長兼丸さんのオオグソクムシ漁に同行させていただいたらお土産たくさん

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2018年1月6日(土)
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先日、有明海の小宮さんに「いつも干潟で活躍されてますから、たまには深い海もどうですか」と声をかけて、深海釣りにお連れする約束をしました。

しかし出航前日、無情にもべーやん船長から「明日は風強すぎて無理。死ぬる。」との連絡が……

このままではまずいと方々をあたって対策を考えていた時に、脳裏に浮かんだのはとある会話の記憶でした……


<回想>

数年前、横浜中華街で「深海祭り in赤ちゃん水族館」というイベントが開催され、参加したことがありました。
「深海ザメの解体ショー」ならびに「オオグソクムシの試食会」という触れ込みで参加したのですが、そこで出会ったのが深海漁の第一人者、焼津・長兼丸の長谷川船長と息子の一孝さんでした。

イベント終了後に記念写真を撮らせてもらう機会があり、そこで「深海のへんな生き物にすごい興味がある」という話をしたところ
「おおそうか! だったらいつでも乗りに来い! 漁に釣れてってやるらぁ!」
とダイナミックな静岡弁で豪快にお誘いいただいたのです。

その頃はまだブログも軌道に乗っておらず、只の無名のワナビーだった僕ですが、「いつか長兼丸に乗って深海漁を手伝うんだ……!」と強く思ったのでした……

<回想/>


……これ、ワンチャン、長兼丸さん乗らせてもらえるんじゃないの……?

というわけで、過去に 何度か 長兼丸の取材をされている友人の玉置さんに「長兼丸さん乗りたいんですけど、どうしたらいいですかっ!?」と突然の問い合わせ。

連絡先を教えていただき、一孝さんに連絡を取ったのが昼、返事が来たのが夕方で、そこから「明日出船しますか!? 乗せてもらえませんか!!?」とぶしつけにもほどがあるお願いをして、乗船の許可をいただいたのが前日の夜6時。

茸本さん人に甘えるのが得意なので、こういう時謎にスピーディーです。ご迷惑おかけしてすみません。
でもそういうわけで、無事深海漁に同行できるようになったのでした。

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出船は朝5時、川崎を2時に出て東名道をぶっ飛ばし、焼津の長兼丸さんに定刻ちょっと前に到着。

イベントの時の柔和な笑顔とはちょっと違い、口を真一文に結んだ厳つい漁師の顔で船長が迎えてくれます。
突然のお願いのお詫びと乗船許可のお礼をお伝えし、餌のマグロあらを積み込むお手伝いをして、出船します。
今日のターゲットは焼津を彩る深海のカニ、ミルクガニです。


天気晴朗なれど波高し、揺れる甲板の上で「あれが北斗七星だからあれが北極星ですよぅ♡」と誰にも聞かれてない星の知識をひけらかす茸本。
適宜相槌を入れて聞き入ってくれる小宮さん。
死兆星が見えるとおっしゃるペンさん。

と、にわかにエンジンが止まる音がして停船します。
すわ漁場か? と思っていると、一孝さんが操舵室から出てきて

「すみません、ちょっと風出てきちゃったんで、中止します。申し訳ない。」

オゥ……

まあしょうがない、べーやん船長も出たがらないほどのシケだからね、深海漁はちょっと厳しいでしょう。


しかし、このあとにドラマがありました。

帰りの船中、長谷川さん親子と話しながら、改めて突然の訪問の非礼をわび、自分の深海魚への愛と、小宮さんが有明海から深海のために上京したことをお伝えすると、船長はちょっと考えがあるような表情になりました。

日が昇り始め、岸が近づいてくると、ちょっと風も弱まってきました。
今日は西風なので、駿河湾西岸に位置する焼津沖はほんの少し風裏になる。

そう、これが幸いしました。
なんと船長から「せっかくだし、グソクムシの仕掛け、揚げてくら?」との発言が。
我々が大いに湧きたったのは言うまでもありません。

世界でいちばん深い湾として知られる駿河湾、岸のほんの少し沖合でも水深は500m近くあり、幸いにして波も風もそこまでではなかったのです。
いやーラッキーだった。焼津へ来た甲斐がありました。


野食会会場となっているななしカフェさんがはっきりと視界にとらえられるあたりで、グソクムシ仕掛けのブイがぷかぷかと浮いていました。

グソクムシ漁はすごい大変、だけど天国

グソクムシとは最近話題のオオグソクムシのことで、おそらく専門的に獲っているのは長兼丸さんだけなのではないでしょうか。

かつては深海漁のお邪魔虫程度の扱いだったそうですが、今や水族館や研究施設から引っ張りだこ。
さらに長兼丸プロデュースのオオグソクムシせんべいをはじめ、食品としての利用価値もぐんぐん高まり、今や浜値もなかなかの高値になっています。

ちなみのこのオオグソクムシせんべい、沼津とかで買えますが超美味い。
ひと箱1000円とかだし、お歳暮にもいいんじゃないですかね。



さてこのグソクムシ漁、意外にも、仕掛けはウナギやアナゴをほうふつとさせる筒。
まあでも確かに筒ってかごや箱と比べて水の抵抗を受けにくいし、揚げ降ろしの作業がスピーディーだし、いわゆる外道も入りにくいのかもしれません。

とはいえそれでも、深海数百メートルから200本もの筒を揚げるのは、なかなかの時間と労働力がかかります。
我々はともかく乗せていただいた身、水しぶきを全身に浴びようが甲板ですっころぼうが、ともかく労働力のすべてを出力させることを考えます。

ということでペンさんは獲れたものの仕分けのお手伝い、ワイと小宮さんは揚がった筒の仕分けと片づけを担当させてもらいました。


深海から揚がってきた筒は、船長が船べりのレールの上で中身をひっくり返し、その中にあるグソクムシや商品価値のあるものを、一定のルールに基づいて一孝さんが仕分けしていきます。



ストッパー代わりのちり取りの上に、大量のグソクムシがドサドサと落ち、また巻貝や深海アナゴっぽい魚たちの姿も見えました……


さて、朝方漁場へ向かう船の中で、ぼくは船長に自分がブロガーであること、へんな生き物を食べることを生きがいとしていることなどを伝え、もし漁の中で不要な生物が混獲されたら、捨てる前に分けていただけないか、というお願いをしてみました。

すると船長はガハハと笑いながら「今は捨てる獲物なんて無い、なぜなら深海水族館が全部欲しがるら」といいました。
世界唯一の漁ばっかりやってる長兼丸、採れる生き物のすべてが貴重な標本もしくは新種の可能性があり、それこそ小指の爪の先のような小さい貝ですらウン千円ウン万円という値段で買われていくのだそう。

なるほど……それじゃあぼくの出る幕はないな……(´・ω・`)と思いちょっとがっかりしましたが、深海生物を間近で見られるだけでも大した経験です。
気を取り直して漁の手伝いを開始しました。


しかし、ここでなんと一孝さんは、仕訳が終わってちり取りの上でうごめいている深海アナゴたちを、そのまま船べりから海に帰してしまうではないか!

めっちゃ捨ててるやーん(´・Д・`;)

とはいえ漁の邪魔になるわけにはいかず、物欲しそうな横目で眺めつつ漁を手伝うしかないぼく。

しかしある程度たったところで、一孝さんがふと気づいたように
「これ、要ります?」
と深海アナゴを差し出してくれました。


ありがとうございます! これが欲しかったんですぅ!! と感激しながらクーラーにしまい込んでいると、船長が
「なに、そんなもんが欲しいの!?」
と驚き半分呆れ半分のように言いました。

いつでも山のように獲れ、商品価値もない小さな深海アナゴをもらうために、わざわざ川崎からもらいに来るような好事家はきっと過去にはいなかったのでしょう。
漁師さんのいう「要らないもの」と我々の言う「要らないもの」にはまだまだ大きな差がある、改めて痛感しました。

世界中の漁師の皆さん、その仕掛けに入ったあらゆる要らないもの、ぼくの胃袋には必要なものなんで、捨てるぐらいならぜひお分けくださいませ。
わずかな商品価値くらいなら生まれさせることができるかもしれない、そんな野望を持ち日々筆をとっております。


大きく出過ぎたので閑話休題。

初めにいただいたのは

コンゴウアナゴという、やたらと顔が可愛い真っ黒なアナゴ。
幼魚のうちは白く、だんだんと黒くなるようです。
船長曰く「美味しくないが、出汁は出る」。いいですねそういうの、いろいろと試したい。


それから出ました、ヌタウナギ。
深海性のクロヌタウナギのようです。
大小それぞれ、まとまった数が獲れました。


謎の可愛らしい魚(イナカウミヘビっぽい?)やイラコアナゴ、


そしてイラコアナゴによく似てるけどちょっと違うっぽい、いかつい顔したアナゴも獲れました。
これは何だろう、噛みつかれたら指もげそうだ……

貝類も一杯獲れました。
さらには小宮さん垂涎の深海ベントス類(底生小生物)も山ほど。
これ絶対新種祭りだろ……ベントスの同定に自信ニキの登場が待たれます。

そして、もちろん本命のオオグソクムシも!


完全に宇宙船に乗ってきた悪役


今日水揚げされたものはどれも大きく、型揃いだそうです。


一方で数はそこまででもないようで、多いときは筒の半分がグソクムシで埋まるくらい獲れるそうです。一度に数十匹ってことか……


すべての筒を回収した後、餌を入れなおして再投入。
一孝さんが操船して、船長が投入していくので、我々はバケツリレー方式でサポートしました。
揚げるときほど時間はかかりませんが、それでも200本は重労働。
カニかごの時は600も投入するそうです。想像するだけで全身に疲労感が……

陸に戻り、片付けのお手伝いをして漁は終了。
お礼を伝えに行くと、「とても助かった、またぜひ乗りにおいで」という大変名誉なねぎらいの言葉をいただきました。
そこまで役に立てたとは思えませんが、3人とも船酔いなく、できる限り流れを読んで作業ができていたのがよかったのかもしれません。
それでもまだ自信は全然ないですが、次回はぜひカニかご漁や深海サメ漁のお手伝いもさせていただきたいと強く思うところです。

いただいた大量の深海生物に加え、獲れたてのオオグソクムシをいくつか購入し、帰路につきました。
これらでしばらくブログネタには困らないでしょう……
順次やっていきたいと思います、しばらくお付き合いのほど、よろしくお願いします。

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魚介その1(魚系) 魚介その2(魚以外) 深海魚
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