清流の象徴・トゲウオの一種「トミヨ」を食べてみた

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のっけから例え話で恐縮なんですけど、あなたが仮に関西以外にお住まいだとします。
近所の本屋に「ジャンプコミックス」がずらっと並んでいて、でも肝心のジャンプ本誌は置いていません。
店主に聞くと「本誌はこてこての関西ネタでいっぱいで、この辺の人が読んでも面白くないからうちは置かないよ」って言われたとしたら……すごく不思議な気がしませんか?

さらに、その「ジャンプコミックス」は別にどの地域の人が読んでも楽しめるようになっているのです。
いったいどうしたものか、べつに関西弁が分からなくてもいいから、ぜひその週刊少年ジャンプとやらを読ませてはもらえないだろうかと思いませんか?


……書いてて思ったけど、このたとえあんまりふさわしくないかもなぁ。。まあいいや。
こういう感じの存在が、釣り雑誌界にかつて存在していました。
それは「週刊釣りサンデー」。

基本的に関西を中心とした中京~瀬戸内の釣り情報が掲載されていて、関東人や九州人が読んでも、情報誌という側面ではほとんど役に立ちません。なのでそういった地域では、超大型書店を除き本誌が書店店頭に出ることはほとんどありません。
しかし、年に何冊も出る「増刊号」(実際は単行本とかムックといえるもの)では全国の釣り場データとともに、どこでも使える情報やテクニック論などが載っており、各地の書店で購入することができました。
釣り少年だったぼくも、釣りサンデー増刊であらゆる釣りの基本を覚えました。
全く興味のなかった磯の上物釣り関連を除いて、ほとんどの増刊号を購入したような気がします。

ぼくにとって「釣りサンデー」は顔の見えない先生という感じで、ミステリアスながらもとても頼りになる存在だったのです。
一度廃刊になったものの、現在では別の版元から同じ名前で発行されていると聞きます。今の釣りサンデー先生はいかなるお方なのでしょうね。
<回顧 />


さてそんな釣りサンデー先生ですが、時に「編集部の暴走かな?」みたいなユニークなムックを出すことがありまして、それがまた楽しみのひとつでした。
その中の代表ともいえる「○○釣りマニア」シリーズはいまだにぼくの愛読書で、時々引っ張り出しては読みふけっています。
サビキ釣りでチヌをガチ狙いする話とか、巻中グラビアページがネズッポ科図鑑だったりとか、ニッチで誰得な情報がいっぱい載っていてとても面白いのです。
いまのぼくのニッチ好きもこのシリーズによって育まれた可能性が大です。

で、その中でも幼いぼくの興味をつよく惹きつけたのが、「波止釣りマニア」に掲載されていた新潟のイトヨ釣り。

イトヨとは環境指標生物として知られるトゲウオの仲間で、背鰭などの鰭が棘状になっている小魚です。
ある程度生物の知識のある方なら、トゲウオなんて貴重な魚を釣るの!? と驚きになるかもしれませんが、2000年代初頭までは新潟を中心に釣魚として親しまれており、その食味の良さもあって愛されていたといいます。

ただ、水田環境の変化やそれに伴う遡上数の激減(イトヨは両側回遊魚)もあり、現在では新潟で食用にするほどのイトヨを釣ることは難しい様子。
一方で現在でも食材としてスーパーに並ぶことがあり、これはほとんどが北海道で採られたものだといいます。

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トゲウオサンクチュアリ・北海道


トゲウオの仲間は一般的に冷水を好むため、本州以南ではそもそも棲息域が広くないようです。
関東でも「ムサシトミヨ」という種がいますが、現在ではきわめて数が少なく、棲息地では懸命な保護活動が行われています。食べるなどもってのほか。
一方、亜寒帯に属し雪解け水に恵まれる北海道では、イトヨをはじめ何種類かのトゲウオが棲息しており、一部では釣りも行われているとのこと。

そういえば、以前はじめてイトヨを食べたときも北海道産でした。
このときは非常に濃い味付けがなされていて、そのものの味はいまいち分からずちょっと残念な思いをしました。
いつかそのものを味わってみたい……そう思いながら過ごしていたある日、野食友達のKさんから「トゲウオ採れましたけど、食べます?」という連絡が。

キター!!! ぜひ食べたいです!

Kさんは以前ぼくがロードバイクにクーラーボックスを積載しようと企んでいた時に真摯な警告をくださった人で、その後突然貴重なランドナーをくれたり、メンテも無償で行ってくださったりする人の形をしたゴッドなのですが、奥様のご実家が北海道ということで、時々当地で採取活動をされています。
彼にとっては、昔からトゲウオは非常に身近な存在だったそうで、度重なる無駄な開発(北海道はスゲー多いらしい)にも負けず、いまでもかなりの数が棲息しているといいます。

聞いてみると今回採れたのはイトヨではなくトミヨとのことで、一瞬「トミヨって食っていいの……?」と逡巡したのですが、レッドデータブックを確認したり、仲間内の淡水魚クラスタに聞いてみたりして「北海道のなら大丈夫」という確信を得ました。


さっそくやっていきます。

北海道のトミヨを食べてみた


トミヨはトゲウオの中では中くらいの大きさで、大きくても6㎝弱といったところです。
ただサイズにもかかわらず棘は極めて硬く、皮膚の柔らかいところで触ると痛みを感じます。


採れたところは完全な淡水域ですが、いわゆる川魚臭さは皆無です。
そしてなんだか、ちょっと香ばしい焼き海苔のような、美味しそうな香りがします。何由来なんだこれ。。


硬い棘のため、調理はから揚げが一般的とのこと。
やってみましょう。


……(・〰・)
うーん、サクッと揚がっていて香ばしいけど、小さいうえに身も薄い魚だから油の味ばっかりになっちゃうな……
貴重なトゲウオを、こうやって食べる必要はあまり感じないです。カタクチイワシでやればいいじゃん(いいじゃん)

味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆


もっとシンプルに……できるだけ身の味が分かるように食べたい……
でも淡水魚だから生で食べるのもあれだし……うーん……

……! マリネ!!
そういえば前記「波止釣りマニア」では釣れたイトヨをマリネにして食べる話が載っていました。
マリネにすることで寄生虫が死滅するかというと幾分疑問符ではありますが、まあ生よりよかろう。


ということで塩で締めて、寿司酢に一晩漬けました。


……(≧〰≦*)
これだッ!
棘に気を付けながらゆっくりと噛みしめると、上記の独特な香りとともに、川魚とは思えない強い脂が舌の上にジュワっと広がります。
まえに佃煮を食べたときに感じた脂感は、調味料ではなくトゲウオそのものに由来するものだったようです。
油断すると口の中で棘が無双し血だらけになりますが、味はとても良い。
料亭に卸すとキロ10,000円なんて話もにわかに信憑性が出てきました。

味:★★★★☆
価格:★★★★☆


トミヨとイトヨで味が大きく違うということはなさそうですが、より大きくなるイトヨのほうが商業価値はあったのでしょう。
一方でこのまま環境破壊が進めば、いずれのトゲウオも口にできなくなってしまうのは間違いなさそうです。
この味が楽しめなくなってしまうのは大変な損失、我々ができる保護活動を真剣に考えなくてないけないなと改めて思います。。

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