謎すぎる深海魚「クログチイワシ」を頂いたのでまずはシンプルに食べてみた

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「野食のススメ」第9回の記事が公開されました。
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「野食のススメ 東京自給自足生活」
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2017.3.14 和名が間違っていたので修正しました

先日の深海釣りの興奮も冷めやらぬ中、Facebookのアカウントに
「この魚を食べてみようと思うんですけど、美味しいかどうか分からないので不安です。茸本さんご存じですか?」
という言葉と共に写真が1枚送られてきた。

ファッ!?!?!!?
なんだこの真っ黒い魚……初めて見るぞ。。

鱗が大きくてまるで爬虫類のような見た目に、やはり爬虫類系の大きく裂けた口ととぼけた感じの目。
ジグに食いついているということはフィッシュイーターなのだろうけど、外見のインパクトがすごい割に既視感が全くない……
確信した、ワイはこの魚のこと、全く知らない……!!

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いったい何者……?

一緒に送られてきたメッセージを読んでみると、この魚はクチグロイワシという名前で、アブラボウズ釣りの深海ジギング(ルアー釣り)にヒットしてきたのだという。
つまり、深海魚だ。(見た目でわかるやんけ、というツッコミは置いといて)

イワシには外見的に全く似ていないうえに、アブラボウズの外道ということは超深海(-1,000mとか)のレンジに棲息しているのだろうからニシン科ということは考えづらく、いわば「あやかりイワシ」の一種だろう。


とりあえず、名前以外のなんらかの情報が手に入らないかと調べてみるが……

これはカタクチイワシのことだろうし
これはイシダイの老成魚「クチグロ」のことだし

……ひとしきりググってみたものの、それらしいページにはたどり着けず。

ひょっとして地方名か? といらぬことを勘ぐり、失礼にもメールの送り主Hさん(ひろしじゃないよ)に確認してみたのだが、標準和名とのこと。


埒が明かないが、それでも画像検索から根気強く探していると……

あっ! これじゃない!??

素人が作ったおさかな図鑑セキトリイワシ科のページより借用

なるほど、セキトリイワシ科なのか……
セキトリイワシは深海漁の網に時たま入ってくるらしく、ぼうずコンニャクさんところに食味が載っていたはず……

“身は白濁した白身。水分が多く、生でも焼いても、煮てもまずい。”
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 セキトリイワシのページより引用

Oh……


とりあえず、味はあまり期待できないのでは? という旨をお伝えしてみたのだが、すると

「良かったら茸本さん食べてみますか?」

えぇっ! いいんですか!?

「実は家人が調理するの嫌がってて……w以前食べた知り合いが『油の味しかしない』って言っていたんですけど、よかったら。」

……深海魚……白濁した身……油の味しかしない……ウッ頭が


……でも、食べてみたいっ!!
着払いでっ! 送っていただいてもよろしゅおすか……!!?

クログチイワシを食べてみた

というわけで数日後、我が家にクログチイワシが送られてきた。
Hさんのところですでに解体されていると聞いていたので、小さな小包が届くつもりでいたが……

……割と大きな発泡スチロールのトロ箱が。。
しかも品名は

……ゴクリ。

確かに、考えてみればアブラボウズは1.5mを超えることもある深海の巨大魚で、それを釣るためのルアーということを考えれば、写真に写っているジグはかなりの大きさのはず。
ということはそれを咥えて揚がってくるクログチイワシも、それなりのサイズのはずだろう。


箱を開けてみる。



……こ、コイ!?

大きさとか色合いとか、あとやたら目立つ鱗の模様とか、何も知らないで見るとノゴイでもぶった切って送られてきたのかなぁと思いそうだ。


でも、確かに身は真っ白に白濁しており、一目で普通の魚でないことがわかる。


もしこれがワックスだったら……
……い、いや、ワックスじゃなくてグリセリドかもしれぬ。
そうすればケツから噴出させて人間失格になることもあるまい。


身を触ってみる。

……ぶよぶよどぅるどぅる。
これは……バラムツやアブラソコムツとは違った感触。
どちらかというと、深海魚でもムネダラに似た感じだ。

手についた液体を指先でこすり合わせてみると、まるで手に優しい系の液体洗剤のようにサラサラとする。
これは、グリセリドでもワックスでもなくて、深海ザメの肝臓を触ったときと同じ「スクワラン」系の油ではないだろうか?
魚の油特有の生臭さもなく、とても肌に良さそうなサラサラ感だ。

うーん……食べてもいいものかどうか、ここで結論付けるのは難しそうだ。


こういう時、野食ハンマープライスではどういうアプローチをするか、賢明な皆様ならもうお分かりですよね?

そう、生でいってみます。

……(;~;)
ごめん、調子乗ってたわ。
なんていうか……
うん、痰。

ただの水分たっぷりどぅるどぅる食感なら、ムネダラもそうだったしそんなに気にはしないんだけど(食べたいとは思わないけど)、クログチイワシの場合は先述の脂分が加わることで「体液」らしさが発揮されてしまっている。

小学校の水泳の授業で、鼻が出そうになったからすすり上げて痰として出そうとしたものの、間違って飲み込んでしまい吐きそうになった時の思い出が、にわかによみがえってくる味だ。

味:★なし
価格:評価せず



よく知らんものを生で食べようとしてはいけないというわかりがありますね。
やっぱり加熱が大事でしょう。

それからおそらく、この不快感のもとになっている水分を飛ばしてあげないことには食材としてのポテンシャルはわからない。

ということで、シンプルに焼いて食べてみよう。

全体によく塩を擦り込み、

グリルに入れて、できるだけ水分を飛ばすように、じっくり1時間ほどかけて焼き上げた。


どうかな……
いただきマース……


……Σ\(◎~◎)/
なんぞこれ! 途端にかなり美味いじゃないの!?

水分が飛んだ身はそれでも柔らかいが、まるで西京漬けにされたタラやマナガツオのようにしっとりとして柔らかく、ほくほくとしている。
脂分がよりしっかりと感じられて、さらには不思議な甘みすら感じる。


染み出した脂で表面がクリスピーに焼き上がってるのもすばらしいですな。

連れに食べさせてみると「焼き魚と白飯を一緒に食べてるみたいな味で美味しい」とのコメントが!
う、うん、一瞬わかりにくいけど、でも確かにそのカンジはあるね……!

味:★★★★☆
価格:★★★☆☆



クログチイワシ美味しいんじゃない!?
このままほかの料理も試してみたいぞ!!

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魚介その1(魚系) 深海魚
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野食ハンマープライス

コメント

  1. 近藤 より:

    いつも拝見してますが、本当に美味しそうに調理されてますね。真似したいです。

    • wacky より:

      そうですね、いつも身質を確認してから調理法を決めているので、大きく外すことは少ないですね。もっといろいろやれるんじゃないかとは思っているんですけど、時間が足りず(^_^;)

  2. Xa より:

    「クチグロ」ではなく「クログチ」かもしれませんね…。
    「クログチイワシ」でググったらすぐに情報が出てきたので。
    しかし…こんな魚は茸本さんのTwitterを見るまで知りませんでした。深海魚って本当に種類多いなぁ…。
    次回の食レポも楽しみにしてます。

    • wacky より:

      クログチイワシでした! 気づけよワイ……

      そうなんですよね! まだまだ新種だってたくさんいるでしょうし、未知の食材ばかりなんだろうなーと思うとワクワクしますよね!

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