「新解さん」ならぬ「ヤマケイくん」オススメのセイタカイグチをついに食べた!

20年くらい前に「新解さんの謎」という本がベストセラーになったのを覚えているだろうか。

芥川賞作家・赤瀬川原平が、「新明解国語辞典」に掲載された各語彙の解説の中から、クスッとしてしまうもの、やたらと解説が細かいもの、思わずうならされるものなどをピックアップして紹介する、というものだ。
ときに「いやそれは言い過ぎだろ!」とツッコみを入れたくなってしまうようなある種の「人間臭さ」がある辞書として、新明解国語辞典自体も売れ行きが良くなったという。
「新解さん」とは、新明解国語辞典を擬人化したものだ。


辞書や図鑑など、オーソリティーであるべきものが人間臭かったり、主観的であったりすると、その公平性や有益性はともかく、読んでいる方にとってはなかなか面白く、親しみを持ってしまうことがある。

キノコの図鑑でいうと「ヤマケイ 日本のきのこ(山溪カラー名鑑、増補改訂新版、山と渓谷社、2011/12/16)」はそれに当たると思う。

ヤマケイ図鑑の読み物としての魅力をもたらす最大の要素は「食味評価」と「オススメ料理紹介」だ。
なぜかやたらと出てくる「柄の輪切りの貝柱風」や、唐突に出てくるオサレな謎料理名など、読んでいてワクワクが止まらなくなる。


僕が特に好きなのは、ムラサキヤマドリタケの解説の最後の一文だ。

“柄は長さを切りそろえ羊の肉とシャシリックにすれば,きわめて贅沢な味わい”

どうですかこの文章の引き込み具合!
シャシリックって何だよとか、羊の肉じゃないとイカンのかとか、もう楽しすぎる。
かと思えば、カワムラフウセンタケの項には

“そろばん状の幼菌は、丸のままてんぷらにして、塩と抹茶をふれば格別な味わい”

なんて書いてあって、ともかく最上のレシピを探求したいという思いが強く伝わってくる。
「ヤマケイくん」はきっとものすごいグルメなのだ。

 

憧れのセイタカイグチを採ったぞ!

さて、そんなムッシュグルマンな「ヤマケイくん」を読んで育った僕の中で、ずーっとあこがれ続けてきたものがある。
それはセイタカイグチだ。

セイタカイグチ google画像検索

厳密にいうと、人生で初めて手に入れたキノコ図鑑「きのこ図鑑(保育社,1985)」で見たときから美しいなと思っていたのだが、ヤマケイくんの食味評価を読んでその憧れが爆発したのだ。


子曰く、

“弾力のある細かい繊維を束ねたような柄の歯切りの良さは特筆に値する”

んほぉぉぉ食べたいぃぃぃん
というわけでそれから25年もずっと探してきたわけだが、相性が悪いのかどうなのか、出会えていなかった。


しかし!
ついに先日、彼はその御姿をわが眼前に現したのだ。。
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かさは6㎝ほどと予想よりも小さいが、想像よりもずっと美しいキノコだった。
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まるで溶かした砂糖を上からかけたようなのっぺりとした表皮や、それがちょっと垂れてしまったようなかさの縁のようす、蒸しパンのような管孔面、そして扇情的な赤い網タイツを纏ったすらりと長い足。


……ちょっとおっきしたぉ。

恭しく足に手を添えてずぼっと抜き取り、ホクホクしながら持ち帰ってきた。

セイタカイグチは傘と柄を別に料理すべき

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持ち帰ってきたセイタカイグチ。

初体験だし、まずはごくシンプルにバターソテーにしてみよう。

かさを適当にスライスし、柄は二つ割にして、少なめのバターでジュワーッとソテーに。
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味付けは塩のみ。

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いただきマース
……∑(・~・;)

な、なんだか、酸っぱいぞ。。
どこだ…… どこが酸っぱいんだ……
あ、わかった、管孔だ!

管孔だけを食べてみると、梅干しそっくりの強い酸味が舌を突いた。
かさの肉だけにして食べてみると、ヌメリと柔らかさがあって、ナメコやハナイグチに近い味わいが感じられた。


そして、メインの柄は……

……(≧~≦*)
ぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶち

すごいっwwwwこれは想像以上wwwww
栽培エノキタケ一株をぎゅーっと圧縮して束にしたような歯ごたえで、「歯切れ」という言葉の定義として新解さんに乗せたくなるほど力強い。
こちらもやはり多少ヌメリがある。


正直、旨味はヤマドリタケモドキなどと比べると見劣りがするのだが、この歯切れとぬめりはとても好ましい。
かさは管孔を除去して味噌汁に、柄は炒め物やソテーにするのがいいかもしれない。

味:★★★★☆
価格:★★★★☆



というわけで、酸味こそやや残念だったが味はそこそこ良く、また柄の歯切れはやはり素晴らしいものだった。
今後も見つけたら採りたいとは思うが、実はセイタカイグチからは毒成分が検出されており、最近の図鑑では毒菌として掲載しているものもある。
今回は1本だけの試食だったので特に問題はなかったが、大量に食べたり、また体調がすぐれない時に食べたりするとどうなるのかわからない。

なので「ぜひ食べてみて!」とオススメするつもりはない。
でも非常にきれいで印象的なキノコなので、見つけたらぜひよく観察してみてほしい!

 
 
 

コメント

  1. あかくー より:

    はじめまして。

    すみません、キノコ素人です。

    採取の際には根を残した方が良いと聞いたのですが、スポッと抜いてしまっても構わないものなんでしょうか。

    根を残すと来年も取れるとか・・

    どっちが本当なんでしょう。

    • wacky より:

      コメントありがとうございます!

      そうですね、厳密に言えばナイフで柄の基部を切るようにして採取するのが良いのかもしれません。
      ただ、地面から生えるキノコでは正直なところ、そこまで意識したことはありません。
      もし菌糸の層が地表近くにあり、子実体(キノコ)を引っ張ると菌糸層までべろりと剥がれてしまうような場合であれば、そういう時はナイフを用います。

      マイタケなどでは基部を切らず引っこ抜くようにした方が、次の発生までの時間が短くなるとも言われており、はっきりとしたエビデンス等は存在しなさそうです。

      同じ理由で材上性のものを採取する際も、ナイフが基本ですね。

      • あかくー より:

        なるほど、キノコの性質によって異なってくるんですね。

        キノコ狩りをされている方には当たり前のことなんですよね、きっと。。

        恥ずかしい質問をしてしまい、すみませんでした。
        アンド、ご丁寧な回答ありがとうございます!

  2. Nao より:

    きのこって面白いですね(*´∀`)
    この記事に出会えてからは、山で見掛けるきのこ達がかわいく見えるようになりました(^-^ゞ

    今回のきのこの柄…すんごく美味しいだろうなぁ~ …今夜はえのきごはんします

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