ハイイロシメジは禁断の美味キノコ:野食ハンマープライス的 自然毒のリスクプロファイル⑤

ヨーロッパで致死的な毒キノコが見つかりました

日本のキノコと同種の可能性を一部学者が指摘しています

だからみんな長らく食べてきたそのキノコは猛毒です

ってシモコシとかキシメジを毒指定したの、けっこうザルな理屈やと思うんですよ。

シモコシ

シモコシ


毒成分が分離されたウスタケ、実際に中毒による死者が出たスギヒラタケ、セシウムを特異的に蓄積する習性があるアンズタケを食べないように通達するのはまだわかる。(それですら本来は自己責任のもと好きにやれば良いと思うけど)


でもこれらのキノコと、シモコシ&キシメジは事情が大きく異なると思うわけです。
これまでも食べられてきたし、いまも珍重されていて、地域によっては最高のキノコとして客人に振る舞うような文化が残っているところもある。

そんなキノコが、遠く離れた国の同種かもわからないキノコのエビデンスで突然猛毒扱いされるのはどうにも腑に落ちないところがあるのだ。


極論を言えば、ものの食毒なぞ自分の裁量のもとに決定すべきもので、人が食えるというから食べ、食えないと言われたから食べないというのはいち生物の危機管理としてあまりにも情けないと思うのは僕だけだろうか。

 

ハイイロシメジは*付きの毒キノコ?

そもそも論として、キノコの食毒の定義というのは非常に曖昧だ。
シイタケやマイタケなどは生で食べると強いアレルギー反応を誘発するうえ、マイタケに至っては青酸化合物の生成能力を持つ。
コウタケは炭焼きなど、生に近い調理法で食べると粘膜が切れる。
生や火の通りが甘い状態で食べると何らかの症状を発症するキノコは非常に多く、それらは毒物と呼んでもおかしいものではないわけだ。


今日のテーマであるハイイロシメジも、いわばこの類いのキノコなのではないかと勝手に思っている。
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「自然毒のリスクプロファイル」によると以下の通り。

“ 食後数十分から24時間以内に嘔吐,下痢など胃腸など消化器系中毒を起こすが,数日で回復する。
毒成分は不明であるが,ネブラリン,レクチンタンパクなどを含む”

-厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」ハイイロシメジのページより引用-

このうちネブラリンについては医者の友人に聞いてみたところ、マウスの腫瘍抑制効果のほか、一部の微生物やカビを抑える効果を持つ物質とのこと。
当然細胞毒性もあるし、DNA修復にも関わるらしいから下手に食べない方がいいのでは、というのが彼の意見だ。
お医者様的にはNO!ということだ。

レクチンについては僕でも知っている。
生の豆に含まれているたんぱく質で、加熱不十分の自家製豆乳や生煮えの金時豆を食べて嘔吐や下痢を引き起こすアレですな。

つまり加熱不十分のハイイロシメジで中毒したんでないの?という仮説の根拠となりうるのだ。


ちなみにムスカリンを含むという説もあるけど、それは白いカヤタケ属のキノコであるという点からの連想でしっかりとしたエビデンスは無かったんじゃないかな?
まあ叩いてホコリ(胞子&毒性)の出ないキノコはないから、あまり追求しすぎない方がいいよ、なにも食べられなくなっちゃう。

と言うわけで僕はこれまでもハイイロシメジをしっかりと加熱して食べてきたし、今後もそうしようと思うけど、敢えて人に勧めるものではないかな、と考えている。

ハイイロシメジ、誠に遺憾ながら美味い

んで採ってきたハイイロシメジ。

ホンシメジに似てるので注意

ホンシメジに似てるので注意


こいつはほれぼれするほどぷっくりした足を持つキノコで、本来であればこの部分が魅力になるんだろうけど、9割以上の確率で茶色い幼虫の「お菓子の家」になっているので、採取したときに切り捨ててしまうのがオススメ。
ふつうのキノコムシ(キノコバエの幼虫)とは比べ物にならないくらいデカくて、キノコ好きでもやる気をなくすサイズなので持ち帰って虫出ししようとは考えないほうが良さそうだ。
こうなっちゃうともう傘の中まで虫がいっぱい

こうなっちゃうともう傘の中まで虫がいっぱい


幸いこの柄の膨らみで満足する個体が多く、肝心な傘の中までは入られていないものが多いので、若くてしっかりした、傘に弾力のある個体を選んで持ち帰ればあまりハズレはないはずだ。
老菌は歯ごたえが無くなるだけでなく、癖のある匂いが強くなり、水分を吸って傘がへにょへにょになってしまい美味しくない。


きれいにしたハイイロシメジ。
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乾くとちょっと古くなったニンニクのような少し癖のある匂いがあるが、これくらい若い個体だと気にはならない。
ハート形のがあった❤

ハート形のがあった❤

オススメの料理はずばり
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網焼き

加熱が甘いと中毒するので、こまめにひっくり返しながらちょっと焦げ目がつくぐらいまでしっかりと焼く。
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醤油をかけていただきマース

…(≧~≦)うめぇ!
傘はコリコリ、柄はしゃきしゃき。
うま味が強く味が濃い。
焼くと香ばしさが立ち、匂いは全く気にならない。

火の通りが気になる、という人は
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一度茹でこぼしてから焼くのもいい。
茹でただけでは匂いが強烈で美味しくない。
匂いと水分を飛ばすように、じっくりと焼くといい。



油との相性もいい。
天ぷら・フライは抜群だ。
水分を飛ばすように低温でじっくりと揚げ、最後に高温で揚げて衣をパリッとさせると美味しい。

でも個人的に好きなのが
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アヒージョだ。
うま味のある出しがオイルに溶け込んで、キノコ自体の味も濃くなりとても贅沢な味になる。

魚介と一緒に煮込むのもオススメ

魚介と一緒に煮込むのもオススメ


作り方はふつうのマッシュルームのアヒージョと一緒だが、気をつけたいのはやや高温に保つこと。
レクチンタンパクは100℃未満で加熱し続けると毒性が向上するとされており、アヒージョ本来の「低温の油でゆっくり煮る」という調理法だと毒性が消えていない可能性があるので、泡が出る位の高温で長めに煮込んだほうが良さそうだ。
刻みにんにくを入れるとなお良し。


保存にはあまり向いていない
乾しても、凍らせても例の匂いが強くなってしまい、美味しく保存できない。
大量に採ってちびちび食べ続けるという類のものでもないので、状態のいいものを必要な分だけ採取し、季節の味を楽しむ、というくらいが良いのではないだろうか。

「自己責任」は責任の放棄ではなくて「覚悟のススメ」

“物を食べることの本質は、体を養い気を養うことだ。
美味のために食べ物で冒険することは、ものを食べることの本義に反する。”
by 海原雄山(講談社「美味しんぼ」30巻より)

ハイイロシメジは美味しいキノコだと思うのだけど、上記の様々な事情から市販はされておらず、また食べる人も多くはない。

危険性を知りながらあえて毒成分を持つキノコを食べるなんてアホらしい、という人も多いだろう。
至極当然である。

ただそれでも、「それを食べたい」という明確な意思を持つ人間が、おのれの体調と化学的な知見を天秤にかけたうえで、安全であることを確認し、楽しく賞味する、という行為に横やりを入れる必要もないんではないか、という思いはどうしてもある。

アブラソコムツの時のようにひどい目に合うこともあるかもしれない。
それでも食への探求心は、これくらいの「覚悟」を担保されるべきものであるという気もするのだ。


というわけで、僕は今後もちびりちびりと食べていきたいと思います。
この記事を読んで食べたいなと思った人も、そうでない人も、ぜひいろいろと考えてみてください。

 
 
 

コメント

  1. マイン より:

    コメント失礼します。
    毒とは別かも知れませんが、最近は加工肉の発ガン性などが騒がれていますね。さらには動物の肉自体に発ガン性があると主張する学者さんといるようで、もう言い出したらキリが無いような感じがしますf^_^;
    そもそも健康に良いものしか含まれていない食材かあるのでしょうか…
    多少身体に悪くても、美味しいものは心を健康にしてくれる気がするので私には好物を我慢するのは無理そうですw
    長々と失礼しましたm(_ _)m

    • wacky より:

      コメントありがとうございます!
      そう、キリが無いんですよ!
      人間さまの為だけに創られたものじゃない限り、どんな食べ物にも健康に良くない成分は含まれているはずなんですよね。

      「心の健康」っていい言葉ですね!座右の銘にさせていただきます!

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