相模湾の千尋の底から、夢と黒い魚たちを鬼ヅモしてきた件

ブログをやることで得られる一番の宝、それは人脈。(キリッ)

とのっけから意識高い系発言をぶちかましたところで今回の話。


先月の終わり、アブラソコムツの記事を読んで下さったという方から「深海釣りをやっているのだが、よかったら一緒にどうか」というありがたきお誘いを頂戴した。
その後、一回目の予定と春の嵐がかち合ってしまったので延期となり、昨日ようやく出船がかなったのであった。

深海釣りは平坂さんたちとてきと丸(現KNOT ENOUGH)で東京湾海底谷を攻めて以来、2年ぶり3度目となる。

ヘラツノザメ,東京湾,釣り

前回はこういうの狙い

一昨日の夜は「楽しみで寝られない」という遠足前の小学生のような状態に陥った。

 

深海釣りはスゴイ釣りですよ

深海釣りの魅力はずばり「フロンティアスピリッツを刺激されること」だと思う。
深海は宇宙空間と並んで人類の探査が及んでいないところだということはいまやよく知られているが、それが家からわずか1時間半のところに広がっているのだから…
ワクワクしないやつは漢じゃない。

さらに、実は釣り味もサイコーだったりする。
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よく「深海釣りって、要は漁でしょ?」という類の誤解を(おもにルアーマンから)受けるのだけど、全然そんなことは無い。

確かに竿を手で持たないし、糸も手で巻かない。
10分かけて仕掛けを下ろして、30分かけて巻いてくるという行為だけを見ると「漁師じゃねーか」というツッコミを受けるのもやむなしとは思う。


でも何もしていないように見える時も、実際は仕掛けを着底させるために潮を読み、着底後は電動リールの各種ボタンを駆使して糸ふけを取り、仕掛けを立て(あるいは寝かせ)絶え間なく誘いを入れている。
本命が釣れるポイントは非常に狭く、ソナーを頼りに海底のちょっとした起伏を見つけ出して、ピンポイントでそこに仕掛けを収めないといけない。


縮尺5000分の1の地図を作成するために必要な撮影高度は750mだという。
ということは、深海釣りで本命ポイントに仕掛けを収めるのは、いわば糸の先に鉛筆を結んで、地図の任意のピンポイントを黒く塗りつぶすようなものかもしれない。


アタリが出てからはこの釣りはさらにテクニカルになる。

竿先に現れる魚信のようすから、魚種とサイズを推測。
狙いの魚であれば、糸を少し出して、まだ魚がかかっていない針をそのタナに送り込んでいく。

揺れまくる船の上で、深海からの魚信をとらえるのは集中力と忍耐が必要

揺れまくる船の上で、深海からの魚信をとらえるのは集中力と忍耐が必要

送り込む、新たなアタリ、また送り込む、次の新たなアタリ…
針の数だけ続けたいが、もたもたしていると針を外して逃げられるかもしれない。
あるいは釣れた魚がサメにやられて、仕掛けごと失うかも…


せまられる選択。
まきますか まきませんか(古い)


「まく」を選んだら、リールの「自動巻取」ボタンをぽちっと押す。

最新のリールを使っても、釣りの世界で「超深海」とよばれる1000mの深海底から仕掛けを引き上げるのにかかる時間は40分以上。
魚がかかっていたら1時間を要することもある。

巻き上げの途中、魚が外れずにかかっていると、500mを切ったあたりでグイグイと強く竿先が引き込まれる。
水圧が半分になり、魚の内臓が膨れて遊泳力が失われるサインだという。

残り100mを切ると、かかった魚が大きければ、魚の浮力にオモリが負けて浮き上がってくる。

糸が次第に前に走り出す

糸が次第に前に走り出す

海面に浮きあがった魚が赤ければ歓喜。
黒ければ…僕だけが歓喜。

取り込んで記念撮影をして、1流しが完了。
1000mなら1日に多くても5流しが限界。


集中力と忍耐力、そして戦略と読み。
これを釣りと言わずして何と言おうか!

…と熱く語ってしまったが、ホントにこの釣りは楽しいのだ。
決して簡単ではないしハードルも高いけど、メソッドが確立されていないという意味では初心者にも開拓心を楽しめる釣りだとも言えるかもしれない。

相模湾 深海~超深海釣りレポ

イントロ

今回声をかけてくれたのは、「うみMEMO」を運営するmakimaryさん。
「赤い宝石」に魅せられ、自前のプレジャーボートを駆って相模湾の深海探索を続けるパイオニアだ。

深海魚も世の中のご多分に漏れず、対照的な「赤」と「黒」が存在する。
そして、1匹の「赤」を手にするために、数多の「黒」を引くことを避けられないのはここでも同じ。


クロムツやアブラボウズと言った一部を除けば、「黒」い魚の価値は低い。
一般的には持ち帰られることは無いが、深海から上がってきた魚の多くは水圧の差に負けて瀕死状態になっており、リリースもままならない。

makimaryさんもいつもそれが心に引っかかっており、なんとかしないと…と思っていたそうだ。
そんな中で「どんな魚でも美味しく食べる」という変態物好きのブログを見かけ、白羽の矢が立ったというわけである。

中深海で前哨戦

出港!

出港!

佐島のマリーナを出発し、初めのポイントについたのは9時。
前日までの風が残っており、海況が安定するまでは浅場で様子を見よう、というmakimary船長の判断である。
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それでも水深は300~400mほどある。
東京湾ではユメカサゴをはじめ様々な魚種を引きずり出した、個人的には最も得意なレンジだ。

前日に用意したサメ短冊とイカ短冊のうま味調味料漬けを、5本バリに付けて投入。
潮が速く、様々な方向に好き勝手に出ていく道糸を、船長のナイスな操船でなだめすかしながらポイントに着底させ、誘いをかける。

カモメにストーキングされる

カモメにストーキングされる

東京湾と違い、海底の起伏はそこまで大きくないようだ。
着底はわかりやすく、誘いの基本である「底トントン」状態を保ちやすい。
これが東京湾海底谷だと、着底した後もオモリが崖を転がり落ちていく様に動き、道糸が出続けるので難しい。


1投目にかかったゴマサバを切り身にして針に掛け、2投目。

着底後ほどなく、竿先に明確なアタリ。
そのまま追い食いを考えるも、船長の「スミヤキっぽいね」の一言で迷いが生じる。。

スミヤキとは「クロシビカマス」という魚のことで、墨のように真っ黒で細長い形状が特徴の深海魚だ。
ノコギリのような鋭い歯が特徴で、ハリスや道糸に噛み付いて簡単に切ってしまうことから「ナワキリ」とも呼ばれて嫌われている。

ややあって2度目のアタリがあったので、回収を決意。
巻き取りスイッチを入れて、ドキドキしながら登場を待つ。

20分後、海面に現れたのはお見事、予想通りのスミヤキ
…が、何とここで痛恨の針ハズレ。
そしてすぐに深海に帰還するスミヤキ…どれだけ根性あるんだこいつ。

がっかりしつつ残りの針を回収すると、オモリの下に付けていたヌタウナギ狙いの小針に、見慣れた馬顔の細長い魚がかかっていた。
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ギス、ゲット!

シロギスを大きくして銀色にしたようなこの魚は、すり身原料程度にしか利用されていない「The深海外道」だが、実は刺身でとても美味しい。
造るときにちょっとコツがいるけれども…

お土産をゲットできてひと安心。
もう1投するもアタリなく、風が弱まってきたのでより沖合のポイントへの前進を決定した。

そして超深海へ

相模湾は相模トラフを擁する国内屈指の深い湾で、そこに黒潮の流れが絡むことで、世界的にもまれなほどの多魚種が生息する海域となっている。
広大な相模湾トラフの縁の、ごくごくピンポイントにあの赤いヤツらがいる。

そして、それ以上に黒いヤツらも。


一昔前のランドセルのような巨大なものではないけれども、知らない人が見たら「工事用のウィンチ?」と誤解しそうなサイズのリールが登場した。
最新式の電動リールでも、1000mレンジを攻めようとするとここまで巨大になるのだ。

それを極太の竿に据え付けて、400号(1.5㎏)のオモリをつけ、投入。


最新式のリールは糸の吐き出しも早いのだな…と思っていると、10分ほどで海底に到着。
10mほど巻き上げてから再度落とし、底トントンの状態にする。
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モニターに表示される「1010m」の表示。
自分が送りこんだ仕掛けが1km下にあるということを想像してみようとするが、数字がすごすぎて、脳内でうまく像を描けない。


1投目は根掛り。
ボートの金具(クリート)に道糸を巻きつけ、数十m走って外す。
超深海では根掛りすらスケールの大きな話だ。

2投目、着底後すぐにはっきりしたアタリ。
心がざわめくが、船長は笑いながら「イバラヒゲでしょうね」と推測。
糸を送り、2度目のアタリがあったところで巻き上げを開始。

気が遠くなるような時間を経て、やがて道糸が前方に向けてつつーっと走る。
オモリをうきあげるその魚、赤いか黒いか…
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真っ黒でした。
定番ゲストのイバラヒゲ(80㎝ほど)と、謎のソコダラ系フィッシュ(カナダダラ?)をゲット。

「長くやっているけど初めて見たよ」と船長も驚きのようす。
僕のフロンティアスピリッツが道糸を通じて深海底まで届いたのかもしれない。


その後のラスト1投では、明確なアタリをとらえ、糸を出して追い食いさせることも成功したが、200mを切ったところで急に竿先のしなりが弱くなった。
???となりながら回収すると
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イバラヒゲの頭だけが上がってきた。
シャークアタックでオモリごと持って行かれてしまったようだ。
せめて深海ザメだったらもっとワクワクできたのだが…
残念。


それでも大量のお土産をゲットすることができ、ホクホク顔で帰路についた。
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別のボートオーナーの方にスミヤキを頂いた!ありがとうございます。

別のボートオーナーの方にスミヤキを頂いた!ありがとうございます。

深海に夢を釣りに行く

結局、今回はほとんど自分だけが釣りを楽しませてもらう形になってしまった。

船長には送迎から仕掛けの手配、案内、操船と何から何までお世話を頂き、感謝を通り越して申し訳なくなってしまった。
それでも「ぜひまた誘ってください!」と言ってしまえる自分の図々しさに呆れつつ、改めて深海釣りに魅入られてしまったことを自覚する。


太陽のの光がほとんど届かない深海底に、いったいどれくらいの生きものが居るのだろう。
魚だけではなく、謎のぬるぬるや節足動物の腕、カニの脚のかけらなど、様々な生き物の痕跡が釣り糸を通じて自分の存在をアピールする。

そいつらを釣り上げて、片っ端から食って喰って、レビューして、食味の深海生物図鑑を作ってやりたい。
そんな妄想の風呂敷を広げて、また深海に夢を釣りに行く日をそわそわしながら待ちたいと思う。

 
 
 

コメント

  1. doiken より:

    1km下から細いラインで獲物を引き上げるんですもんね。
    潮流もあるし、、、
    底取りが難しそう。
    どういう料理になるのか、楽しみです(^^)

    • wacky より:

      底どりは難しいですが、オモリも強烈に重いので慣れればそこまで難しくはないです。
      慣れの問題でしょうね。。

      料理はいろいろやってみます…乞うご期待。。

  2. えむっち より:

    これはロマンですね~!見ててすごく楽しいです。
    まきますか?まきませんか?なんて聞かれると
    巻かないと物語が始まらないじゃんと思っていまいますがw

    うみMEMO様を見に行ったら満面の笑みで楽しんでいるご様子が、
    また何ともほっこりしました。

    • wacky より:

      いや~でも「まく」とリアルなドールが送りつけられてくるかもしれないし…

      ロマンがありすぎて、いちど深海釣りに行くと、その後1か月は余韻に浸ってしまいますw

  3. ミッキーアイル より:

    初めまして。深海釣り良いですよねー。テレビなんかでも見ているとロマンを感じますが設備や道具の価格を見るとやはり手が出ないです…船代とかやはり高いのでしょうか?

    • wacky より:

      道具はとても高いですよね…また高価であればあるほど快適で、釣果も大きく変わるんですよ。。
      今回はボートオーナーの方からお招きいただいたのですが、東京湾でチャーターしたときは一人16~20kほどでした。乗合はレンタルタックル込みで10kほどでイケるところもあると思います。

      • ミッキーアイル より:

        私は九州住みなのですが16kぐらいと言うとタイラバぐらいの値段ですね。滅多に触ったり見たり出来ない貴重な魚に出会えて羨ましい限りです。しかし鹿児島ではウツボがデカイですよ!女性のウエストくらいあるやつがウヨウヨしています。色も虎模様じゃ無いんですよね〜

  4. 夢の天秤 より:

    400号・1000m!恐ろしい・・
    釣りというより深海探査みたいですね!
    深海釣りは興味ありますが、道具がとても買えません・・

    • wacky より:

      そう!まさに探索なのです。。
      新種が釣れる可能性だってありますし、まだ発見されていないポイントなどあるやもしれません。

      乗合ならフルレンタルのところも多いですし、そこまでハードル高くないですよ。。好きなタックルや釣り方を選べないところが玉にキズですが。

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