「タラの水酸化ナトリウム漬け」ルーテフィスク(ルタフィスク)を深海ダラで自作してみた

「野食のススメ」第10回の記事が公開されました!(2017.4.1)
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北欧諸国には各種の「ぶっ飛んだ」料理が存在することが知られており、シュールストレミングを始め日本でも有名になっているものが少なからずある。

シュールたんは今更説明するまでもないし、もやしもんetc.で紹介されたキビヤックなんかもご存知の方が増えたね。
あとは意外と知られていないけれども、アイスランド料理のハウカットルとか強烈な味だと思われる。



(自作編 

そして北欧には、これらとは少しベクトルの異なる強烈な料理がまだ存在している。

 

タラを水酸化ナトリウムに漬ける!?

「アナと雪の女王」の舞台としても知られる北欧の先進国ノルウェー
近代以降、北海油田が発見されてからは現在に至るまで経済大国であるが、それ以前は農耕に不向きな大地を抱え漁業に依存する貧しい国家だったそうだ。
タラをはじめとした北海の魚は大事な食糧であり、乾燥して保存されたものは取引の材料としても貴重な存在だった。


ある日、それを誤って木の灰の中に落としてしまった人がいた。
アルカリ性の濡れた灰の中に埋もれてしまったタラの干物は、タンパク質が変質してゼリー状になってしまっていた。
しかし貴重なタラ、捨ててしまってはもったいないと水にさらしてよく洗い、調理して食べてみるとアレ、これ意外とイケるんじゃね……?

そうやって生まれたのがルーテフィスク(タラのアルカリ漬け)。
その後この料理が全土に広まり、クリスマスシーズンには欠かせないノルウェーの伝統料理となったのだそうだ。※あくまで伝承です


しかしエネルギー革命ののち、ノルウェーでもピュアな木灰は手に入りにくくなった。
そのため現在では、手軽なアルカリ水溶液の材料として水酸化ナトリウムが使われているそうだ。

……はい! ここツッコミどころね! テストに出ますよー。

水酸化ナトリウムってアレでしょ? 手がぬるぬるになるやつでしょ?(国文科卒の知識の限界)
そんなん食べたら内臓ぬるぬるに溶けて死ぬんじゃね?
それか胃酸と反応して胃の中に大量の食塩が(国文科卒の発想の限界)

ヤベーだろそれ……
なんかシュールたんとかキビヤックとか、あとホンオとか納豆とかはさ、一見頭おかしい食べ物に見えるけどアレじゃん、発酵食品じゃん?
保存とか、栄養価の向上とか、いろんな価値があってそういう加工をしてるわけじゃないですか。

それが何、美味いからって干しダラを苛性ソーダにつけてぷるぷるにするの? 
脳みそのしわが水酸化ナトリウムで溶けちゃってんじゃねーすか?
全く最高かよ……自作してみるしかない(使命感)

ルーテフィスクを作って食べてみた

ちなみにルーテフィスク、その製造法のヤンチャさもさることながら、できた物自体が非常に特異な匂いを持ち、現在ではノルウェー本国でも食べられる人は減ってきているそうだ。
普段「うちのパティはビーフ100%!!」をウリにしているハンバーガーショップが、クリスマスになると「うちのパティはルーテフィスク0%!!」というセルフパロディ広告を作るほど。

一方、ノルウェーからの移民が多いアメリカの一部の州では現在でも、クリスマスシーズンになるとルーテフィスクを食べる催しが開催されたり、教会にてふるまわれたりするそうだ。
「ノルウェーからの移民の半分はルーテフィスクから逃げようとした者で、もう半分はルーテフィスクを広めようとした者だ」なんていうジョークも存在するらしい。

……まあアレだ、ネタ的に愛されてるってことだろうな。


まず、材料(むしろ調理器具に近いか)となる水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を購入する。


薬局に行き、身分証を提示して「かくかく云々で料理に使いたいんですけど……」というとかなりギョッとされるが、ルーテフィスクのウェブサイト等を見せて説明すると「食べる前に、十分に流してくださいね……」とのご注意とともに購入することができた。


作業用のゴム手袋、プラスチック製の容器(ガラスや金属は腐食されてしまうので)を合わせて購入し調理に備える。

作り方はごくシンプルで、水酸化ナトリウム水溶液を作って、そこに干しダラを漬け込めばいいのだが、水溶液の濃度や漬ける期間がよくわからない。


とりあえず適当に10%の水溶液を作り、浸漬時間は様子を見ながら調整していくことにした。


使うタラは先日相模湾の深海から揚がってきたトウジン

塩を用いず、ぱっきぱきに干しあげておいたものが偶然にも手元にあったので、大変遺憾ながら水酸化ナトリウム風呂に浸かっていただくことにした。


トウジン「押すなよ、絶対に押すなよ!!」


じゃぼーん。
「バカ、押すなって言ったろあばばばばばb」

……翌朝。

めっちゃ溶けてるやんwwwww


黒い腹膜が溶けて粒々になり、腹身のところはデロンデロンに、さらに腹骨も剥がれ落ちてしまっている。


匂いはというと、コンニャクの生臭さを10倍くらいにしたような強烈な臭みがある。
若干鼻にツンとくる。

やっべぇやっぱり水酸化ナトリウムやべえは……
こんなんで本当に美味しくなるんかいな……?


直径40㎝のプラスチックボウルに水を入れて、その中にタラをそっと落とし込む。
使った溶液はそのままだと処理できない「劇物」なので、指定を外れる濃度(5%未満)まで希釈してから流して捨てる。
ちょうど最近お風呂の配水管が詰まり気味だったのだが、おかげでよく流れるようになった。

3時間おきに水を変えて、様子を観察していく。


徐々に色が抜けて


透明度が増していく。


丸3日経って、全体的に透明になるまでに至った。


こんなもんでどうだろうか。


取り出してよく流水ですすぎ、恐る恐る指先で触ってみると非常にぬるぬるしている。
まさか皮膚が溶けた!? とびびって流水でよく洗ったが、どうやらそうではなく、ただタラがぬるぬるになっているだけのようだった。
匂いもかなり穏やかになり、普通のコンニャク程度になった。




これをフライパンで蒸し焼きにするのだが……


半身が全部溶けてしまったwww
なるほど、タンパク質が溶けてほとんどゼラチン質になってしまったんだな。


溶け残っていたひとかけらを崩れないように丁寧に取りだし、



溶かしバターとパセリをたっぷりと掛けて、完成。


スプーンで触ってみると、やや弾力があるものの、さっくりとした触感とともにばらばらにほどける。
匂いはバターに上書きされてほとんど気にならない。

ちと怖いが、いただきマース

……Σ(・~・;)
な、なんだこれは……?

なんだか生臭さよりも、硫黄臭のようなものがあるぞ。
これは……ゆで卵だ! 固ゆで卵の黄身の香り!


一方で食感は柔らかいゼリー寄りのゆで卵の白身といった感じで、黄身の風味のする白身という脳みそ混乱間違いなしのブツになっている。

味はあまりないが、ちょっぴりタラの風味が残っているので、バターと混ざるとなかなか好ましい風味に。
まずくはない……ね。
もっと量があっても十分楽しめると思う。
少なくとも、日本人ならこれが嫌で新大陸に逃げ出すということはないんじゃないかなあ。

味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆



ウェブサイトをいくつか見てみると、もう少し色が残っているものが多い。
今回のものはちょっと浸漬期間が、もしくはすすぎの期間が長すぎたかもしれず、それで匂いや味が穏やかになりすぎてしまっていたかもしれない。

本場のものが食べてみたいが、ノルウェーは行くには遠いし、イケアにも売られてなかったからなぁ……
どなたかノルウェーに行く機会があったら、ぜひトライして感想を教えていただけると嬉しいです。

僕の方は魚や作業時間を変えて、いろんなパターンを試してみよう。
なんせまだ苛性ソーダがたっぷりあるんだ……

 
 
 

コメント

  1. ω より:

    タラの水酸化ナトリウム漬けと聞いて「はぇ~最近流行ってるエキセントリックな化学系料理かな?」って思ったのですが
    まさか伝統食とは・・・ 世界は広いですね本当に

    • wacky より:

      厳密にいうと「工業風にアレンジされた伝統食」ってカンジなんで、魚の文化干しとかシイタケの温風乾燥みたいなもんなんでしょうけど。。にしても苛性ソーダってオイ

  2. ササラ狐 より:

    水酸化ナトリウムの10%濃度だとアルカリ度が高すぎるんじゃないかなーと思います。
    杉とかの灰の灰汁で手がヌルヌルするくらいのアルカリなので・・・
    たぶん2~3%以下程度の水酸化ナトリウム水溶液なのじゃないかなぁと

    干しダラを水で戻してから漬け込むようなことも調べた範囲だと有りましたけれども、今回は乾燥のまま漬け込んだんでしょうか?

    • wacky より:

      現地のレシピを教えていただきまして、0.8%程度で長めに浸漬するのが正しいやり方のようでした。水で戻すのが現在は一般的みたいですけど、いきなり漬けるとする文献もあり、またそのほうがこの料理の成り立ちにより近いような気がして今回はそのようにしました。次回は水で戻す方法も試してみたいです

  3. ふくすけ より:

    石油プラントに勤めているのでかなり身近な劇物の一つですね。

    低濃度のソーダを被った事ありますが本当にヌルヌルしますよ笑

    あと唇とかの粘膜は凄く腫れます。

    まさかあんな物が食品に使えるとは…恐るべしノルウェー…

  4. 魚好き より:

    脱色したふやけた湿布みたいwww
    苛性ソーダならピータンとかも作れそう

  5. 西洋呑み屋 より:

    うーん、コレ、原理的には乾物を戻す時に重曹を使うのと原理的には同じなのを濃度を失敗して勿体無いから食べた料理の様な….!?(シュークリームとホワイトソースの関係)
    水酸化ナトリウムを使わなくても、重曹をオーブントースターで焼くか水に入れてアルミ以外の鍋で暫く煮立てた炭酸ナトリウム水(結構強アルカリ)で十分再現可能かと。w

    • wacky より:

      そう思うでしょ? なのでこのたびちょっと違ったものでもルーテフィスク作りにトライしてみましたよ。今夜食べてみます。。

  6. 夢の天秤 より:

    アルカリ性食品とか懐かしいですね。

  7. マック より:

    料理は化学だ(白目)

  8. たいめん より:

    シャグマアミガサダケと和えればロケット戦闘機が飛ばせますね(白目
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%88_Me163

  9. 鏡の破片 より:

    苛性ソーダ、そこまでヤバい物質なんでしたか。
    私は小学生の頃、夏休みの自由研究のネタ用の本か何かで「古いてんぷら油からせっけんを作ろう」というのがあり、その材料の中に「かせいソーダ」なるものがあってその存在の名を知ったんですが、こちらでは何やら入手の際に色々言い訳を用意する必要があるような書き方だったため改めて調べてみたら…「マジヤバい物質。万が一目に入れば失明必至」…。小学生の夏休みの自由研究とは一体…

    • wacky より:

      なんだか「苛性ソーダ」っていうと洗剤みたいで怖さが薄れてきますよね……「水酸化ナトリウム」だと化学の授業でさんざん取り扱ったから、怖いものという認識くらいはありましたけれども。。

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