巨大なワニガメを捌いて食べてみた

これまでミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)やカミツキガメを捌いて食べてきて、その時々でいろいろと思うところはあった。
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命に貴賤はないと言っても、やはりカメを捌くとき、魚やカエルを捌くのとは違う感情は芽生える。
それは普段食用にしていないものだから、ということもあるし、また目の瞬きなど、ヒトにとって親近感を覚えやすい現象が伴ってくるからと言うのもあるだろう。

しかし今回僕が捌いた命は、また別の感傷を心の中にもたらしてきた。

 

巨大なワニガメを捌いた

先週遅くに生き物クラスタの知己であるSさんから届いた写真は、僕の度肝を抜くものだった。
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カミツキガメが繁殖していることで有名な某水系で彼が仕留めたのは、甲羅長40cm、体重は恐らく20kgを超えると思われる
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ワニガメ

北米を中心に生息し、当然ながら日本には本来棲息しない種だ。

当地ではこれまでも、側溝にはまった個体や産卵のために上陸してきた個体が捕獲されており、繁殖活動を含め、定着が進んでいるものと考えられてきた。
ミドリガメや他の外来ガメと同様、人為的に移入されたと考えてほぼ間違いないだろう。


ミドリガメと異なる点は、2000年にこの種が特定動物(人的被害を防止するため流通・飼育が禁止されている生物)に指定された結果、許可のない飼育が不可能となり、自然湖沼への廃棄が相次いだということにある。

つまり、シンプルにペットとして愛顧していたものの、法律の変更により飼育の継続が困難となり、かといってここまで大きく成長してしまったものを処分することも能わず、やむ無く放流された、というパターンが考えられるのだ。
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2020年頃に予定されているミシシッピアカミミガメの特定外来生物指定の際には、間違いなくこの悲劇が繰り返されるだろう。
果たして現行のルールでいいのか、生き物に興味のある誰もが当事者意識を持って考えなくてはならない。


ただ、それはそれとして自然環境への放流は許されることではない。
放されたカメたちには何の罪もないが、彼らはこの国に居てはいけないのだ。

それで僕とせつなさんに声が掛かった。
僕らはこれから、このワニガメを捌いて食べるのだ。

「ペットだったかもしれない」ものを食べる

ひと頃、「食育」という号令のもと、皆で飼育してきた鶏を捌いて食べる、という試みが各地で行われていた。
当時から「虐待だ」「いや必要な教育だ」と賛否両論あり、徐々に下火になってきて現在に至るようだ。

個人的には、それぞれの親が「我が子に体験をさせたい」と思ったのならばこのような試みはありかとも思うが、それは当然ながら「最後には食べられるために育てられてきた個体」であるべきだと考える。
ペットとして扱ってきた鶏を突然「さあそれではみんなで殺して食べましょう」というのは間違いなく虐待であり、子供たちの心に傷を負わせることになるだろう。


今回のワニガメはむしろその文脈に近い。
いや、ワニガメだけじゃなく、これまで食べてきたカミツキガメやミシシッピアカミミガメ、更にはスッポンに至るまで、自然環境で捕獲されたからといってそこで産まれ育ったとは限らない。

それを、食べる。

冷静になると、心のなかに鉄球をいくつも放り込まれるようなズシリと鈍い感情が蠢く。
この子を捌いたとき、果たしてどんな気持ちになるのだろうか。

不安もあるが、天然ものだと信じてやるしかない。
ワニガメは生体での移動が禁じられており、僕の目の前にいる個体は既に頸を切られて失血死している。
そしてそれを望んだのは僕(とせつなさん)なのだから。

ワニガメを捌いてみた

※以下、サムネをクリックすると拡大表示されます

まずは、頸を落とすところから。
本来は一番キツい行程なのだが、締めること自体はSさんが済ましていてくれたので、機械的に進めることができた。

頭部だけで1㎏以上ある

頭部だけで1㎏以上ある


出刃包丁を駆使して進めていたが、首の骨を切るシーンで刃先が少し欠けてしまい、せつなさんの強力な金切り鋏でようやく切断することができた。
これ以降、この鋏が大活躍することとなる。

不思議なことに、頸を落としてしまうと、とたんに「食用」のものに見えてくる。
カメを捌いてきた経験がそうさせるのか、あるいはもっと本能的な部分でのことか。


ひっくり返して腹甲を上に向け、背甲との接続部をせつなさんが切断していくのをサポートする。
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当然ながらこれほど大きいカメはふたりとも捌いたことがないのだが、せつなさんがいるというだけで謎の勇気が湧いてきて不安が取り除かれていく。
承太郎とネズミを狩りに行く丈助の気分はまさにこのような感じだったのではないだろうか。

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ミドリガメと比べると、大きさのわりに腹甲が小さく、接続部の面積も小さい。
はじめはハサミで苦労しながら切っていたが、後にSさんが買ってきてくれたノコギリを活用しあっという間に切断することができた。


皮はかなり分厚いが、よく研いだ出刃包丁でサクサクと切り進める。
腹甲を開けると、ミドリガメで見慣れた内臓が顔を出した。
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かなり強い匂いを放っており、それは水槽を洗う時の匂いとも、あるいは獣臭さとも形容できそうな、かなり不快なものだった。
獣臭が苦手な僕にはかなりクるものがある。

グレートですよ、こいつは……

臭いに耐えながら前肢、頸の付け根、背筋の順に外し、消化管と卵巣、肺etc.とテンポよくばらしていく。
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途中、僕がぼんやりして膀胱を破いてしまったが、中身が氾濫する前に気付くことができて難を逃れた。
500㏄位入っていたんじゃないだろうか……


最後に後肢を甲羅から切り外し、30㎝はあろうかというゴジラみたいな尻尾を骨の継ぎ目から外して解体完了とした。
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肝臓は非常に大きいが、ひときわ強い水槽臭を放っており今回は食べるのを断念した。

ワニガメを調理して食べてみた

ワニガメの四肢の皮は非常に丈夫で引っ張っても破れることは無さそうだが、筋肉との接着力もきわめて強く、手で引っ張って剥がすことは困難だった。
なので小出刃で丁寧に筋膜をなぞり、皮を切り離していくことに。

慣れると簡単だ。
Sさんと2人で皮剥ぎに没頭し、気が付くと目の前にはワニガメの肉が鎮座ましましていた。
他のカメ同様、皮を剥ぐと臭みはほとんど感じられなくなった。
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比較的色味の良い脂肪が大量についていたが、ここに臭いが蓄積されている可能性も考えられたので皮と一緒に外した。


すっかり食材となったワニガメの肉を前に、せつなさんが腕を振るう。
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用意されたのは
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唐揚げ

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酢亀

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ソテー

トマトカレー
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捌き始めてからここまで5時間半。
巨大なワニガメが3人の力で立派な御膳となった。

さっそく食べてみよう。

……(`・~・´;)

……うん、美味い!!
肉の繊維は強靭で部位によってはあごが疲れてしまうが、味はかなり濃厚で美味しい。
脂肪をすべて取ってしまったのでジューシーさに欠けるのではないかと危惧していたが、そんなことは無かった。
ゼラチン質が多いからか、カメ肉は加熱してもパサパサにならないようだ。

臭いはすっかり気にならなくなり、シンプルなソテーではワニガメの風味そのものを楽しむことができた。
酢亀はムッシュせつな的には薄味すぎたとのことだが、これもワニガメ肉を楽しむのにちょうどいい味付けに感じられた。
むしろ唐揚げでは味付けが濃すぎて何の肉かわからなくなってしまったように思う(歯応えが強靭すぎるので普通の肉じゃないということは分かるが)。
トマトカレーの酸味もベストマッチといえ、カメ肉には酸味がよく合うというわかりがあった。

美味さにテンションあがってきた人たち

美味さにテンションあがってきた人たち

総評的には非常に美味く、食材としてはかなり高い評価になる。
カミツキガメと比べるといくつかの面で劣る部分もあるようだが、ミドリガメを食べまくってきた人間からすると相当レベルの高い肉に思える。

味:★★★★☆
価格:★★★☆☆



捌きはじめる時はいったいどうなるかと思ったが、やはり頸を落としきったところから脳みそが食材として認識してくれたようで、その後は特に動揺もなく捌き切ることができた。
実に得難い経験ができ、今回声をかけてくれたSさんには深い感謝の意を表したいと思う。


普通に生きていれば、家畜でない4本足の動物を捌く機会などまず発生しないだろう。
わざわざそれを行うことについて非難の声が届くだろうことも予想はできる。
それをネット上で公開するなんて言語道断だ、と思う人がいることも理解できる。

それでも載せることにした。
これを読んだ人の心が正にも負にもざわめいてくれれば、僕にとってこれ以上のことは無い。

 
 
 

コメント

  1. まっちゃん より:

    ミドリガメ、カミツキガメときたらワニガメももしかしたら…と思ってたんですが、すごいですね…
    もうこれは動物園にいるやつだ…

    亀シリーズ、次はウミガメ、ゾウガメあたりでしょうか?(笑)

    • wacky より:

      ウミガメは一般人は禁漁だし、ゾウガメは希少すぎて食べる機会すらないと思いますが、それはそれとして味は気になりますね^。
      ウミガメは小笠原に行くと食べられるらしいので一度食べてみたいなぁ

  2. 名無し より:

    以前から少しずつこちらのサイトを読み進めさせて頂いてます。
    非常に興味深いお話が多く、今回のワニガメも中々考えさせられました。
    けれどどのような経緯や意図であれ、他所から持ち込まれ、近辺の環境に順応ではなく淘汰することで生存や繁殖をするのであれば、駆逐するしかないと思います。
    食べる事は生きる事。他者の命を食べて全ての命は生きているのですから、特に周りに害を為す生き物を狩って食べるのは、古来から行われてきた生存術ではないでしょうか(身の安全の為、食料確保が同時に出来ますからね)

    むしろ批判する人達は何を食べているのでしょう?
    以前、肉は動物を殺してるから可哀想だから野菜で我慢しよう広告→野菜や植物だって同じ命だ霞でも食ってろ!の反撃コラのような事もありましたが、正しくそれです。
    結局命を食べて命を繋ぐのですから、茸本さん達のようにそれを行いながらも第三者伝えるというのは凄い事だと思います。

    まとまりない文章で申し訳ないですが、これからも楽しく読ませて頂きます。

  3. 鏡の破片 より:

    特定外来生物に指定されることで、却ってその外来種が野に放たれるリスクが増える…。
    一応外来生物法では、許可のない者が特定生物を飼育、栽培、保管及び運搬、輸入すること、許可のない者に販売、譲渡、引き渡しする事の他、
    特定生物を野外へ放つ、植える及び蒔くことも禁止されてはいるようですが、
    「わざわざ苦労してバレないように対策取ってこっそり飼い続ける(これも違法ですが)くらいなら、さっさと捨てて厄介払いした方が早いし、そうそう捨ててる所を見つかるなんて事はないだろうし」って考える心無い人は多いでしょうし。
    確かに現行法では野に放った方がいいって発想に心理的バイアスがかかってしまいますよね。
    特に今回のワニガメとか、環境破壊だけでなく普通に人間の生命に危険なレベルの生物ですし。

    • wacky より:

      既に外来生物が繁殖しまくっている環境が違法放流を心理的に促進してしまうということはあるでしょう。
      本当にミドリガメを特定外来生物に指定するのなら「○○ポスト」的なものを作らないといけないでしょうね。税金の無駄遣いと叩かれるかもしれませんが、日本の生態系が取り返しのつかないレベルで破壊されるよりははるかにマシでしょう。

  4. 夢の天秤 より:

    届け出が簡単になれば、当然愛着もあるだろうし放す人も減ると思います。
    しかし、普段の仕事でも(私の場合ジャンルは全く違いますが)
    役所の書類はめんどくさいんですよね。

    もはや犬や猫並みの大きさの生き物(ペット?)を捌くのは大変だったでしょうね。
    愛好家もいると思われますし、勇気をもってこの記事をUPしたことは
    素晴らしいことだと思います。
    こういう生き物に対する真摯さが、野食とゲテ食いを分けるポイントじゃないでしょうか。

    • wacky より:

      ありがとうございます。幸いにして現時点で「なに食ってんだ○すぞ」みたいな中傷は届いていませんが(^_^;)まあペットとしてワニガメを飼っている人は今回の内容は殺意が湧くでしょうね。猫飼ってる人に猫を殺して捌く画像を見せつけるのと何が違うの? って言われたらなんていえばいいでしょうね。

  5. イダっち より:

    Sさんが途中からせつなさん表記に!?まぁわかりきってはいましたが

  6. たいめん より:

    心無い人を心無いと非難したところで野良ガメが消滅するワケでもなし、そもそも大半の人は心無いワケで、法律を施行する以上マナーだの良心だの曖昧模糊なモノを前提にすべきではないし、徹底的に取り締まる能力もなければそもそもやる気もないくせに条文だけ厳しくして事足れり、と悦に入っててはイカン!と思うのですよ。
    カミツキやワニガメに関してはこうなるのは目に見えてましたし、実際施行前に散々指摘されてましたし、そもそもリサイクル法って前例もあるのに聞く耳持たなかった環境省の木端役人どもには猛省して頂きたいです。
    で、管理人様も危惧されてますが、アカミミ(の飼い主)はカミツキやワニガメより間違いなく心無いでしょうし、そもそも母数が段違いですからフォームに従ってネットで届出、レベルに簡略化しないと2020年にはエライ事になるでしょうね。つか私も、現行のままなら多分違法にならないうちに逃がしますw

    • wacky より:

      官僚さんにとってはルールを作成したところで満足でしょうけど、この問題はそこから先が相当難儀するでしょうしね。。ネットで飼育許可申請書を提出できるようにするのは極めて良い施策だと思います。

      このままいくと早晩「海外の動物をペットにすること自体取り締まれ」的極論が出てもおかしくないですからね、何とか良い方法を見つけていかないと……

    • たいめん より:

      アカミミ、2020年を待つまでもなく消失…orz

      先日嫁が帰宅すると、ウチの玄関(風防室がありそこは常時開放)から見かけないガキが逃走。見ると子供が飼育していたキリギリスのケースの蓋が空いてて3頭中2頭いない!そのガキ虫かごと網を置いてったのでそれ持って追跡し、とりあえず取り押さえたものの「見てただけ、触ってない」「○○から来た(お盆帰省中?)」「小4」だけで名前も住所もだんまり…あろうことか莫迦嫁、それをそのままリリース!

      「なんで警察を呼ばんか!親呼んできっちり〆ないとまたやらかすぞソレは!!そもそも放置児とか虐待とかの可能性が高いだろが!!!」と、散々怒鳴りつけたんですが、ふと見ると外飼いしてたアカミミがいない!蓋は閉まってるし囲いはどこも壊れてないし、何よりいつも外に置いてある餌やり用のトングが内側に…

      「いわんこっちゃない!あのガキだ!!今すぐ警察呼べ!!!」

      お巡りさんはたかがキリギリスと、ウチの前のドブ川で獲った2020年にはどっちにしても飼育継続は出来なくなるかもしれない8年も飼ってたミシシッピーアカミミガメに真摯に対応はして下さいましたがまあどうにもならんやろね…。取りあえず防犯カメラチェックして、映ってたら警察に提出します。

  7. ちゃんたま より:

    ペットとして飼われることがある生き物だから食べるのに抵抗がある、というのが大半の人々の正直な気持ちなんでしょうかね。「わざわざそんな生き物を食べなくても…。」と言われりゃ、返す言葉はないと自分は思います。
    野外に放たれた時点で、もうその生き物はペットではない。自然環境の一部である。よって、お互いに持ちつ持たれつ、食う食われるの関係に取り込まれざるを得なくなる。私はそのように考えました。
    ブラックバス(アメリカザリガ二)をやっつけろ!なんて企画を見ることもありますが、そういう人は生命と疎遠なんですかね。それともエゴを受け入れて思考停止したんですかね。

    • wacky より:

      僕も全く賛成です。ただもし放流されたものって判ったうえで捕らえて食べてしまうと「器物損壊」の罪に問われるんじゃないかというおそれもありまして。。このあたり、法律が厄介なんですよね。

      バスやアメザリをやっつけて溜飲を下げるようなコンテンツは思考停止に見えますよね。それよりは食用や肥料資源として活かす方法を考えて提案する方がずっと大切な話で。。

  8. マイン より:

    無知というのは恐ろしいものですね。
    家の近所ではお祭りが終わったこの時期になると近くの用水路に金魚が増えます。恐らくお祭りの金魚すくいのせいでしょう。
    たかだか金魚一匹、問題ないだろうと思う人もいるのでしょうが、自然には少なからず影響があるはずですし、「知らなかった」で済まされることがなくなることを願うばかりです。

    • wacky より:

      「無知」に対抗する方法ってないもんですかねぇ……
      啓蒙活動も、一番見てほしい人ほど興味を持ってくれないですし。

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