除と殲滅が逆に自然のバランスを崩してしまう可能性がある。

また、高度成長期の自然破壊や環境改変にともなって在来種が絶えてしまい、そのニッチを埋める形で生態の似た外来種が入り込んでいるパターンもある。
この場合、その環境を元通りにしない限りはもともとの在来種が戻ってくる可能性は極めて低く、外来種が入り込んでいるからと言って彼らを即ち悪ととらえることに抵抗感がある。



このブログでは、外来種は積極的に食べてみるというスタンスをとっている。
もともとは食用として日本に導入されたものが多いし、また在来種と比べて採取・調理への罪悪感が少ないということも大きな理由だ。

ただそれ以上に、彼ら自身に罪はないのに異国の地で叩かれ罵倒されている彼らにレゾンデートルを与えてあげたい、という独りよがりで偽善的な欲求があったりする。

青潮に強く、アサリが壊滅の年でも漁獲量が見込め、食味もよく金になるホンビノスガイを嫌うものは、浦安の漁師のなかにもいまはほとんどいないと思う。
何かのきっかけで新たな価値が見いだされることがあれば、その種にとっても日本人にとっても「幸せな結末」につながるのではないかという気がするのだ。

…とはいえ、外来種を採取し、食べるという行為は注意しないとそれ自体が自然破壊につながる可能性が起こりうる。(生体の移動を伴うときは特に)
もしこのサイトを読んで「外来種を採って食べてやろう」と思った人がいたら、ぜひ正しい知識と手段を持って挑んでいただくよう心からお願いしたい。

 

淡水性のシジミには要注意!

さて先日、仕事で茨城県は牛久沼の周辺水田に撮影に向かったのだが、その時ふと水路を除いてみると
タイワンシジミ,茨城
大量の水管が底から覗いていた。

もしやと思い手で掬ってみると
タイワンシジミ
大量のシジミ!
タイワンシジミ
1㎝前後の黄色味が強いものから、3㎝ちかい黒いものまで、ものの5分で大量の個体を採取することができた。
DSC_0852
この水路は何の変哲もないコンクリート製のU字溝だったのだが、この地域では稲作とともにレンコンの栽培が盛んで、そこから流出してきた泥が10㎝ほどの深さに堆積しているところだった。

コンビニ袋に入れて口を強く縛り、液漏れがしないようにしてそのまま持ち帰ってきた。

マシジミ、ではなくタイワンシジミ

この水田の周辺ではドジョウや
DSC_0379
トウキョウダルマガエル、
DSC_0877

DSC_0892
そしてケラなどいまや貴重な生きものも多く生息しており、自然農法を実施している農家が多いことが実感された。

そんな中で採れたこのシジミ、採取して持ち帰ってくるまでは間違いなくマシジミだと思っていた。
食卓になじみのあるあの黒いシジミは多くが河口に棲息するヤマトシジミで、それとは別に淡水にも多くのシジミが生息している。
マシジミはそのなかの一つで、内陸の地域では貴重な食用貝として利用されてきた。

しかし帰宅して調べてみると、どうも違和感がある。
まずマシジミは、比較的流れのある砂利混じりの砂底に生息し、泥底にはほとんど生息しないという。
また、いくら自然が多かったとしても、コンクリ製のU字路の中に大量に棲息しているというのはやはり変だ。

これ、悪名高いタイワンシジミというやつなんじゃなかろうか…

タイワンシジミは外見、生息域ともにマシジミに酷似する淡水性シジミで、食用に輸入されたシジミに混ざっていたのではないかと言われている。
繁殖力が高く、蓄養(輸入した食用動物は一度国内の水面に放流すれば国産として扱える、というクソみたいなルールが存在する)されていた隙に逃げ出して全国に生息域を広げた。

恐ろしいのは、家庭で泥抜きしているときにこっそり稚貝が放出され、下水を通って各地の水路に逃げ出したとも考えられているのだ。恐ろしいほどのど根性である。
NCM_0114
また、他の食用シジミと比べて美味しくないために選別されて捨てられ、そこから殖えたという説もある。
いずれにせよヒトの手で持ち込まれ、厄介者として世にはびこっている外来種のひとつなのだ。

さらに、この種とマシジミは遺伝子的にもきわめて類似しており(同一種の型違いなのではないかという学説もある)交雑しやすい。
タイワンシジミの精子で受精したマシジミの有精卵は、タイワンシジミの形質を持って発生するとのことで、圧迫という言葉では生ぬるいほどに全国でマシジミに置き換わっている。

とまれ今回は自宅まで持ち帰ってきてしまった。
このまま捨ててしまうのは生命への冒涜であり、かといってその辺に捨て置いては彼らの思うつぼである。
不味とはいえ毒があるわけでもなかろうし、加熱駆除も兼ねて食べてしまおうではないか。
NCM_0115

とりあえず味を見る

ヤマトシジミと比べると味が無い、というのがタイワンシジミの一般的?な評価とされている。

確かめてみるため、ダシをとってみることにした。
出汁が命のシジミ、もし本当ならば相当使い勝手が悪くなるだろう…

ミネラルウォーターで泥抜きをしたシジミを、普通のシジミの味噌汁同様水から入れて煮たててみた。
鍋の中で元気に足を伸ばし、生命力の高さを感じさせる。
NCM_0154
色はわずかに薄く濁り、シジミ特有の香りがして見た目には悪くないのだが…

(・~・)…

確かに、味がしない
しないけど香りはあるし、生臭みはないし、極端な話この汁に出汁入り味噌を溶いたらシジミの味噌汁として完成しそうな気がする。
ヤマトシジミのスコアをそれぞれ10とすると、タイワンシジミは
味2、香り7、風味8
くらいにはなりそうだ。

さらに、少し驚いたのは出汁を取った後の本体の方である。
タイワンシジミ,料理
こんなに身がぷっくりするシジミはあまり見たことが無い。
ヤマトシジミと異なり、加熱すると自然に殻から外れるのも食べやすさの点からは有難い。

せっかくなのでこちらの身を、台湾の屋台料理風にしてみた。
紹興酒、醤油、ニンニク、ショウガ、タカノツメで漬けるだけの簡単な料理だが、台湾では酒のつまみとして人気が高い。
出汁に不安があるので味の素を少しだけ入れておいた。
タイワンシジミ,料理
完成。
一晩漬けたものを食べてみると…
(・~・*)…
うん、こんな感じ。
身に十分な歯応え、食べごたえがあり、香りが良くて紹興酒のあてにぴったりだ。
ひょっとして台湾で食べたやつは、本当にタイワンシジミを使ってたのか…?

味:★★★☆☆
価格:★★☆☆☆

ひと手間加えてやれば十分食べられる

というわけで、多摩川川崎寄り河口で採れた巨大ヤマトシジミよりは十分食べられるという結論になった。
とはいえ出汁の出なさは調理法によっては致命的、普通のシジミと同様に考えるわけにはいかないだろう。

また、前記の通り在来種に対して極めて重大な負荷を与えている種とあって、特定外来生物の一つ手前ともいえる「生態系被害防止外来種」に指定されている。
これらは採取・移送の禁止こそ規定されていないが、できるだけ避けるに越したことはないだろうし、仮にするとしても慎重な対応が望まれる。

「食べて減らそう!」なんて気軽に言えるものではないのだが、身近な環境に発生して困ってしまった場合など、焼却処分するぐらいなら煮たてて食べちゃうってのもありかも知れない。

 
 
 

コメント

  1. せつな より:

    勝手に殻から外れてくれるんだったら、逆に出汁が出ないよう熱湯から一気に加熱して外して、干してから加工するとかどうなんだろ?
    栄養価や旨味は上がりそうだし、いろいろ使えそうな気はするけど、手間に見合うかどうかはなんとも。

    • wacky より:

      イケると思いますね。小型でも簡単に取り出せるので、大量に茹でて身だけふるい落として、そのまま炒め物や佃煮、あるいは干しておつまみに…なんていうのもいいですね。
      将来在来のシジミがほとんどいなくなっちゃって、タイワンシジミでいいから食うか…って時が来そうな気がするので、そのときはこの方法でひと儲けしましょう!w

  2. たろう より:

    タイワンヌマシジミを研究で探しています、牛久沼のどの辺りか詳しく教えてもらえるとありがたいです
    よろしくお願いします

    • wacky より:

      撮影ポイントを探してあちらこちらを動き回ったので詳細なポイントはわからなくなってしまったのですが、レンコン畑沿いの側溝であればまず見つかると思います。僕は数カ所で確認しました。
      そういう意味では霞ヶ浦周辺の方が探しやすいかもしれませんが…

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