海藻はフロンティアだ④ セイヨウハバノリ?を食べてみた

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海藻を採取しようとすると困るのが、互いに似た種類が多くて同定が難しいこと、そしてそれ以上に、漁業権の制定の仕方がふわっとしていることだ。

神奈川県の規定でいうと、「あまのり」はおそらくスサビノリ、アサクサノリなどのアマノリ属を包括しているのだろうし、また「てんぐさ」は同様に寒天材料となるテングサ類を包括して想定しているのだと思われる。
しかし「アマノリ」、「テングサ」という海藻は存在しないのだから、恣意的な適用ができ得る悪法ともいえる。

また、多くの場所で「かじめ」が漁業権対象に規定されているが、三浦全域で採取され商品化されているのは同科の「アラメ」であり、こちらは多くの場所で規定されていない。
これに関しては房総と三浦で逆の海藻をそう呼んでいるという話があり、もしかすると標準和名アラメを三浦では「かじめ」として漁業権対象としているのかもしれないが、我々一般遊漁者としては極めて酷い話といわざるを得ない。

とはいえソクラテスは言った「悪法も亦た法なり」
我々も密漁などというくだらないことでお縄につきたくはないので、この辺りのことは理解した上で採取にいそしむ必要がある。

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セイヨウハバノリを採取した

さて、今回の海藻採取では、ホンダワラ科以外にも採取できたものがあった。
それがこちらである。

セイヨウハバノリ

帯状でびろびろしている


岩に生えているのを見たとき、一瞬ハバノリかと思ったのだが、違ったのはその大きさ。
ハバノリが生育しても15cm内外なのに対して、ここに生えているのは最大30cm以上と非常に大きい。
またハバノリは比較的葉が薄く色味も鮮やかな緑色をしているが、この海藻は葉が厚く、色もいかにも褐藻といった感じだ。

オンライン図鑑でいろいろ調べてみると、ハバノリの近縁種のセイヨウハバノリが最も近いようだ。
葉のサイズと比較して付着器が非常に小さいなど、いくつかの特徴が合致する。
ハバノリと比べて内湾に生息し、より大きくなる種で、名前の割に外来種ではなく日本古来の種のようだ。

先述のとおり、海藻はキノコに比べて(食用にするうえでは)厳密な同定を必要としないのが良いところである。
漁業権のある種でないことが確認できれば結構なのだ。

セイヨウハバノリは美味しいのか

さて、図鑑でセイヨウハバノリについて調べてみると、「ハバノリと厳密には区別しない」というものから「一般的には食用とされていない」まで記述がばらばらである。
実際に食べてみたという人があまり多くないのかもしれない。

海藻を食べてみたいという人は、まずはただ茹でてみると良い。
褐藻にしろ紅藻にしろ、食べて美味しいかどうかは茹でただけのもので大体判別ができる。(ヒジキやオオバモクのような上級向けは別として)

セイヨウハバノリ,食べる

サラダの彩りにも良さそう


セイヨウハバノリを茹でてみると、ワカメのような鮮やかな緑色になり、磯臭さもなくなった。
かんたんに刻んで、白だしをかけて食べてみた。

…(・~・)
ふつーに美味しい。
ワカメやハバノリと比べてよりコリコリとして歯ごたえがあり、鮮烈な青い香り(青臭さではなく)がして、出汁や醤油の風味に全く負けない。
酢の物などにもとても合いそうだ。個人的にはワカメよりも好きである。

味:★★★★☆
価格:★★★☆☆

さて、今回はまとまった量がとれたので、乾燥と塩蔵の2つの方法で保存してみることにした。
数枚の葉を刻み、ざるに入れて干す。
本来は海苔のように板状に干せればより良いのだが、簀子が無かったのであきらめた。
干している最中はかなり強烈な青臭い香りがする。

残りは塩蔵に。
塩をかけると見る見るうちに縮み、10分の1ほどの量になってしまった。



数日後、無事干しあがったセイヨウハバノリを
セイヨウハバノリ,乾燥
網の上で焼き、砕いてご飯にかけ、醤油を一垂らし。
セイヨウハバノリ,ご飯
三浦流のハバノリかけご飯を、セイヨウハバノリでも再現してみたのだ。

…(>~<)
これも大変美味しい。
香りが非常に鮮烈で、板海苔や青のりを焼いたものとは比べ物にならないくらい風味が強い。
好みを分けるとは思うが、好きな人はこれだけで炊飯器を空にできると思う。

味:★★★★☆
価格:★★★★☆



というわけで結論としては「セイヨウハバノリは大変美味しい」ということができる。
しかし、万人に進められるかというと、残念ながらそうはいかない。
なぜならおそらく多くの漁師さんはセイヨウハバノリを「デカいハバノリ」程度に考えているので、場所によっては採取すると怒られてしまう場所もあるかもしれないからだ。

また例によってふわっとした漁業権によって「はばのり類」という形で包括的に規制の手を伸ばしている地域もあるかもしれない。

読者の皆さんを犯罪者にしてしまう可能性があることを、積極的に勧めることはできない。
食べてみたい!という人は、同定作業をしっかり行ったうえで、その地域の漁業の実情を踏まえた冷静な判断をしていただくようにお願い申し上げたい。

悪法も亦た法なり、なのである。

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