カギイバラノリで「いぎす豆腐」っぽい物を作る

夏前に、伊豆半島のとある堤防で釣りをしていたときのこと。
海中のテトラに沢山の海藻が生えていたのだが、その上でフワフワとしている妙な生き物を見つけた。

不思議に思って降りてみると、動物だと思ったそれは海藻で、テヅルモヅルのようにくるくると巻いた枝で他の海草に絡みついているようだ。

生息場所の水深や色味から紅藻であるようだが、名前がわからない。
どうみてもテングサ類ではなく、またその他漁業権のある藻類とも違うようなので、採取して調べてみることにした。
一つの個体は小さいが、丁寧に集めるとそれなりの量になった。

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いくつかの海藻図鑑をあたると、やはり紅藻類のカギイバラノリにその特徴が当てはまった。
くるくると巻いた枝の先端を鍵爪のように他の海藻にひっかけて、付着しながら生育するという。

また、テングサ類と同じく「煮溶かせる」海藻であるイバラノリ類は、全国各地で採取され、八丈島の「ぶど」福岡の「おきゅうと」をはじめとした、各地の郷土料理の原料になっている。
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その中に、作り方がちょっとユニークな料理を一つ見つけた。

「いぎす豆腐」だ。

 

いぎす豆腐とは?

いぎす豆腐とは愛媛県今治地方を中心に食べられている郷土料理で、イバラノリの一種である「イギス」を煮溶かして固めたものである。

海藻の凝固作用を利用する料理は全国にそれこそ星の数ほどあるが、この料理の独特なところは、煮溶かすために「大豆粉」を使うところ。
アルカリ性にすることでしっかりと溶解させ、滑らかできめの細かい舌触りにすると同時に、大豆の風味を与えて個性的な食べ物にする効果があるのではないだろうか。
大豆が入るので「豆腐」の名前を冠するようになったのだろう。

今回せっかくイバラノリが手に入ったので、イギスではないがこの「いぎす豆腐」を自作してみることにした。

いぎす豆腐を作る

手順としては非常に簡単。
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まず、干しておいたカギイバラノリを水につけてもどす。
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このとき、彼らが生育の土台にしている他の海藻を一つ一つ丁寧に取り去る。
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乾燥時のカギイバラノリの重量の10倍の水に、好みの出汁を少し溶かして、刻んだカギイバラノリを入れて煮溶かす。
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中火で15分ほど、かき混ぜながら煮ていくと徐々に溶けて粘り気が出てくる。
溶け具合はテングサやコトジツノマタと比べると悪く、イボツノマタと同程度のようである。
この溶けにくさゆえ、アルカリ成分を投入することになったのだろう。

そこに、成城石井で買ってきたこの
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大豆粉を投入。(高級スーパーなら結構あります。きな粉だとダメっぽい?)
原料の海藻の5倍ほどの重量をどさっと入れ、ダマにならないようにヘラでよく練りながら混ぜ合わせる。
大豆粉が水分を吸っていくので、焦げ付かないように気を付けたい。
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そのまま弱火で数分よく練り、型に流して形を整えて、冷やす。
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完成!
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ちょっと溶け残りの海藻が出てしまったのが残念だけど、ぎりぎり合格の見た目。
早速食べてみよう…

(・~・)…
うわぁ…なんというか、ユニークw
けっしてマズいものではないし、個人的にはかなり好きだが、食べる人を選ぶかもしれない。
海藻と大豆(きな粉)を合わせたようなド直球の味で、ご飯のおかずというよりはお酒のつまみに向いてそうな気がする。
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家庭によっては型に流す際に野菜や海産物などの具を入れ、またみりんや砂糖を入れて甘めに作ったり、プレーンに作って醤油をかけたりして食べることもあるという。
常食する地域では、テングサ同様乾燥して風雨にさらし、海藻臭さを抜いたイバラノリ(イギス)が売られているようなので、それで作ればもっと食べやすい、おそらくゴマ豆腐のようなものが作れるんじゃないかという気がする。

でも個人的には海藻臭いのが好きなんだよなぁ…

味:★★★★☆
価格:★★★☆☆

このいぎす豆腐が長崎県島原地方に伝わって、大豆粉の代わりに豆の茹で汁で煮溶かして作られた「いぎりす」という食べ物が作られているらしい。
いぎりすってあーた、訛ったにしても乱暴すぎでしょ…w

作るのは簡単だけど、他の海藻に絡みついているイバラノリ類を採取するのは非常にやっかいだ。
潮下線よりも下に生えているので採取できる時間が短いし、知らない人にはテングサの密漁と間違われるかもしれない。(テングサに絡みついていることも多い)
ひょっとすると漁業権が指定されている場所もあるかもしれないし。。
つくってみたいという人は気をつけてね!

 
 
 

コメント

  1. より:

    島原出身です。
    祖母がよく作ってた料理に似た名前と製法だな~と思ったら、派生料理だったのか!
    私は苦手だったようで、あまり食べたことがなく味の記憶もあやふや
    ウチでは茹でた落花生使ってたような気がします。
    豆腐というよりも、食感は繊維質の残った硬めのイモ羊羹って感じかなぁ…

    • wacky より:

      「繊維質の残った硬めのイモ羊羹」という表現に全面的に賛成します。
      茹でた落花生というのはとてもおいしそうに聞こえますけど、大部分は海藻の風味でしょうからね…子供では好きになりにくいかもしれないですね。
      焼酎のつまみには最良かもしれません。

  2. おまる より:

    いつも楽しく拝見させてもらってます!
    今治市の者です!
    イギス豆腐は子供の頃から食べてました!
    各家庭で味も中身も違います、ゆで卵を入れたり、キクラゲ入れたりしていました、スーパーなどでも普通に売られています(笑)
    他の方も言われてるように芋羊羹に思えます(笑)

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